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公爵令嬢は♡姫将軍♡から♡降魔の巫女♡になる  作者: 変形P
第1部 闇神殿編
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010 ニェートの♡保護♡

私がバネラたちを追い回している間、テーブルでスズがニェートと一緒に軽食を食べ続けていた。


「あなた、おもしろい子ね」とスズがニェートに言った。


「あ、ありがとう。・・・あんたの名は?」


「私の名はスズ。私もお嬢様にさらわれて来たの」


「ええっ!?」と驚くニェート。


「ひ、人聞きの、わ、悪いことを言わないで」私は息を切らしながらスズに注意して席に着いた。


バネラたちには家中の真鍮磨きの罰を与えておいた。私は飲みかけのラメダ茶をずずっと吸った。


「スズも行くところがない子だったから、私が拾って面倒を見ているの」


「そうなの・・・」とスズを見つめるニェート。「スズがうらやましいです」


私はニェートを見つめた。語りの芸は私の趣味には合わなかったが、なぜかニェートが気になって仕方がなかった。このまま大道芸人の元に返すのが忍びない。


「ニェート、あなたもここで暮らしたい?」


私の言葉にニェートははっと顔を上げ、その目を輝かせた。しかしすぐに顔が曇り、うつむいた。


「お嬢様、そのお言葉はとても嬉しいんですが、おかしらたちがただで手放しませんよ。きっと、莫大な金銭をたかろうとするに決まってます・・・」


「そうね。・・・曲がりなりにもニェートを引き取って育ててくれたんだから、その分の対価は喜んで払うつもりよ。でも、私たちなら足元を見られそうね」


私は考え込んでから、ライラに執事室に行って、執事長のヤバルに父の許可を得て私のところにすぐに来てほしいと伝えてもらった。


多忙な父についているのでヤバルが来るまでに時間がかかるのではないかと危惧していたが、ヤバルは一刻後には私の居間のドアをノックした。


ライラがドアを開いてヤバルを招き入れる。


「忙しいところ悪いわね。お父様の機嫌を損ねたのではなくって?」


「いえ、公爵様はお嬢様のことを心配され、すぐに飛んでいけと私に指示されました。・・・お嬢様が私めを呼び出されるのは、何か大ごとが起こっているのではないかと心配されまして」


「お父様のお優しいこと」私はこの場にいない父に感謝した。


「それはさておき、あなたにお願いがあるの」


「何でございましょう?」


「ライラ、スズにニェートをつれて来るよう言って」私がライラに指示を出すと、まもなくスズがニェートをつれて部屋に入って来た。


「ヤバル、あなたは知っていると思うけど、こっちがこの前私のメイドにしたスズよ。お父様の許可を得ているわ」


「黒衣の魔女の住処で見つけた少女ですね?」


「何でもお見通しね、ヤバルは。・・・それでこっちの子が大道芸人のところにいるニェートよ。これでも女の子よ」


「あの、大道芸人の子ですか?」


「そう、あの、私を宣伝してくれている大道芸人よ。・・・この子は大道芸人の実の子どもではなく、遠い親戚の子らしいの。でも、待遇はあまり良くないみたい」


「それで、その子もお嬢様のメイドに迎えられたいと?」


「そういうことなの。もちろん無理矢理ではなく、大道芸人にこの子の身請け代として銀貨100枚までは払うつもりよ」


私は父からはお金をもらっていない。私自身がお金を使う必要はないから。しかし、将軍職についているため多少の手当が出る。それを貯めているのだ。


「なるほど。・・・そこまでこの子を気に入った理由は何でございましょうか?」


「・・・この子をね、どうしてもそばに置いておきたいの。明確な理由や、この子をそばに置くメリットは特にないわ。でも、弄ぶためでも、こき使うためでもない。神のお導きと言うほかないわ」


「なるほど、光明の神に見込まれたお嬢様のお言葉とあれば、神のお導きを無視できませんな」


ヤバルは先日の教主の会話まで知っているのだろうか?国王と私しかその場にいなかったのに・・・。


「ニェートとやら」とヤバルがニェートに声をかけた。


「お前はどちらがいい?お嬢様のメイドとなるか、大道芸人の元に戻るか?」


「おいらは一流の芸人になりたいと思っていました」とニェートはヤバルをまっすぐ見ながら答えた。


「でも、今のおかしらとは話が合わない。おいらはお嬢様にお仕えしながら、芸について考えたいと思います。・・・何より、お嬢様とずっと一緒にいたいと思いました」


ニェートが私を見た。ニェートの目は輝いていた。


「お嬢様へのお仕えをおろそかにしてはなりませぬぞ」とヤバルが一言たしなめる。


「お嬢様、この件は公爵様に報告します。その上で、明日の朝、さっそく行動に移しましょう。お嬢様は今夜はゆったりとお過ごしください」


「ありがとう、ヤバル。感謝するわ」


ヤバルは一礼して部屋を出て行った。


「ヤバルはきっとあなたを私の元へ寄越してくれるわ」とニェートに言う。


「さて、私はお風呂に入ってくるから、また、夕食の席で会いましょう。・・・スズ、それまでニェートの面倒を見ておいてね」


スズがニェートを部屋からつれ出す。あの2人はお互い馬が合うようだ。


「さっき食べたのに、また食事をするの?」とニェートがスズに聞いていた。


かわいそうに。今まで一日に何度も食事を与えられなかったのだろう。・・・私たちが食い過ぎているとは思っていないよね?


その日の夕食は、雷鳥のお腹にラメダの葉を詰め込んで蒸し焼きにした物と、雷鳥の頭と足からだしを取ったコンソメスープだった。ニェートはちょっとお行儀が悪いくらい口に詰め込んでいた。


翌朝、屋敷の正門前に公爵家の馬車が用意されていた。4頭だてで8人は乗れる豪華な仕様の馬車だ。ドアには公爵家の紋章がでかでかと描かれている。父の公用以外では滅多に使わない高級車だ。


ヤバルの指示に従い、その馬車に私とライラとニェートとスズが乗った。さらにヤバルと、ヤバルの下にいる屈強そうな執事が2名乗り込んだ。


空席には、銀貨50枚を入れた袋が2個置いてある。


馬車は街中を堂々と進み、歩行者を避けさせて大道芸人が泊まっている安宿の玄関前に着いた。


ヤバルと2人の執事が馬車を降りると、宿の玄関を押し開いて中に入った。私たちも後に続く。


「クランツァーノ公爵家の者だが、ここに泊まっている大道芸人の一行を呼び出してくれ」とヤバルが宿の主人に言った。その言い方は丁寧だったが、拒否できない底知れぬ威圧感があった。


「は、はい、ただ今!」と言って宿の主人が奥に入り、やがて寝ぼけ眼の大道芸人のかしらとその妻と一人の男を引っ張って来た。


「な、何ですか、あっしたちは何も悪いことはしていませんが・・・」ヤバルの佇まいに圧倒されつつかしらが言った。


「あ、ニェート!」とかしらの妻がニェートを見つけて叫んだ。


「この子が何かしでかしたんじゃないでしょうね!?この子はうちが面倒見てるけど、うちらの子どもじゃありませんよ。悪さをしたのなら、その子だけ引っ張っていってください!」


「この子が悪さをしたわけではない」とヤバルが言うと、かしらの妻は押し黙った。


「お前たちはここにおられるクランツァーノ公爵家の令嬢、ドロシア様を虚仮こけにした寸劇で金を稼いでおるな」


「い、いえ、虚仮こけになどしておりません。お嬢様の、姫将軍様のご偉業を皆に伝えているだけで・・・」


「ドロシア様は公爵家令嬢であるだけでなく、王位継承権を持つ王族の一員でもあられる。王族を題材にした寸劇を無許可で行うと、それだけで王族不敬罪で処刑されることをご存知か!?」


「い、いえ、知りませんでした。ど、どうかご容赦ください」大道芸人のかしらが床に手をついた。他の2人もあわてて同じ格好をする。


「お前たちはこのニェートとか申す子を引き取って育ててきたそうだな。それは見上げたものだ」


「は、はい。我が子のように大事に育ててきました」自分たちが助かる材料になるかも知れないとかしらがあわててヤバルの言葉を肯定した。


「だが、お前の女房は、さっき『その子だけ引っ張っていけ』と突き放したような言い方をしていたが?」


「い、いえ、この女は口が悪くて。わしらの、・・・少なくとも私の本心ではございません」


「この子は小さくてお前たちの役に立てないことを申し訳なく思っていて、お前たちのところを出て公爵家に奉公に来たいと申しておる」


「へ?」と意味がわからず聞き返すかしら


「お前たちのこの子への思いと、この子の健気さに免じて、先ほどの王族不敬罪は不問にしてよいとお嬢様が仰せだ。さらにこの子を引き取って奉公させ、その身請け代としてお主らに報償を授けようという慈悲深いお心を示された」


「へ?ほ、報償?」


「これが身請け代だ!」と言ってヤバルはかしらの目の前に中身が詰まった袋を1個置いた。


「銀貨50枚だ」


「へ?へ?へ?」わけがわからないかしらだったが、徐々に金がもらえると知って目が血走ってきた。


「公爵家にお仕えできるなら、その子も幸せでしょう。ただ、私らはこの子を失って悲しみに暮れますし、この子を育てるのにもっと金を使って参りましたもので・・・」


かしらは金銭の上乗せを要求してきた。


「ほう、これでは足らぬか・・・。なら、これでどうだ?」


ヤバルはかしらの目の前に中身が詰まった袋をもう1個置いた。


「合計で銀貨100枚だ」


2袋の銀貨を見て、かしらはにやりといやらしい笑みを浮かべた。


「へっへっへっ、この子の養育にはもう少しお金をかけてきましたので・・・」


「そうか、これでは足らぬか・・・」ヤバルはそう言うと、2袋の銀貨をつかみ、後にいる執事の一人に手渡した。


「残念だがお嬢様の払えるお金はこれだけだ。これで足らぬのならあきらめよう。・・・後で王家から『王族不敬罪』の取調べが来るので協力するように」


そう言ってヤバルは私の方を向いた。


「お嬢様、申し訳ありませんがこの子はあきらめてください」


その言葉を聞いて、大道芸人のかしらとニェートの顔色が変わった。


「わかったわ、ヤバル。私の力不足ね。今回はあきらめるわ」


そう言うと私はしゃがんでニェートの顔を正面から見た。


「ごめんね、ニェート。あなたを助けることができなくて」


「お嬢様・・・」泣きそうな顔になるニェート。


「あなたはおかしらたちと一緒に牢屋に入れられるけど、あなたに罪はないから早めに出られるよう手配してあげる。おかしらたちが牢屋から出てくるまで4、5年、あるいは10年くらいかしら?そのときまでは面倒見てあげるからね」


私は立ち上がった。「さあ、帰りましょう!」


「お、お待ちください!」私の言葉を聞いて血の気を失っていたかしらが私の足元にひれ伏した。


「銀貨100枚でこの子をお譲りします!どうか不敬罪での捕縛はご勘弁を!」


「ほう?」ヤバルがかしらの前にしゃがんだ。「この子を銀貨100枚で譲っていただけると?」


「ええ、お譲りします!」


「それでは、我々が貴族の権力を振りかざして無理矢理この子を奪ったと後で訴え出ないよう、この書類に署名していただけますかな?」


執事の一人が書類を出して内容を説明した。自由意思でニェートの養育権をドロシア・ダネル・ネル・クランツァーノに譲ること。その代価としてこれまでの養育費銀貨100枚を授け、王族不敬罪の告発を取り下げること、この契約内容に違反した場合はボルランツェル王国の法律に則って厳正に処罰されることが書いてあり、かしらは急いで署名した。


「あの、寸劇はもうしてはいけないので?」最後におそるおそる聞くかしら


「もうかなり儲けたのではありませんか?この国では王族不敬罪になるので、どうしても上演したいのならよその国へ行きなさい」とヤバルが答えた。


私としてはよその国でも上演してほしくはないが、そこまで強制はできない。


「ニェート、これであなたは私のところへ来ることになったわ!」と私は宣言した。


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前作の「五十年前のJKに転生?しちゃった・・・」を公開中です。
こちらを読まれると本作の隠れ設定が理解できます。
よろしくお願いします。
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