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お姉様が婚約破棄された。

部屋に閉じこもりきりでカール様とのすれ違いの日々が続いていたことには気づいていた。だから私は少しでもカール様にお姉様のことを知ってもらおうと、お姉様のことをたくさん話した。

お姉様がカール様に会われない分、私がたくさん会いに行った。

カール様は格好良くて、聡明で、お優しくて、物語の中の王子様のような人。そんな人だから自然と私はカール様に惹かれた。でも相手はお姉様の婚約者。

私は込み上げる涙を堪えた。私がお姉様のことをお話しする際、カール様は慈愛に満ちた顔をされる。それがお姉様を思ってのことだって分かってる。その度に疼く胸の痛みを我慢した。

お姉様とカール様は愛し合っている。だから、結婚するのだ。そんな二人を私が引き裂いてはいけないと思っていた。

なのに・・・・。


「カール様。婚約破棄とはどういうことですか?」

お姉様は教室を出て行った。私とカール様はお互い話し合う必要があるため、教室を離れ、人払いを済ませた本来なら生徒の憩いの場となっている部屋へ行った。

そこで私は侍女が淹れてくれたお茶には手も付けずに詰め寄った。

そんな私に驚きながらも、カール様は私を落ち着かせようといつものように優しく微笑んでくださる。

その姿を見ただけで心はときめく。

ダメだ。カール様はお姉様の婚約者。私が彼をお姉様から奪ってはいけない。そう、自分に言い聞かせた。

「言葉通りだ。あの女には付き合ってられない」

いつになくカール様の声は冷たい。これが愛する婚約者に向けられる声なのだろうかと疑問に思う。

いいえ、今はそんなことどうでもいい。考えるべきことは婚約破棄についてだ。

「お姉様ともっとよく話し合ってください。お姉様とカール様は少しすれ違っているだけです。誤解が解ければきっと」

期待に満ちた目で私はカール様を見る。でも、カール様から出た言葉はとても予想外のものだった。最初、予想外過ぎて何を言っているのか理解できなかった。

「私はお前との婚約を望む」

「・・・・・えっ」

そっとカール様が私の頬に触れた。これはいつも別れ際にカール様がしてくれる。カール様の別れの挨拶のようなもの。いつも別れる際は今のようにそっと頬に触れ。額にキスをしてくれるのだ。

それをされる度に王族の方が女性の憧れのように物語に出てくるのがよく分かると思っていた。そんなことをされたら誰だって惚れてしまう。

私もその例に漏れなかった。

固まってしまった私にカール様は困ったように微笑んだ後、触れるだけのキスをいつものように額にではなく恋人のように唇にした。

「愛している、マリアナ。誰よりも。君だけを」

その言葉とカール様に口づけされたことで私の頭はパンク。全身が沸騰した湯のように熱くなる。

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