第81話 見習い勇者!?
「ふわぁぁ~~あ、よく寝た。つか、独りで寝れるって、素晴らしいことなんだな。なんだろう、この解放感。今まで、いかにストレスを感じていたのかよくわかる」
そう……俺こと、ホムンクルスのヨシュアは、昨日は別室で、悠々自適に休むことができた。数ヵ月ぶりの自由。これが続くならホムンクルス人生も意外と悪くないのかもしれん。
しかし、昨日のマリアの一件には参ったな……。まさか、ホムンクルスの身体で襲われるとは思いもしなかった。どんだけだよ……。あそこはもう魔の更衣室と化してる。
だが、マリアのセンスはとても良い。ホムンクルスの髪は藍色なので、服もそれに合うように勝手にコーディネートされた。銀色のショルダーアーマーが縫合された、紺色のコート。白のインナーシャツに、茶色のストレートパンツ。着替えのたびに襲われなければ言うことないのだが……。
さて、今日は以前失敗したケーシィとの打ち合わせだったな。ぼちぼち本体の待つ、謁見の間へと移動するかな。
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謁見の間に入ると、玉座に座った本体と、その傍らに立つリリーナ、そして膝の上に鎮座するエリーがいた。こうして改めて見ると、本体の威圧感がヤバイ。魔力の圧が半端ねぇ。これはあかんわ。魔力を抑えているつもりだったが、それでも畏怖してしまうこの存在感。確かに面識もなく、力のない者が、本体と話をしようものなら、あまりの威圧感に気絶するかもしれん。俺、強くなりすぎたんだな……。
「よぉ、俺! 昨日は凄まじくよく眠れたようだな。めっちゃ羨ましいんだけど?」
「まぁ、そう言うなよ俺。寝てる間に、記憶の共有はできるんだから、同じことだろ? さて、リリーナ。さっそくケーシィと打ち合わせしたいんだけど、彼女はどこにいるんだ?」
「はい、謁見の間にきてもらおうと思ったのですが、マスターのことを警戒しているのか、嫌がられました。今は中庭で、花の蜜を集めているかと思います」
やはりか……。つか、花の蜜集めてんの?
「ヨシュアよ。今のお主の姿なら、きっとケーシィとやらも警戒はすまい。どっからどう見てもただの人間じゃからな」
「じゃあ、俺が会ってくるからリリーナ一緒にきてくれ。つか、ヨルシアはくんなよ? また警戒されるから。また夜に記憶の共有されるから詳細はそこでな」
「そっ……そうか。なんか、自分に言われるって変な感じだな。じゃあ、ヨシュア頼むわ」
さてと、じゃあ気絶娘のとこへ向かいますか。……転移、って、この身体じゃあダンジョン内転移できないんだった。くっ……、歩くのか。不便だ。
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「花の蜜ー♪ おいしーなー♪ ほんわかたったーほんわかたったー、はーなーのみーつ♪」
中庭に着くと、ケーシィがよくわからない歌を歌いながら、花の蜜を啜っていた。ほんと蝶のようなヤツだな。
「ケーシィちゃん、食事中ごめんなさいね。ちょっといいかしら?」
「あっ、リリーナ様! はい、大丈夫ですよー!」
そう言ってケーシィはクルンと一回転しながらこちらへ近づいてきた。
「今日はケーシィちゃんに紹介したい人がいるの。冒険者のヨシュアさんよ」
リリーナがそう言うと、ケーシィは背後にいた俺に気付き、そーっと覗き込むように確認した。すると、パァっと表情が明るくなり、羽をパタパタさせて俺に近づいてきた。
「はじめましてヨシュアさん! 風妖精のケーシィです♪ どうぞよろしくお願いします!」
「あぁ、はじめ……ま……して? こちらこそよろしく」
俺の想像以上にケーシィの反応が良かった。しかも、どうやら初対面と勘違いをしてるっぽい。やはり、本体から感じるあの妙な威圧感が原因だったか……。うん、もっと魔力を抑えられるよう気を付けないとな。
「ケーシィちゃん? ヨシュアさんをウチのダンジョン代表として、ケーシィちゃんの集落に出向いてもらおうと思ってるの。ケーシィちゃんも住んでみてわかったでしょ? この階層は外敵もいないし、ましてやあなたたちを狙う魔物もいないわ。だから妖精女王様に、ウチのダンジョンとの協定を申し込みたいのよ。使者としてヨシュアさんを妖精の里に招いてもらえないかしら?」
「うーん……、里の入口までは案内することはできますけど、入れるかどうかは私にはわかんないですー。女王様の判断となるので、お約束はできません。それにきっと里の付近は、強い魔物さんたちでいっぱいです。行くのはいいですけど、ヨシュアさん食べられちゃいますよ?」
確かに……。妖精の里が、どれくらいの魔物に狙われているかはわからないが、ほぼ間違いなく戦闘になるだろうな。そういえば、このホムンクルスの身体って強いのか? ステータス見てねえや。つか、見れるのだろうか? そう思いながら俺は一言呟いた。
――ステータスオープン……
□ □ □ □ □ □ □
名前:ヨシュア(ヨルシア)
称号:魔王の半身/竜の加護を受け継ぐ者
種族:人造人間
職業:見習い勇者
総合戦闘能力値:18530
勇者スキル
竜闘気
スキル
剣術/計略
特別魔法素質
竜
魔法素質
空間/生活
加護
聖竜の咆哮
□ □ □ □ □ □ □
「ぶふぅっーーーーーーー!?」
「ちょっ……、ちょっとマスター!? どうしたんですか!? いきなり白目剥いて吹き出さないでください!!」
まっ……、まじかよ!? あまりの衝撃に吹いてしまった。つか、職業見習い勇者ってどういうこと!? マジで意味わかんねぇ。とりあえずリリーナさんに恐る恐る俺のステータスボードを見せてみた。
「あの、ちょっとリリーナさん? これ見てほしいんだけど?」
「えっ? 急に何ですか? まだ話の途中ですよ……って、ぶふぅっーーーーーーー!?」
リリーナさんが、全く俺と同じ反応をしていた。なっ? 白目剥きたくなるだろ?
「ちょ……、マスター!? なんで見習い勇者になんかになってるんですか!! しかも、竜の加護まで持ってるし。魔王が勇者って……。これある意味事件ですよ!!」
その会話を聞いていたケーシィが、再び表情を明るくしながら話しかけてきた。
「えっ!? ヨシュアさん、勇者様なんですか?」
「そう……みたい……だな。でも、見習いですけどね。……ははっ。つか、なんで勇者?」
あまりの出来事に、状況を呑み込めず白目になっていると、ケーシィが驚きの提案をしてきた。
「ヨシュアさん! 勇者様なら女王様に謁見できるかもしれませんよ? 里を襲う魔物を退治してくれれば、里を救ってくれた英雄としてヨシュアさんを招くことができます!」
なるほど。しかし、そのためには強制戦闘イベントをこなさなければいけないのか……くっ、超面倒くさい。いかん、いかん。つい本音が。
まぁ、でも今の現状が俺のせいであるのなら、知らん顔するのも気分が悪いしな。……仕方ない。やるか。
「ケーシィ、わかったよ。できるだけやってみるから、とりあえず一緒に里へと向かうか。どんなヤツが襲ってきてるかわかんねーし、まずは状況を見てみないとな」
「やったーー! 勇者様ーありがとー!」
よほど嬉しかったのか、俺の周辺を飛び回るケーシィ。うん、この身体であれば彼女とも仲良くなれそうだ。
しかし、見習い勇者かぁ……。よりによって天敵になんかにならなくてもいいだろうに。……うん、いつか転職しよう。村人Aとかに。それはそれで某神殿に行かないといけないから面倒くさいけど。
さて、ではいっちょ妖精の里に出かけますか!
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