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第86話 怪鳥ズーシーズー

 こっ……この俺がカノープスと同じ竜の勇者だと!? 何かの間違いではなかろうか? しかし何度見ようともステータスの表記は変わらない。あまりの衝撃に白い灰と化してるとヨルシアに声をかけられた。


「おっ……おい、ヨシュア! いきなりどした? 強い技を使用した後遺症でバグったのか?」


 自分自身にツッコミを入れられるなんて不思議な感じだ。とりあえず言葉にならないので、ステータスを表示し見てもらうと、ヨルシアもピシッと白い灰と化した。……ですよねー。


 数分後、お互い復活したのでこの状況を整理することにした。まずは竜の勇者についてだが、考えたところでわからないので気にしないことにした。数分考えてわからないのなら悩まない。後はなるようになるだけだ。


 それよりも問題はラグリスの森の勢力争いについてだ。いつの間にか、このラグリスの森では魔族や魔物たちが抗争を始めている。しかも、かなり激しい感じのやつだ。うちのダンジョンは横の繋がりがないから、まだ巻き込まれてはいないが、もしかしたら時間の問題かもしれん。


 なぜなら、俺が調子にのって魔力を解放しちゃったからね!! 魔樹悪霊(ドリュアス)みたいに魔力感知ができる奴がいたなら、きっと俺のこと調べるだろうなー。 ふふっ……リリーナが怒り狂う姿が容易に想像できるぜ。鉄拳制裁で済むといいな……。思わず遠い目になってしまう。


 とにかく、今回の勢力争いの原因はきっとあの妖精の里だろう。状況が状況なだけに、早いとこ妖精女王(タイタニア)ってやつに会わないとまずいな。俺のせいで一つの種族が潰されかねん。


 ふと、隣を見るとケーシィがまだ涙ながらヒゲダンスを全力で踊っていた。あの、ケーシィさん? もう催眠解けてますよ? これきっと彼女の黒歴史となるな。……不憫。


 こうして無事に夜も明け、ヨルシアはダンジョンへと帰っていった。





 ふぅー……まさかの徹夜かぁー。双子姉妹はまだ目を覚まさないし、今のうちに朝食でも作ってみるか。あの二人に任せると地雷になりかねん。


 ということで、真面目に料理をしてみることにした。昨日は野菜がデカすぎて食べるのに苦労したからまずは一口サイズに切っていこう。俺は勉強したのだ!


 そして俺は、肉と野菜を上へと放り投げ、シュパパパパ……っとブツ切りに。そして空間収納から取り出した鍋で具材を受け止めていく。うむ、ナイスキャッチ。よし、煮込んでいこう!

 まだ俺には焼くなんていう上級スキルは使いこなせない。切るか煮るかだ。そして鍋に水を張り煮込んでいくのだが、何故か全然美味そうに見えなかった。いや、これはむしろ不味そうだ。それになんだこのアクは? なぜ、こんなに大量のアクが出るんだ? その時、俺は気付いてしまった。もしかして煮込む順番があるのではないだろうか? ……クソッ、罠か!? なんて巧妙な……。 どうやら俺はまんまとアクの罠に引っ掛かってしまったようだ。くそぅ、このアクめ、このアクめっ!!


 俺がアク取りに夢中になっていると、寝ていた二人が目を覚ます。


 げっ……恥ずっ!? 俺がアクと格闘しているところを見られてしまった。しかし、そんな俺とは裏腹に双子姉妹は勢いよく泣きながら抱きついてきた。……おふっ、抱きしめ過ぎ! 苦しい、苦しいから!!


「……おっ……おい! 二人ともいきなりどうした? おっ……落ち着け!!」

「ごめんなざい!! ごめんなざい!! 私だぢを捨てないでぐだざい、ふぇ~~ん!!」

「ヨシュア様に攻撃しちゃったですー。ごめんなざい……ふぇ~~ん!!」


 やはりどうやら俺に攻撃したことを気に病んでるようだ。……やれやれ。


「おい、二人とも落ち着けって。もう泣くな! アレは事故みたいなもんだから気にするなって! それに俺の方こそすぐに助けてやれなくて悪かったな」


 俺がそう言うと、何故かさらに泣かれてしまった。しっ……思春期女子の扱いがマジでわからん。だっ……誰か俺に取り扱い説明書を……。


 俺が若干テンパり始めているとアリエッタが嗚咽を漏らしながら口を開いた。


「ひっく……ひっく……捨てない?」

「捨てるかぁー! なぜそうなる? そんな酷いことするわけないだろ?」

「本当に?」

「あぁ、本当だって! 俺を信じろ! だからもう泣くな」


 その言葉で二人はやっと泣き止んだ。


「ほら、お前ら目が腫れちまってんじゃねーか。可愛い顔が台無しだぞ? これで目を冷やせ」


 俺は水で絞ったタオルをおしぼり状にして二人に渡す。それを気持ち良さそうに二人は目元に乗せていた。さて、今のうちに鍋の味付けしないとな。とりあえず目分量で調味料を鍋に投入していく。テキトー、テキトー! こうして昨日に引き続き謎のスープが完成した。


 そしてドキドキの実食タイム。一口パクリと。うむ、……意外とイケる。味オンチな俺が美味いと感じるが、二人の反応はどうだろうか?


「あっ、美味しー。私たちが作るよりもずっと美味しい」

「うん、美味しいですー。ヨシュア様、お料理上手!」


 うむ、テキトーに作ったが、二人に喜んでもらえて何よりだ。さて、そろそろ爆睡しているケーシィを起こして妖精の里へと向かうか!






 

「ふわぁ~~ぁ……勇者様ー。眠いですー」


 そう言ってゴシゴシと目を擦りながらケーシィが気怠そうに飛んでいた。


「おいおい、シャキッとしろ、シャキッと! こっちも一徹で眠いっつーの!! だから早いとこ妖精の里に行くぞ?」

「ふわぁい」


 こいつ欠伸をしながら返事しやがった。完全に俺のこと舐め切ってやがる。今度、ヨルシアと入れ替わっていじめてやろうかな?


「ちなみに里まであとどれくらいなんだ?」

「うーん、あと少しですよー」

「いや、お前さっきもそう言わなかった? もう昼だぞ? しかも同じようなところをグルグル回ってる気がするんだが?」


 俺の言葉にケーシィがビクッと反応する。……もしかして迷ってんのか?


「だっ……だって、もう本当にこの辺りなんですよ! ただ、入り口がみつからないだけなんです!! あっれー? おっかしいなー?  引っ越したのかなー?」


 はい、ビンゴ。……この野郎。


「……!? ヨシュア様、後方から何かきます!!」

「大きな魔力を感じるですー」


 二人の声に慌てて振り返ると、ここから見える山の麓に土煙が上がっていた。……げっ、オークじゃねーか。


「まずいな……こっちに向かってきてる。おい、ケーシィ! 早く入口を探すぞ!!」

「はっ……はい!!」


 俺たちが慌ててその場を離れようとした時、急に辺り一帯が暗くなった。


 ……ん? おかしい。今日は晴天だったのに、いきなり日が陰るなんて。何気なく空を見上げると、そこには全長30mを優に超す大きな鳥が気持ちよさそうに飛んでいた。


「よっ……ヨシュア様。あっ……アレ、アレ!!」

「怪鳥ズーシーズーですー」

「アリエッタ、マリエッタ……みなまで言うな……とにかく逃げるぞ?」


 ただ残念なことに怪鳥もこちらに気付く。しかも俺たちに狙いを定めて急降下し始めたのだ。


 ヤバイヤバイヤバイ!! この身体ではアレを仕留めるのはまず無理だ。俺はアリエッタとマリエッタを両脇に抱え、竜闘気を纏い全力ダッシュでその場を離れた。


「けけけけけ……ケーシィィィーー!? 入口はどこだぁぁぁぁーーー!?」

「ひぃぃぃぃーー、勇者様、こっちですぅー!! 入口ありました!! あれです、あれ!! 早くーー!!」


 ケーシィが指示したポイントはただの岩壁だった。俺にはどこにも入口なんて見えないんだけど? 迷彩の結界でも張ってんのか? ちゃんと調べたいがそんな時間はない。俺のすぐ後ろまであの怪鳥が木を薙ぎ倒しながら迫ってきているからだ。


 ……クッソ。本当に入れるのだろうか? でも今はケーシィを信じるしかない。ただ、このスピードで壁にぶち当たれば大ダメージ確定……。俺は二人を守るようにして背中から壁へと突っ込んだ。



――南無三っ!!



 すると、俺は岩場をすり抜け中へ入ることができた。ただ突進の勢いでバランスを崩し、背中から地面を擦るようにして滑り込んでしまった。……めっちゃ背中が痛い。二人を見ると怪我もなく大丈夫なようだ。


 そして顔を上げるとそこは、夜の闇に包まれ、何本もの光る大きなキノコが辺りを照らす妖精の里が現れた。




 


本日もデビダンを最後まで読んでいただき誠にありがとうございます。

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