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部屋に戻った私はアンナに手当てをされて、そのまま食事を摂らずに休んだ。


◇◇◇


「お可哀そうに。義妹に婚約者を取られるなんて」

「元平民に取られるなんて(間抜け)。よっぽど合わなかったのね(女として魅力がなかったのね)。お可哀そうに」

私は義妹とカール殿下が婚約した後も学園に通っていた。

婚約破棄の後で急に退学をすると義妹に本当に負けたみたいだし、逃げているみたいで嫌だったからだ。

学園に行くと至る所から「お可哀そうに」という言葉と共に嘲笑が私の耳に入る。

父、公爵とは不仲。更に王族であるカール殿下の一方的な婚約破棄。そのせいで社交界での私の立場はとても微妙なものになっていた。

今まで私に取り入ろうと必死に話しかけ、仲の良さを周囲にアピールしようとしていた取り巻きはみんな私から離れて行った。

遠巻きに私を見て、今後の付き合いをどうしようか考えているのだろう。

でも、確かにそろそろ本格的に将来のことを考えた方が良いかもしれない。公爵家に居続けても先が知れている。

私はそんなことを考えながら学園生活を過ごして、帰路についた。

マリアナの言っていた学園生活の素晴らしさは私にはやはり分からない。


◇◇◇


「お嬢様、マリアナ様よりお手紙が届いています」

「手紙?いよいよ根を上げたのかしら」

王妃教育が始まった二週間ちょっと経った頃だろう。まだ始まったばかりだと言うのに。マリアナが送って来た手紙の内容に私は唖然とした。

「お嬢様、差支えなければ手紙の内容を伺っても」

今までのマリアナの行いからまた私を傷つけるようなことを書いているのではないだろうかと心配そうにアンナとジルが私を見る。

「大した内容ではないわ」

私はマリアナの手紙を呆れながら二人に教えた。

彼女の手紙には


『お姉様、お元気ですか?

そろそろ本館に移り、新しい侍女に代わった生活に慣れていることと思います。

学園生活はどうですか?私は残念ながら通えなくなってしまいましたが、私の分までお姉様が楽しんでくれるとそれだけで私も嬉しいです。

実は、今回筆を執ったのはお姉様にお願いしたいことがあったからです。

私は王妃様の厳しい教育についていけません。やはり、元平民の私では無理があるのです。王妃様はお姉様はとても優秀だったと仰っているのです。

それならばお姉様に王妃教育を手伝ってもらおうと思いました。

王妃様はお姉様が大のお気に入りの様です。私は残念ながら嫌われてしまったようですが。できれば、家族の一員として王妃様と仲良くなりたかったのですが、元平民である私を王妃様が受け入れて下さるのはとても難しいようです。

カール様にも会えず、お姉様もいない。本当の家族がいない王宮はまるで私を閉じ込める大きな鳥かごの様。とてもつらく、寂しいです。

王妃様には話を通しておくので是非、私に会いに来てください。本当は私が行きたかったんですが、王妃教育が終わるまで外出を禁じられてしまったんです。

お姉様なら王妃教育を既に終了しているし、とても優秀で、お優しいので、お姉様に教えてもらえると私も頑張れると思うんです。

我儘を言うと王妃教育が終わるまで一緒に王宮で過ごしてほしいです。でも、お姉様のご負担になると仰るなら通いでも構いません。どうか私の我儘を聞いてください。

親愛なるお姉様、快い返事を待っております。あなたの妹、マリアナより』


と、書かれていた。


ジルもアンナも固まってしまった。この微妙な空気、どうしようかしら。

「カール殿下は今、再教育中らしいわ。毎日、膨大な量の執務に追われているらしいの。それこそ寝る間も惜しんでね。もし、それでもダメなら挿げ替えるそうよ。まだ幼いけど、弟君がいるしね。陛下も王妃様もお元気ですし、弟君が立派に育つまで陛下が国を治めることは可能だしね」

「よくご存じですね」

「王妃様から頂いた謝罪文の中に入っていたのよ。まぁ、当然の結果ね。我が家は父が愚かだったせいで何も問題にはなっていないけど、本来なら王族と公爵家とで軋轢が生まれてもおかしくはないわ」

私は読み終わったマリアナの手紙をびりびりに破いてアンナに渡した。アンナは心得たとばかりにそれをゴミ箱へ捨てる。

「面倒な王妃教育からやっと退いたのに。大嫌いな愚妹の為に私が骨を折るわけないのにね。他人の為に動くことが当たり前の彼女にとって、他人が自分の為に動くことも同時に当たり前なのかしらね。・・・・馬鹿らしい」

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