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公爵令嬢は♡姫将軍♡から♡降魔の巫女♡になる  作者: 変形P
第1部 闇神殿編
30/432

030 ユリアナ公国の♡首都♡

今回のお話は、お食事中の閲覧はご遠慮ください。

国境である丘陵地を登ると、眼下にユリアナ公国の領土である南北に細長い盆地が広がっていた。周囲を小高い山に囲まれているが、前方の東側には山がなく、その先に荒涼たるケールランドル大沙海ハリーナが広がっているのが見てとれた。


ユリアナ公国の領土自体も緑が少なく、大沙海ハリーナに浸食されているように見える。


「ユリのアナか・・・。何となくエッチな響きね」とふとつぶやく。


「え?」隣にいたスニアに聞き返された。


「な、何でもないわ」・・・いつもの頭の中に突然浮かぶたわごとよ。


軍隊は乾燥した下草がまばらに生えている斜面にさしかかり、馬車が転倒しないよう少しずつ下って行った。


バラグッダ司令官はあの襲撃を受けた日から毎日進行方向に斥候を出していたが、あれ以来魔教徒に待ち伏せをされることはなかった。こちらを警戒しているのか、それともあの2人の魔教徒が独断で攻撃をしかけてきただけなのか?


ユリアナ公国に入って2度野営し、3日目に首都に到着した。町を囲む城壁も建物も、砂漠と同じ色の砂岩で組まれ、色彩的には殺風景な町並みだった。


申し訳程度の城門に赤銅軍カッパーアーマーズが入ると、ユリアナ公国の兵士に何かを告げた。その兵士は赤銅軍カッパーアーマーズと我々を誘導した。


案内されたのは街中にある広場だった。どうやらここで野営をしろということらしい。


「宿泊する建物はないのですか?」とバラグッダに聞くと、


「そもそも多人数の兵士を宿泊させられる建物がありません。雨がほとんど降らないので、これでいいと思われています」と答えた。


いやいや、砂漠気候では昼は暑いし、反対に夜はとても寒くなる。砂岩を積み上げて建てただけの建物でも、あるのとないのとではかなり違うだろうと思った。


「それからここでは食事の提供はありません。自分たちで食糧を買いに行くしかありません」とも言われた。


メイドたちとガンダルら兵士たちを引き連れてぞろぞろと食べ物屋を探す。やっと見つけたパン屋は、麦よりも小粒の穀物で作った平べったいパンしかなかった。それを各軍隊で取り合うように注文するが、ザカンドラ皇国内で買ったパンの倍以上の値段がした。


パン以外のおかずや飲み物を探すと、壷に入った馬乳酒アイラグが売られていた。何らかの皮で口が覆われ、革ひもで結ばれていた。これもいい値段がした。


次は肉屋だが、体長半ヤールくらいの砂漠トカゲが店頭にたくさん吊られているのを見たときは鳥肌がたった。スニアは悲鳴を上げて卒倒しそうだった。


ほかに馬肉を干したものがあったので買ったが、やはり高かった。


最初は他国の軍隊にぼったくっているんじゃないかと思ったが、食材自体が少なく、外国人には普通にこの値段で売っているということだった。ちなみにユリアナ人はこういう店では買わず、自分で調達するらしい。


闇神殿まで往復一月くらいかかりそうだったので、この首都で食糧を買い占めたが、必要量そろえるのに数日かかった。


進軍中の携帯食を食べるわけにはいかなかったので、普段の食事は街中の食堂にみんなで行った。メニューは砂漠ネズミや砂漠トカゲのシチューが多く、若干生臭い肉を食用サボテン(トゲはない)と一緒に酸味がある馬乳酒アイラグで煮込んだものだった。


「シチュー自体は酸っぱい、肉は生臭い、サボテンは青臭い!」とバネラたちが文句を言う。


私も同感だったが、他に食べるものもなく「文句言ってないでがまんしなさい」とたしなめた。


たまに砂漠ウサギの肉の塩焼きが売られていることがあった。決してうまいとは言えないが幾分ましな味で、あれば競って買った。


そんな食生活で数日過ごしていると、ザカンドラ皇国の東覇エステ軍と北伐ノルテ軍、コルシニア王国の装甲騎兵軍アーマードトルーパーズ、メラニア王国の陸軍部隊が到着し、食糧の奪い合いはより激化した。


北伐将軍ヘネラル・ノルテーニョのミラスはさっそく私を尋ねてきた。


「ドロシア嬢、無事に到着されていたようで何よりです」


「私たちは途中、魔教徒の襲撃を受けましたが、ミラス様たちは何ごともありませんでしたか?」


「ドロシア嬢やバラグッダ殿のご報告のおかげで終始警戒して進軍して来ましたが、何ごとも起こりませんでした」


「それは何よりです」


「バラグッダ殿から聞いたのですが、その襲撃の際にドロシア嬢がまた神の力を示されたとか?」


「え、ええ・・・」


「それは見たかったですね!ドロシア嬢の神々しいお姿を!!」


神々しかったわけではありません。


「それより今夜、一緒に食事に行きませんか?・・・あ、残念ながらパルス兄さんも同席しますが、この首都で最もうまい料理を出すと言われている高級食堂リストランテにご招待します。


「へー」


パルスとミラスの2人と一緒というのはマイナスポイントだが、最近あまりおいしいものを食べられなかったので、せっかくのお誘いを受けることにした。


「・・・というわけで、今夜の夕食は私はいらないから」とスニアやバネラたちに言った。


「え〜?一人でおいしいものを食べに行かれるんですか〜?」と不満そうなバネラたち。


「でも、お嬢様はこれまで、ザカンドラの皇子たちとの会食でほとんど食べられなかったから、今回もごちそうを食べられないかもよ」とスズが口をはさんだ。


いやな予言だ。


それでも高級食堂リストランテに招かれるということで、私はドレスを着て待っていた。護衛としてバストルとレクターにも待機してもらう。


日が暮れてしばらくしてからパルスとミラスが護衛兵士数人を引きつれて迎えに来た。2人とも豪勢な服を着ているので、私のドレスは悪目立ちしなかった。


高級食堂リストランテには徒歩で行くということで、護衛兵士をつれて歩き出したが、街並みにふさわしくない盛装をした私たち3人は、ユリアナ人や兵士たちの注目を浴びて恥ずかしかった。


2人につれられて行った高級食堂リストランテは、他の建物と同じように砂岩でできていた。


護衛兵士を外に待機させて高級食堂リストランテの中に入ると、内壁も砂岩むき出しだった。装飾はあまりない。そして、なぜかほかに客は一人もいなかった。


案内されたテーブルは触るたびにかたかた動き、見た目はとうてい高級とは思えなかった。


この店に慣れているらしいパルスが指を鳴らして給仕カメリエーレを呼ぶ。そしてテーブルに来た給仕カメリエーレにパルスが、


「この店で最も高い料理を3人前、馬乳酒アイラグを3つと、後は適当につまめる物を出してくれ」と注文した。「あれも忘れずにな」


「パルス将軍はこの店はなじみですか?」と聞く。


「ああ。ザカンドラ皇国の東方は我が軍の管轄なのでね、たまにユリアナ公国にも足を伸ばす。何もない国だが、ジナン帝国が勢力を伸ばして来ぬよう監視する必要があるのだ」


ザカンドラとジナンは大国どうしだ。仲良くしているように見えても信用していないんだな、と思った。


まもなく給仕カメリエーレが大皿を持って来た。その上には砂漠ウサギの丸焼きが載っていた。顔や耳や手足がそのままの形で焼かれていて、ちょっとげんなりしたが、ウサギ肉なら食べられるかと思い切り分けてもらった。


ほかには塩を振ったサボテンのサラダと、砂漠ネズミの串焼きが運ばれてきた。串焼きを見ないようにして馬乳酒アイラグが入った素焼きのグラスを手に取る。


「それでは、ドロシア嬢との再会を祝して乾杯!」パルスの言葉で私たちはグラスを傾けた。


馬乳酒アイラグは強い酸味と炭酸のしゅわしゅわ感が特徴で、弱めのアルコールも含んでいる。ここへ来て何回か飲んだことがあるが、酸っぱすぎて酢を飲んでいる気分だった。


「先日、皇宮の会食に来ていただいたときは、女性陣の言葉で気分を害され、あまり食べられなかったでしょう?どうぞ、いっぱい食べてくださいね」とミラスが言った。


途中退席した最大の原因はバネラ・チーズ・スープだけどね。


「ありがとうございます。いただきます」そう言って砂漠ウサギの肉をフォークで口に入れた。


もそもそとかむ。筋っぽい肉で、塩焼きと異なり血の味を感じるが、食べられないことはない。


煮込んでいないサボテンのサラダは、若干青臭いが、瑞々しい葉肉が未体験の食感だった。


「それにしても、このお店」と私は2人に話しかけた。「私たち以外にお客さんがいませんね」


「ああ、今日は貸し切りにしたんだ。特別料理を出してもらうためにね」とパルス。


「特別料理?」


「とても香り高い食べ物なんだが、なぜか苦手な人が多くてね」


そのとき、強烈な匂いが漂って来た。これは知っている。バネラ・チーズの匂いだ。


「これが特別料理だ。あの発酵チーズを軽くあぶって香りを立てたものだ」


思わず胃がけいれんを起こしそうになるが、意思の力で無理矢理押さえ込んだ。


なるべく息を吸わないようにして、焼いたバネラ・チーズを見ると、その上に小さな白い球体がいくつか載っていた。ただの白い球体ではなく、・・・一か所に黒目がついている。何かの目か?何かの卵か?恐ろしくて聞けなかった。


「私酔いましたわ。それにお腹もいっぱいになりました」力を振り絞って2人に言う。


「おや、もうですか?それでは闇神殿に着くまでに倒れてしまいますよ」とミラスが気遣った。


「いえ、もともと食が細いので。・・・それに、馬乳酒アイラグで少し酔ってしまいました」


私はよろよろと立ちあがった。


「申し訳ありませんが、今夜もこれで退席いたします」


「ドロシア嬢!?」


2人に追う暇を与えず、ふらふらと歩いて高級食堂リストランテの外に出た。


「バストル、レクター、帰るわ!」


あわてて近寄る2人。私はそのままふらふらと少しだけ歩くと、建物の陰でうずくまった。


「姫将軍殿!?」


しばらくして胃が空っぽになると、バストルとレクターに支えられるようにして宿営地に帰った。


「お嬢様!?」スニアが驚いて出迎える。


私はドレスを脱ぎ棄て、スニアにラメダ水を入れてもらった。ラメダの独特の香りがとても心地よく、気を落ち着かせる。・・・ドレスを汚さなくて良かった。


心配そうな顔をするスズに気づいて、


「あなたの予言が当たったわ」と囁いた。




さて、この首都から全軍が出立するのは数日後の予定だ。それまでは食糧と水の調達が主な仕事になるが、早めについていた我が軍はおおむね調達できていたので、その日食べるものの心配をするだけで良かった。


そこで翌朝、馬車のステップに腰かけてぼーっとしていると、バラグッダ司令官が馬に乗って私を誘いに来た。


「降魔将軍殿、お暇なら狩りにでも出かけませんか?」


「何の狩りですか?」


砂漠貂パルマルテスですよ。・・・肉はあまりうまくはないが、狩りの対象として人気がある獣です」


「後学のために参加しますわ」暇な私はそう答えて、馬で出る準備をした。もちろん護衛のバストルとレクターも馬に乗って同行する。


まさに馬に乗ろうというときにパルスとミラスがやって来た。


「ドロシア嬢、ご体調はいかがですか?心配しましたよ」とミラス。


「わざわざお気遣いありがとうございます。私は大丈夫です。そして昨夜は失礼しました」


「それはかまわぬが、これからどちらへかお出かけか?」とパルスが馬上のバラグッダを見て聞いた。


「バラグッダ司令官に砂漠貂パルマルテス狩りに誘われたところですの」


「それはおもしろそうだ。バラグッダ殿、我々も同行してかまわないか?」


「どうぞ、パルス将軍殿。ここで待ちますので、狩りの準備をして来てください」


「了解した。・・・それからドロシア嬢、今夜の晩餐にも招待したいと思うが、来てもらえるだろうか?」


私は昨夜のことを思い出した。そして、このまま黙っていては同じようなことが繰り返されると思い、意を決して話しかけた。


「あ、あの。・・・パルス殿下、ミラス様。私はあの発酵チーズが苦手ですの」


高級食堂リストランテユリアナの揺りかご(クッラディユリアーナ)”の今宵のアラカルテ


Antipasto(前菜) 砂漠ネズミの串焼き(スピエディーニ)

Vino(食中酒) 馬乳酒アイラグ

Primo Piatto(主菜1) 焼き“皇帝のチーズインペリアーレ・フォルマッジョ”、砂漠ネズミの眼球塩漬け添え

Secondo Piatto(主菜2) 砂漠ウサギの丸焼き(ポルケッタ)

Contorno(副菜) 覇王樹のサラダインサラータ・ディ・カクトゥス

Dolce(デザート) 馬乳酒アイラグ漬け“皇帝のチーズインペリアーレ・フォルマッジョ


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前作の「五十年前のJKに転生?しちゃった・・・」を公開中です。
こちらを読まれると本作の隠れ設定が理解できます。
よろしくお願いします。
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