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婚約破棄上等!私を愛さないあなたなんて要りません  作者: 音無砂月
第Ⅰ章 お優しい家族
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私の名前はエマ・スティファニー。公爵家の一人娘。

私の母は父、エイベルを深く愛していた。ところが、父はそうではなかった。政略結婚だから仕方がなく結婚しただけに過ぎなかった。

母はそのことに深く傷ついた。傲慢でプライドの高い母は父と衝突することも多かった。

父の気を引こうとあらゆる無理難題を吹っかけた。でも全ては逆効果。父はより一層、母を嫌った。そして最後は自分から遠ざけるように別館へ母と母と同じ容姿を持つ私を閉じ込めた。

それが最後の一線だった。

母は心を壊した。虚ろで、誰のことも目には映っていないようだった。私のことさえも。

父は一度も別館へは訪れない。私と母には監視がついていた。外に出ることは許されず、私たち母娘は完全に世界から隔離された。

私は貴族令嬢なので一応、家庭教師は雇ってもらえた。本来なら母親から教わる礼儀作法や美しい足運び、仕草などは全て教師に教わった。

噂だが、本館には時折父の愛人が可愛らしい、父にそっくりな娘を連れて来ているらしい。時にはそこに泊ることもあるとか。

父は銀色の髪にルビーの瞳を持った、整った顔立ちの男だ。社交界では結婚した今でもご婦人方に人気だとか。

私の容姿は母に似た。目も母と同じアイスブルーだ。ただ髪色は父と同じ銀髪だ。

父は私たちのことなど忘れているかのように愛人にのめり込んだ。

15歳の春。母は使用人が忘れて行ったハサミで喉をついて死んだ。

貴族は一年間喪に服さないといけないという決まりがある。その為公爵家は一年間は喪に服した。

16歳の春。喪が明けた日。私は本館の父の書斎に呼ばれた。そこには見慣れない女と少女がいた。私は少女の姿を見て吐き気がした。

無表情に二人を見つめる私。二人は気にした様子もなく私に笑いかける。

「彼女は今日からお前の母親になる」

「初めまして、エマちゃん。ルルシアです」

ピンクブラウンの髪に黒い瞳をした優しそうな女性だった。その隣にいるのは私の妹になるマリアナ。ピンクブラウンの髪にルビーの瞳を持っている。私よりも一つ下。

つまり、母が死んだのをこれ幸いと、義母と義妹が公爵家を喰いに来たというわけだ。

「仲良くしてね」

優しそうな顔で笑うルルシアが私に手を差し伸べてきた。握手のつもりなんだろう。当然だけど私はその手を叩き落とした。

ルルシアもマリアナも父も驚いている。

いや、逆にこっちがびっくりだわ。何であんたとよろしくできると思ったわけ。私の母を壊した元凶じゃないか。

「人殺し」

「っ」

「エマっ!」

私の言葉に傷ついた顔をする義母。父は怒り、私の顔をぶった。それに驚いた義妹が「きゃっ」と可愛らしい悲鳴を上げる。

「なんてことを言うんだ。そんなひどい言葉を投げつけるなど。お前には人の心がないのか」

「私は事実を言ったまでです」

「まだ言うかっ!」

私をぶとうと父が再び手を振り上げた。

「待ってください」

義母が父から私を庇うように立つ。

は?何してるの?意味分かんないんだけど、この女。何であんたが私を庇うの?何であんたが私の前に立ってるの。

「お母様を亡くされてまだ心の整理がついていないだけなんです」

ふざけるな。分かったようなことを。

腹が立った。

「急に私たちが来たからきっと驚いたんだわ。どうか許してあげてください」

そう言って義母は父に頭を下げた。その姿に溜飲が下がったのか父は手を下ろした。私を睨みつける。

「さっさと別館へ戻れ。目障りだ」

言われなくてもそうする。こんな不快なところ、いつまでもいてたまるか。

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