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fifth life

作者: にっくきニック

一回目は、滅茶苦茶だった。

人と一緒に過ごすことがこんなに難しいとは思わなかった。

聞き取れないから何回も尋ねていたら、一人だけ仲間はずれにされた。六年生のとき、運動会のダンスで一人振り付けを忘れてしまって、緊張で最後まで棒立ちのままで、そのあとひどく泣いた。ずっと集団に馴染めなくてよくいじめの対象になった。

人が生きるスピードはとても速かった。彼らと一緒に生きるには僕は器用さがずっと足りなかった。


二回目は、寂しかった。

孤独がこれほど辛いものだと知らなかった。

人とは一緒に生きないと決めてから、ずっと黙りこんでいたら、今度は誰からも興味を示されなくなった。どこに行くにも何をするにも独りだった。もういっそ誰の力も借りずに生きていくのだと自給自足の生活をしようとしても、知識も技術も忍耐もなく、腹が鳴るばかりで、ついには里に下りて人の畑から毎日食べ物を盗んでいると捕まって刑務所に入れられた。

孤独は正常な精神を蝕んでいった。一人で生きることは果てしなく空虚だった。


三回目は、怯えていた。

真面目で、勉強もできて、親切で、だけどどこかおっちょこちょいで、誰からも好かれる人間の、その化けの皮がはがされる恐怖に、毎日怯えていた。人に好かれる理論のようなものを馬鹿真面目に研究した。しかしそのままで好かれることなど出来るはずがなく、自分を善い人に見せるための嘘が膨らんで、いよいよもう隠しきれなくなって、心臓が押し潰されるような思いになって、結局家に引きこもった。

嘘が嘘を雪だるま式に膨らませていった。仮面を着けることは僕には危険すぎた。


四回目は、目的がなかった。

家でも学校でも会社でも何も面白いことはなかった。目指すものを見付けられず、楽しいという感情は無い代わりに苦しいという感情が永遠と続き、一日一日を苦痛だけ背負って帰り過ごしていくような怠惰な生活で、人間は目的がなければ生きてはいけないのではないかと思うほどで、ほとほと日々の生活に疲労した。生きたいと思わなければ死ぬしかないのだと知って、外に遊びにいった。

幸せそうな人を単純に羨んだ。満ち足りて生きるには何かが欠けていた。



そして、今、五回目の人生。

僕は、異世界で生まれ変わったんだ! 貧乏な家だったけど、本を読み魔法を独学で覚えて、父上からは剣術を学び、仲間と魔法大学を卒業し、やっと一人前の冒険者としてギルドに登録したんだ! 大学で恋人になった彼女と共に、世界各地を巡って、色んなことを知るんだ!

そうだ、そうなんだ! これから、素晴らしい異世界生活が待っているんだ!

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