第80話 ホムンクルス ヨシュア誕生
「ただいまー」
「マスター、おかえりなさい。魔核はどうでしたか?」
「おう、リリーナ! バッチリだ」
ダンジョン内転移で錬金室へと戻った俺は、虹色に輝く魔核を全員に見せびらかしてみた。するとなぜかどっと歓声が沸く。
「ヨルシアよ、まさか本当に成功させてくるとはのう。さすが妾が見込んだ男!! 天晴じゃ!!」
「マスター……、実は魔核の作成に成功した錬金術師は、魔界の歴史上でもマスターを含めて五人しかいないんですよ? 正直、信じられません」
えっ? 何そのエグイ確率。やっぱり超高難易度錬成だったんじゃねーか!! 騙された感が半端ない。
「まぁ、いいや。とにかく魔核はできたけど、この後どーすんだ? さすがに製作工程の多い依代作りは、俺にはできねーぞ?」
「安心せい。あとはルルたちがなんとかしてくれる。みな、その道のプロじゃ。既に骨格製作に取り掛かっておる」
ふと横目で、ルルたちを見るとキャッキャッ、ウフフと何かを作っていた。そのテーブルを覗き込んでみると、骨がブルーメタリックな素材でできたスケルトンがテーブルの上に横たわっていた。
ぶっ……ブルースカルだと!? なんだこれ? どこのターミ○ーターだよ!? ウチはそんな近未来的な小説ではないのだぞ!?
「おいおい……ルル。このスケルトン、何の素材で作ってんだよ!? 不気味すぎんだろ?」
「そうでしょうか? 私はカッコいいと思いますけど? ちなみにこの骨格は全てブルーミスリルで作りました」
「はぁ!? マジかよ!? めっちゃ希少鉱石じゃねーか!」
俺が素材にビックリしていると、アリエッタがブルメタに輝く骨を手に持ちながら話しかけてきた。
「ヨルシアさま! ルルは凄いんですよ! この骨の中は空洞になっていて、とっても軽いんです。こんな難しい錬金も簡単にやっちゃうなんてルルは天才です!!」
「それに強度もありますぅー。固くて軽い?」
へぇー、こだわってんなぁ。でも夜道でこんな奴に追いかけられでもしたら俺は全力で逃げる!!
「では、ご主人様。そろそろ骨格に肉付けしてまいります。お手伝いいただけますでしょうか?」
「おう、わかった。ちなみにどんな感じに肉付けしていくんだ? モデルはあるのか?」
「かっかっかっ! そんなの決まっておろう? お主のホムンクルスを作るのじゃ。見た目もヨルシアに寄せんとなぁ?」
ん? ちょっと待て。何かが引っ掛かる……俺のホムンクルス……並列思考……あっ!?
「おっ……おい、エリー!! よく考えたら意識のリンクって、俺がホムンクルスとして妖精の集落へ行くってことじゃねーか!! つか、そんなこと聞いてないぞ!?」
「何を今更! 妾は初めに言ったではないか! それに、これは超魔力を持つお主しかできぬこと。魔核は既にお主の魔力で満たされておる。他の者ではリンクするこはできぬ。もう潔く腹を括れ!! と、言うわけで皆の者、ヨルシアそっくりに肉付けするのじゃ!!」
はっ……嵌められた。しかも、よく考えたら思考が増えるってことは二倍働くってことじゃん。なんてこった……ニートの夢がさらに遠ざかっていくような気がする。……解せぬ!!
⌘
そしてホムンクルスの肉付けが開始されること一時間。青い骸骨に白い粘土を張り付けていき、徐々に人の形が出来上がっていく。
つーか、みんな嬉々として肉付けしていくし……。そんなに楽しいもんなのかね?
……ん? おい、誰だっ!! 股間に腕を生やした奴! 俺の息子はそんなに自己主張の強い子じゃないぞ!! というか盛り過ぎだっ!! どこのアームストロング砲だよ!? 兵器かっ!!
そして、そのアームストロング砲に大きな砲弾を添えようとやってきた二人組……。
「おい、お前ら。何やってんだよ?」
「よ……ヨルシアさま!? あの、その、これは……」
「あーちゃんが、ヨルシアさまのはこれくらいの大きさだって言い張るので仕方なくー」
よりによってアリエッタとマリエッタかよぉぉ!? お前らおぼこだと思ってたけど、それなりの知識はあるのな? これは紳士としてちゃんと注意せねば。
「二人ともいいか? その部分はR18指定だ。お前らじゃ、まだ早い。そこはプロのリリーナさ……「誰がプロじゃぁぁぁぁーー!!」」
――ズドォォォォーーーン!!
ふふっ……なんだろう? このやるせなさ。言葉選びって難しいな。まさかコメカミに横蹴りでリリーナのハイヒールが突き刺さるとは。はい、超速再生、超速再生っと。つか、今日何回目の超速再生だろうか?
⌘
そして、なんやかんやありホムンクルスの肉付け作業は完了した。
えっ? デリケートゾーンはどうした?
そんなの決まってんだろう。リリーナ名人が忠実に再現してくれたおかげで、錬金室になんとも言えない重い空気が漂ったよ!! くそっ……なんの罰ゲームなのだろうか。軽いトラウマになりそうだ。
「では、ヨルシアよ……ぶふっ!! そっ……そろそろ……ぶふっ!! 魔核を依代に入れるのじゃ……ぶふっ!!」
「おい、エリー? お前、笑うのを我慢できてないからな? そんなに俺のアームストロング砲がおかしいのか? つか、直接見られるよりもめっちゃ恥ずかしいんだからな?」
はぁ……。ささっとやって終わりにしよう。この羞恥プレイに俺の心は折れそうだ。リリーナもこんなにリアルに作るなよ。むしろなくて良かったのではないだろうか?
俺は依代の胸に魔核を置くと、まるで沼に沈むかのように魔核は吸い込まれていった。
「ヨルシア、そのまま依代を錬成するのじゃ」
「は? つか、エリー? 錬成ってどうすりゃいいんだよ?」
「とにかく、魔力を込めて魔核と依代が一体化するイメージをすればよい!」
なんてアバウトなアドバイス……。もはや無茶振りの神様だな。やれやれ……考えても仕方ないか。やるだけやろう。
――オラァァァァ!!
すると俺の魔力を浴びた依代が、徐々に白い無機質な肌から血の通った肌色に変化していく。そして、次第に身体が脈打ち……それは完成した。
⌘
目を開けると、俺やリリーナたちが、俺を見ていた。うげ……、気持ち悪ぅ。本体と視覚が共有されている。
「よしよし、上手くいったようじゃな。そのままの状態は辛かろう? 待っとれ。今、楽にしてやる」
エリーがそう言うと、ホムンクルスの身体が立体魔法陣に包まれ、本体と共有していた意識が別々に切り離された。
「……これは?」
「常時、本体と意識を共有はつらかろう? 故に意識の共有をする時間を限定したのじゃ。お互い寝ている時のみ共有すれば問題なかろう? さすれば、ホムンクルスの身体で体験した記憶は本体にも残る」
おぉ!? エリー、やる時はやるじゃないか見直したぞ。
「しかし、エリー様。このままだとマスターを呼ぶ時、非常に困りますね。ホムンクルスの方にも名前を付けた方が良いかと」
確かに。このままだと色んな意味で困るしな。よし、せっかくだからアレにしよう。
「じゃあ、リリーナ。ヨシュアはどうだ? ミッチーが作ってくれた冒険者カードと同じ名前なら街の出入りも楽だし」
「そうですね。既に冒険者として登録もされていますしちょうどいいですね!」
うし、決定!
と、いうわけで、ここに冒険者ヨシュア(ホムンクルス)が誕生した。……フル○ンで。というか、はっ……早く服をくれ!
こら、ルルと双子姉妹! お前たち手で顔を隠しているつもりだろうが、がっつり指が開いてるから!! ガン見するんじゃない。何度も言うが、これはR18指定だ。
⌘
《マスタールーム》
ふぅ……、やれやれ。やっと落ち着いたな。
「マスター? 大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。つか、ヨシュアは?」
「はい、マリアと服を選んでおります。ヨシュアさんを見たマリアが、コーディネートをしたいと言いだしたので」
何故か、俺に悪寒が走る。まさか、襲われていないよね? めっちゃ不安……。頑張れ、俺!!
あれから、リリーナにホムンクルスの説明を受けたが、基本的な構造は人と同じようだ。身体を鍛えれば強くなるし、動けば腹も減る。年を重ねれば老いていく。魔核とのリンクを切ってしまえば、生命活動は終了するが、せっかく人間のような生物になれたので、少し人間ライフを楽しむのは有りだなと思ってきたりもした。
俺たち悪魔族は、千年以上の寿命があるせいで、今の姿より成長していかない。寿命が尽きる30年ほど前から、急激に老化はしていくが。だから、ホムンクルスが老けると聞いた時、俺は自分の成長する姿がとても楽しみになった。どんなナイスミドルになるのやら。
「では、マスター。明日はヨシュアさんとケーシィちゃんと顔合わせをしてみようかと思います。ホムンクルスであれば、きっとケーシィちゃんに怖がられないとおもいますので」
「だといいな。上手くいったら、さっそく妖精族の集落の調査でもするか」
こうして、ヨシュアの誕生により、ラグリス大森林を取巻く勢力図が変わろうとは、この時ヨルシアは思いもしなかった。
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