第7話:覚醒の始まり
第7話です。3.5章最終話となります。
「──死にましたか」
回復神ルーラは、目の前に倒れている少女の姿を見て、そう呟く。
「……まぁ、あの攻撃を受けてなお生き残ることなど、防御力が低い回復属性持ちでは、不可能ですか。──さて、次の挑戦者が現れるのは一体何年後になることやら」
死体はそのうち、魂へと変換されるだろう。
彼女は、愛花をそのままにして自身の領域へと戻ろうとした。
──だがそのとき、なぜか違和感を覚えた。
足元に、何やら気配を感じる。
「……?」
足元を見ると──そこには、手があった。
「……っ!?」
慌ててそれを振り払おうとするが、その手は決してルーラを離さない。
「……捕まえましたよ」
そして、背後からは先ほどまで聞いていた声。
それは、死んだはずの少女が生きていたことを意味した。
「私はここで死ぬことはできませんよ」
「……生きて、いる……?」
確かに必殺の一撃を打たせたはずだ。
だが、現に彼女は生きている。
そして同時に、魔法騎士の姿がないことにも気づく。
「……申し訳ないですが、こうなったらもう意地でもあなたに認めさせるしかありません。──『魔力吸収』」
愛花がそう唱えたと同時に、回復神ルーラの意識は途絶えた。
***
──少女はただそこに立っていた。
無心で、神を敬うことなく力を奪い続ける。
もはや、目の前の神を栄養としか思わなくなっていた。
「…………」
その目は、自身の想い人を思わせるような冷静で深い闇のような目だった。
***
「……はっ!?」
11時間後。
突然、ルーラは目覚めた。
「……起きましたね」
「……っ!?」
突然のことに、ルーラは自身が回復神であることを忘れそうになる。
先程までただ逃げ、自身を回復することしかできていなかった少女が、神であるルーラを見下ろしていたのだ。
「なんで驚くんですか。……それよりも、12時間。経ちましたよ。私は、12時間耐えろ、としか言われてません。貴女が戦闘不能になっていようが、開始から12時間経ったので、私の勝ちですよね?」
「……は?」
ルーラは何を言われているのか一瞬分からなかった。
だが、すぐに状況を理解する。
北愛花という少女は、やり方はどうあれ、試練を達成したのだ。
ルールを破ってはいない以上、属性神として認めなければいけない。
それに、そもそもルーラには今の愛花をどうこうするだけの魔力は残っていなかった。
「……」
目の前の少女は、ここへ入ってきた時とは違う目をしていた。
何か、自分の中で決心をしたような、そんな目だ。
「……わかりました、認めましょう。北愛花、貴女は、試練をクリアした者にふさわしい」
***
その後。
試練をクリアした愛花は、ゲートにより、ダンジョンの入り口前に転移した。
そこでは、未来と龍太郎が野営をして愛花の帰りを待っていた。
「──あ、未来と龍太郎君も無事でしたか!!」
「ええ、私たちはかなり前に合流したわ。愛花の試練だけかなり長かったみたい」
「そうだったんですか!?私めちゃくちゃ眠いのを我慢してたのに……」
愛花は項垂れる。
そこまで気にすることでもないのだろうが、疲れが一気に押し寄せていたこともあって、どうしても愚痴っぽくなる。
「じゃあ、今夜はここで野宿して、明日王都に帰りましょうか。取り敢えず、今は夕食にしましょう」
未来は、袋から鍋を取り出した。
「そうですね。私、早く普通の布団で寝たいし、普通のご飯も食べたいです!」
***
次の日。
愛花たち3人は、王都への馬車に乗っていた。
「そういえば、皆さんレベルいくつになりました?」
「ああ、えーと──」
ダンジョンに入る前、3人のレベルはレベル80前後だった。
だが今3人のレベルは、愛花、未来、龍太郎の順に、なんと621,603,601である。
「……随分レベルも上がったわね。あ、それと、『試練』をクリアした時のプレゼント、どうだったかしら?ちなみに私は──」
ダンジョンの『試練』をクリアしたことにより、3人はそれぞれの属性神によって『報酬』を受け取った。いわば、試練をクリアした証だ。
愛花は、回復神からスキル『治癒の支配者』を、
未来は、氷結神からスキル『氷の支配者』を、
龍太郎は、爆炎神からスキル『暴炎支配』を、
それぞれ手に入れた。
「……随分頑張りましたねー、王都に帰って休んだら、腕試しでもしませんか?今までと同じような依頼を受けてみて」
「そうね」
「…………お……う」
「……龍太郎君、やっぱり酔ってるわね……」
馬車での道のりを乗り越えられるか分からない龍太郎を見て、未来はため息を漏らした。
***
──この世界の時間で、ダンジョンから出てから約1か月半が過ぎた。
現在は7月(この世界基準)。
もうすぐ、世間は『夏休み』に入ろうとしている。
愛花達三人は、この1か月半の間、冒険者ギルドの仲介でさまざまな依頼を受けた。
中にはドラゴンの討伐など、まさに異世界の英雄のような内容のものも多い。
そうなると当然、その分お金も貯まる。
もうすぐ夏休みだというので、愛花の提案により、どこかへミルスさんやルック、リーフらをつれて旅行へ行くことになった。
「──で、旅行先どうします?………せっかくなら、方向音痴さんも連れて行きたかったですが」
「そうね……」
「俺はどこでもいいぜ」
「あ、それでしたら、ここはどうでしょうか?」
議論が停滞する中、ミルスが紙を取り出した。
その紙には、『No,1観光地:神聖ミナ教国「水都ルーア」と書かれていた。
「あー、いいですね、それ!この世界で一番人気の観光地なんでしたっけ?」
「はい、まず最初の旅行に行くとき、無難にいくならここだと思います」
「なるほど…………じゃあ、そこにしませんか?」
主催者の愛花は、ミルスが手渡した紙を読み込み、そしてその提案に賛成した。
「いいと思うわ」
「いいぜ、俺は」
「僕も、良いと、思います」
「私もです。」
ルックとリーフも、まだ少し遠慮しがちではあるが、議論に参加する。
「では、満場一致で決定です!!!!夏休みから、ルーアへと行きましょう!!!」
***
~平サイド~
2年Aクラスの教室にて。
「……では、これらの候補地から、多数決で決めたいと思います。目を瞑って手を挙げて下さい。意図的に目を開けている人は居残り勉強させますよ」
「「「はーい」」」
「……なるほど、集計できました。では発表します。旅行先は──神聖ミナ教国ルーアに決定しました」
-第7話 完-
お読みいただきありがとうございます。
ついに第3.5章完結となります。
ここまで読んでくださった方々には、感謝を。
第4章は、なるべくすぐに始めたいと思います。
自分は書くのが遅いため、どうしても毎日投稿などはできていませんが、なるべくそれに近くしていきたいです。
それと、誤字報告ありがとうございました!!
これからより一層頑張っていきたいと思います。




