第12話:殺せない賢者、杖を手にする。
第12話です。
休暇の2日目。
俺たちは朝食を食べた後、早々に別れた。
「早速あの武器屋へ向かうとするか」
……あっ。
道案内がいない。
昨日行ったときはたまたま見つけたからな。
あの店の場所が分からない。
とりあえず聞いてみるしかないか……。
*
時刻は午前9時30分。
俺は通りすがりの人に何度も道を聞き、何とか店に辿り着いた。
「やっと着いた」
時間はそれなりにかかったが、何とか迷わずに来ることができた。
そんなことを思っていると、店から人が出てきた。
「おっ、来たな英雄の兄ちゃん。最高傑作ができたぜ」
「おはようございます」
俺の杖を作ってくれたこの男こそが、この『武器・アクセサリーのダイナ商店』の店主ダイナさんだ。
「早速見せて貰っても?」
「おうよ」
俺は店の中へと案内された。
相変わらず様々な種類の武器や装備品がズラリと並んでいる。
「これだぜ!」
そう言ってダイナさんは俺に杖を手渡した。
「おおっ……」
俺はまだこの世界に来て日が浅いから、余り細かいことは分からないけれど、この杖の凄さは俺でも分かるレベルだ。
木材をベースに作られていて、大きさは50cmくらいで他の杖より少し大きいだろうか?しかし、大きいのに軽く持ちやすく、握った感じもとても良い。
また、先端には宝石のような物が付いている。昨日のダイナさんの話によれば、この宝石がないと杖としての役割を果たせないんだとか。
でも俺が驚いたのはそれだけではない。
何故だか分からないが、この杖から圧倒的なオーラを感じるのだ。
「これは凄いな……」
「だろぉ?昨日徹夜して作ったんだ。杖をここまで魂込めて作ったのは初めてだぜ。どうだ?試しに魔法を打ってみるか?的ならあるぜ」
「試し打ちは確かにしておきたい」
「決まりだな」
*
俺は店の裏へと来ていた。
なんと店の裏には的を並べた簡易的な訓練場?のような物があったのだ。
「早速あの的に攻撃魔法でも打ってみてくれ。最初は杖なしで、次に同じ魔法を杖ありで、って感じでな」
「ああ、分かった。ちなみにあの的はどれくらいの魔法まで耐えられるんだ?」
「あーー……多分、あの的を壊せる人間はいないんじゃないか?対魔法物質でできているからな。魔法で破壊するのは不可能のはずだ」
「そうか、なら遠慮なく」
せっかくだからまだ使ったことの無い魔法を試してみよう。
「ステータス・オープン」
──
使用可能攻撃魔法(一部)
・ダークボール
・ライトボール
──
この辺を試してみるか。
まずは杖なしだ。
「じゃあいくぞ。『ダークボール』!」
発動直後、俺の手元から闇が放たれた。
闇は、球体となって的に襲い掛かる。
そして、闇は的にぶつかるとそのまま消えていった。
「なっ!?」
店主が何やら驚いている。
「今のダークボールだよな!?なんだその威力!しかも杖なしで……これが異世界の英雄の力なのか……」
「よし、じゃあ次は杖ありだな」
俺は杖を手に取り構える。
不思議な感覚だ。体の中でエネルギーが回っているような気がする。
「『ダークボール』」
俺がそう言ったその瞬間、手元から闇が恐ろしい速さで的へと一直線に伸びていった。
そして、伸びていった闇は的を貫通し、そのまま的を飲み込んでしまった。
後に残ったのは少しの残骸だけだ。
これはどちらかと言えばダークボールじゃなくてダークレーザーだ。
「…………」
「あ……申し訳ない」
「い、いや、それは別に良いんだが……何だ今の……」
その後、ダイナさんが元に戻るまで30分ほどの時間を有した。
*
ダイナさんが正気に戻ったみたいなので帰ろうととしたら、ダイナさんに止められた。
「ちょっと良いか?」
「……?」
「……その杖の宝石は、本来相当高いもんだし本当ならこの杖はもっと高くてもおかしくないと思ってる。でもそれを兄ちゃん──オサムに安く売るのは、あんたがこの世界を救うに相応しい力を持っていると思ったからだ」
だから──とダイナさんは続ける。
「絶対この世界を救ってくれ。頼りにしてるぜ」
「ああ」
こうして、俺は店を後にした。
さて、杖を手に入れて目的は果たしたわけだがこれからどう1日を過ごそうか。昨日行っていない方向へでも行ってみようかどうしようか。
……そう言えばミルスさんが王国騎士団本部に見学に来て良いって言ってたな。
「見学……、行ってみるか」
*
俺は、通行人に度々現在地を教えてもらいつつ何とか王国騎士団本部へと到着していた。
相変わらず白くて綺麗な建物だ。
なんていうか、建てたばっかりの綺麗な病院みたいというかなんというか。
建物の高さも王都では1、2を争うくらい高い。
入り口は階段を数段登ったところにあり、ガラスの扉が付いている。
しかし、見た目は完全にガラス扉なのに中が良く見えない。単に質の悪いガラスなのか、それとも防犯上見えづらくしているのか。
……っと、それは置いておいて。
入るのに何か手続きみたいのはいるんだろうか?
「……見た感じ、入り口付近には誰もいないが…….普通に入って大丈夫なんだろうか?」
ミルスさんは確か「許可しておくからふらっと見学していっても構わない」的なことを言っていた。その言葉が本当ならば俺はこのまま入っても不審者とはみなされないはずだが……。少し緊張するな。
……とりあえず入ってみるか。
俺は王国騎士団本部の扉を開いた。
「てめぇぶっ殺すぞ!!」
突然大声が聞こえたと思ったら、入り口の方へ血まみれの男が飛ばされてきた。当然俺の方へと血が飛び散る。
そして俺は扉を閉じた。
(何だ今の……)
中から突然大声が聞こえて反射的に扉を閉めてしまった。
ガラス扉だが中は良く見えない。
(もう一度開けてみるか……)
俺は再び扉を開けた。
(今度は何もないみたいだ。こっちへ飛ばされた男もいつの間にか居なくなってるし……)
俺は内心怯えながら前へと進んだ。
だが、今回は何も起こらなかった。
王国騎士団本部の中はまるで博物館のようだった(別に化石が置いてあるわけではなかったが、なんとなく博物館のような雰囲気を纏っている)。
ところで、受付とかってあるんだろうか?
俺の方向音痴が発動する前にこの建物がどんな作りでどこにどんな部屋があるのか聞いておかなければ……。できれば案内板とか地図も欲しい。案内役とかいないだろうか……。
「あれっ!騎士の方ではありませんよね?どちら様でしょうか?」
そんな時、女性が俺に後ろから声をかけてきた。
「あっ、すみません。自分はオサムと言います。ミルスさんが見学していって良いと言っていたので見学しにきたのですが……」
「……!オサムさん!ミルス様から聞いております」
「本当ですか?でしたら受付の場所とかを教えてもらいたいんですが」
「ええ、構いませんよ。着いてきてもらえますか?」
*
その後俺は、この女性に救われて何とか受付へたどり着くことができた。そこで地図を貰い、受付の人に第一訓練場の見学を勧められたので早速見学に行くことにした。
──そして、訓練場の前に到着すると、そこでは大勢の騎士たちが汗を流し鍛錬に励んでいた。
「おお……、初めてみるけど凄いな……。」
訓練場の中は、ガラス越しに外から見ることができるようになっていた。
また、訓練場の中の声は良く聞こえるようになっていると受付の人が言っていた。中で何かあったときに対応するためなんだとか。
訓練場の中には、剣を振る者たち、一対一で模擬戦を行う者たちなどがいて、1人1人鍛錬の内容は様々のようだった。
俺が特に気になったのは訓練場の真ん中あたりで行われている模擬戦だ。
「おらっ!!」
「ふんっ!!」
剣を手に取って激しくぶつかりあっている。模擬戦なので剣は木刀ではあるが、鍛えてない人の体に当たれば軽い怪我では済まないだろう。
「……んっ?見ろよ!!ヒョロガリのガキが外から見てるぜ!」
そう言ったのは俺が見ていた男だ。
男の声で騎士の殆どが俺の方を向いた。
(今のって俺のことか?確かに彼らに比べれば俺は痩せ細っているが)
そんなことを思っていると、その男が訓練場から出てきた。
「なんだお前、見たところ見学か?(笑)たまに来るんだよなぁ、現実見れてない騎士志望のやつが。お前じゃ騎士になんてなれねぇよっ!!(笑)ザコはとっとと帰って就職先を見つけるんだな。お前みたいなやつが見学に来ると迷惑なんだって。(笑)」
何で俺こんなに言われてるんだ……?
しかし、こいつずっと笑ってるな……いや笑いではなく嗤いの方だが。
「えーと……、俺は別に騎士になりたくて来たわけじゃないんだが……」
俺がそう言うと、男は更に嗤う。
「ぷっ!!言い訳苦しすぎだろ!!騎士志望じゃないやつがここに来るわけねーだろ(笑)」
いや、そう言われても……。
ここで、男は笑みを消した。
「はぁーー、お前みたいなやつは教育が必要だな。おらっ、ちょっとこっち入れよ!!」
男は強引に俺を訓練場の中に入れた。
(口はともかく力はやっぱり凄いな……)
俺は男にひっぱられ訓練場へと入っていった。
*
「お前名前は?」
「オサムだ」
「オサム、お前にはこれから教育を受けてもらう!!」
「教育?」
「そうだ!!私と1対1で模擬戦を行い、お前が勝てば騎士を目指すことを許してやろう!!」
いや、別に騎士なんて目指してないんだが……。
「だがっ、もしお前が負けた場合──お前にはここにいる皆のサンドバッグになってもらおう!!」
「おーーー!!!」
「こりゃ傑作だな!!」
「やっちまえーー!!」
騎士たちが騒ぎ立てる。
おい……本当にこいつら騎士なのか?
俺はどこか間違った場所に来てしまったのではないだろうか……?
「ははっ、とっとと始めるぜ。ほらよっ!!」
男は俺に木刀をぶん投げた。
「……おっと」
俺はなんとかキャッチする。
「はっ、動きが完全に素人じゃねえか!!一応言っておくが、もちろん魔法は禁止だ。魔法を使うなんて騎士道精神に反するからなぁ!!」
お前が騎士道精神とか言っちゃだけだろ。
「あとなぁ、ちなみに言っておくがなぁ……俺はこの第2訓練場のリーダー……王国騎士団1等兵の"ギルズ・アンライフ"だぜっ!!万に一つも勝ちの可能性なんてねぇんだよ!!」
いや、知らないが……。
ん……?
っていうか、今何て言った?
第2訓練場?
ここは第1訓練場のはずじゃ……。
「ここって第1訓練場じゃないのか?」
「は?何言ってんだてめぇ!!第1訓練場なんかと一緒にすんじゃねぇよ!!!」
男──ギルズは怒鳴り散らした。
(……ここって第1訓練場じゃなかったのか。もしかしてまた地図を読み間違えたのか?)
でも、後悔してももう遅い。
俺がギルズと戦うことは決定事項のようだ。
……いや、俺は魔法職なんだが。
魔法を使わない魔法職の意味とは。
(身体強化系の魔法なら使っても、バレないか?)
俺はステータスを表示させ、身体強化系の魔法を検索した。
──
使用可能魔法一覧(身体強化・一部)
・パワーアップ/魔力消費:50/効果持続時間:1分
・スピードアップ/魔力消費:50/効果持続時間:1分
・スタミナアップ/魔力消費:50
・身体機能強化(強)/魔力消費:500/効果持続時間:5分
・身体機能強化(極)/魔力消費:1000/効果持続時間:10分
・身体機能完全強化/魔力消費:5000/効果持続時間:1時間
──
大体こんな感じか。
どれを使えば良いのか全然分からないが、相手は強そうだし強力な魔法でいくか。
「良しっ、では始め!!!!」
騎士の1人が審判になって模擬戦の始まりを告げる。
俺は魔法を構築し、心の中で唱えた。
(身体機能強化(極)!!)
その瞬間、俺はまるで世界が止まったかのように感じた。
周りの景色がありえないくらい遅く動く。
いや、動いているかどうか分からないレベルだ。
当然、俺の目の前の男もまるでスローモーションのようにほんの少しずつ動いている。
俺は木刀をしっかりと握ると、そのまま目の前の男の頭に思い切り叩きつけた。
男はそのまま地面へと叩きつけられる。
俺は魔法を解除した。
男は動かない。
俺が審判の方へ向くと、審判は混乱しながら模擬戦の結果を告げた。
「し、勝、勝者、オサム……」
場が静まり返る。
──
殺しを嫌う者
レベル1191→レベル1221
──
「帰るか……」
こんなところにいても不愉快になるだけだしな……。
そして、俺が帰ろうとしたその時──
「オサム殿!!」
訓練場の外から聞き覚えのある声が聞こえた。
「あっ、ミルスさん」
ミルスさんが訓練場へと入ってきた。
「……!?なんでミルスがこんなところに……!」
「あいつがここに来るなんて」
「オサムって何者なんだ……?」
ミルスが来たことに騎士たちが動揺している。
「オサム殿、なんでこんな場所にいるのですか!?」
「あ、実は見学に来たんだが……。来て良いって言ってなかったか?」
「確かに言いましたが、第2訓練場なんかに行くとは思わなかったんですよ!!」
「実は、第1訓練場に行くつもりが地図を読み間違えたみたいで」
「地図を読み間違えた……?ちょっと見せて下さい。……え、これどうやったら間違えられるんですか……?ちゃんと書いてあるじゃないですか……」
「俺はちょっと方向音痴みたいでな」
「いや、ちょっととかそういうレベルじゃ……、まあとにかく早くここから出ましょう!ここにはロクなやつがいませんから!!第1訓練場はもっとまともなんです!!」
そうだったのか……
「分かった。じゃあ、申し訳ないが案内頼めるか?」
「ええっ!オサム殿を1人で歩かせるのは危険すぎますから!!」
こうして、俺は信頼できる案内役を手に入れたのだった。
ー第12話 完ー
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