第78話 トラブルメイカー?
更新が遅れました。デビダン、本日より再開です!
ダンジョン内に街を製作して二日。
新一階層は獣人たちで溢れかえっていた。俺の予想を遥かに超える3000人もの獣人が、住居を求めダンジョンへとやってきたのである。
オズワードとバーナルドのもとに、シルキーを新たに雇い20名ずつ派遣したが、住民登録手続きがまったく追い付かなかった。急遽、城のシルキーたちも登録手続きに駆り出されるというトラブル。順次対応しているが、それでも鬼のような忙しさだ。すまん、これ完全に俺の予想外。死ぬ気で頑張ってくれ。俺は追加で住居設置していくから。
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俺がマスタールームで、モニターを見ながらポチポチ住居を設定していると、リリーナが風妖精を連れてやってきた。
あっ……、しまった。あまりの忙しさでこいつのことすっかり忘れていた。俺が風妖精の方に目をやると、ススっとリリーナの後ろへと隠れてしまった。Oh……、キラワレテマスガナ。
「マスター? 風妖精のケーシィちゃんの件ですが、お話ししてもよろしいですか?」
「ケーシィ? へぇー、風妖精にも名前があるんだな。つか、リリーナ? 話を聞く前に確認したいんだけど俺はケーシィに嫌われてんのか? さっきからめっちゃ避けられてない? 俺なんかした?」
リリーナの後ろに隠れてるケーシィを見ると、小声で「ひぃ……」と言う悲鳴をあげてリリーナの服に潜り込んでしまった。どうやらマイナスからのスタートっぽいな。
「多分ですが、まだケーシィちゃんは魔王という存在を邪悪なものと思い込んでいます。彼女と打ち解けるには時間が必要ですね。それまであまりケーシィちゃんを刺激しないでください」
「そっ、そうか。思ってたより魔王ってイメージ悪いんだな……って、当たり前か」
しかし、ここで何もせずにあきらめたら魔王の名折れ。笑顔で彼女の印象を上げておこう。笑顔というものは他人との距離を縮めると聞く。俺のさわやかスマイルなら、きっと彼女の好感度はグングン上がるはずだ。
そういえば魔界雑誌の【ギルティ】でも紳士の嗜み特集を組まれてたっけ?
思い出せ……確か口角をギリギリまで吊り上げて、上目遣いを心がける。そんで何か言うんだっけか? ウィ……? ウィ……なんだっけ? 地上のお酒の名前。まぁ、ウィッ!でいいや。若干、顎がしゃくれるのが気になるが。あっ、ケーシィがちょうど俺の方を見ている! よし、くらえ渾身の魔王スマイル……ウィッ!!
――ニタァァァァー……。
「きゃぁぁぁぁーー!? ばっ、ばっ……ばけも……アババババババ!!」
「ちょ、ちょっと、ケーシィちゃん? いきなりどうしたの!? 顔が崩壊しかかってるわよ!?」
あっ……あれ? 何故かケーシィが白目剥いて泡を吹き出してしまった。 何故だ!? 渾身の笑顔だったはず。何がいけなかったのだろうか? よし、リリーナにも見てもらおう。
――ニタァァァァー……。
「きゃぁぁーー!? あっ……悪霊退散んんーー!!」
「何も取り付いてませんけどぉぉぉーー!?」
――ズドォォォォォーーーン!!
俺の必死の叫びも空しく、リリーナから音速の蹴りが飛んできた。
しかも、ハイヒールの踵がおでこに突き刺さったんですけど? やっべぇ……綺麗にポッコリ凹んでやがる。まずい……早く治さなければ。超速再生、超速再生っと。まさか身内からの攻撃でこのスキルを使う羽目になるとは。
「なっ、何をしてるんですか!? 何を!! いきなりそんな顔しないでください!! 呪われたと思ったじゃないですか!!」
「いや、微笑みかけたらケーシィと仲良くなれるかなと思って……」
「逆効果ですっ!! 見てください! マスターのせいで、ケーシィちゃん気を失ったじゃないですか!!」
リリーナが両手を差し出すと、ケーシィが手のひらの中で壊れたおもちゃのように小刻みに震えていた。
ははっ……やべぇ。思いっきり地雷踏んだ。しかしなんだろう? このやるせなさ。そんなにダメだったのだろうか?
「とにかく! もう二度あんな顔しないでください!! 次やったらラブさんとピースさんにお仕置き頼みますからね!!」
ひぃぃぃー……。それは絶対に嫌だ!! 嬉々として襲い掛かってくる獣たちが容易に想像できる。リリーナも本気でやりそうだから怖い。うん、これは封印しよう。もう二度やらない。
「マスターのせいで話が逸れちゃったじゃないですか! とにかくケーシィちゃんの集落ですが、想像以上に危機的状況にあります」
「危機的状況? 結界が解けたせいか?」
「はい、それもあります。ただそれより厄介なのだ、どうやらかなり多くの魔物たちに狙われているようです」
「なぁ、リリーナ? 前から思ってたんだけど、なんで原初の妖精族って他の部族に目をつけられやすいんだ?」
「理由は一つです。原初の妖精族は、その身に宿す精霊の加護がとても強いのです。しかも希少な四大元素の精霊たちの加護。魔物たちの目的は妖精族が持つ精霊の加護です。それを生贄の儀式によって加護の力を取り出して、自身の能力を強化していきます。魔界では禁忌事項の一つとして取り上げられていますが、地上では取り締まりが難しいので今でもこういった残酷な事案が度々起こっているようですね」
「うわぁー……そいつら全員アウトだな。めっちゃ悪い奴らじゃん!! ちょっと俺、ぶん殴ってくるわ!」
すると間髪いれずにリリーナからツッコミが入る。
「だーめーでーす!! 少しは自分の立場を考えてください!! マスターはもう魔王なんですよ? 仮に他の魔王の眷属に手を出してみてください。間違いなくウチのダンジョンは彼らの報復対象になりますからね? それともマスターは魔界の派閥争いに参戦したいんですか?」
Oh……そうだった。魔王になると、魔王同士の繋がり(派閥)が持てるんだけど、そういうの面倒くさくて全て断ったんだよな。総会の出席とかマジないわー。
「それに派閥争いだけじゃありません。レグナード王国の動向も、まだわかってないんですよ? だからマスターはダンジョンから絶対に出ないでください!!」
「じゃあ、妖精の里どーすんだよ? 他にまわせる人員なんてねーぞ? アリエッタ、マリエッタじゃ無理だし、ヴィクターはミッチーに取られちゃったろ? 俺の眷属出して他の勢力と摩擦が生じるのもダメなら、この案件詰んでねーか?」
「そっ、それは……」
さすがのリリーナでも、この問題は悩むようだな。現状打つ手なしか。
「かっかっかっ! 二人とも相当悩んでおるようじゃな! どれ、この相談役がその問題を解決してやろうではないか!」
げっ!? 相談役という名のトラブルメイカーが来やがった。めっちゃタイミング悪いんですけど。もしかして狙ってんのか?
「エリー様? 何か良い解決策があるのでしょうか?」
「リリーナよ、よくぞ聞いてくれた!!」
おい、リリーナ!! 前回のりんご飴工場の件を忘れたのか!? 安易に聞くんじゃねぇ!! エリーは我慢という言葉を知らない子だぞ!?
「のう、二人とも。ヨルシアの眷属もダメ、守護者らもダメ。ならば人造人間を作り、妖精の里に行かせるのはどうじゃ? これならば、どこの手の者かわかるまい?」
「「人造人間?」」
エリーの突拍子のない提案にリリーナと思わずハマってしまった。というかホムンクルスとな? 今回のエリーの提案は真面目だな。
「しかし、エリー様? ホムンクルスは魂を持たないただの人形。自我がありません。難しい命令も与えることもできないので、遥か昔に魔族、人族共に研究を諦めたと聞きます。それとも何か運用できる方法があるのでしょうか?」
おぉ、さすがはリリーナ! ホムンクルスとは人形のことだったのか! 俺はてっきり乳酸菌入りドリンクのことかと思ったぜ! 口に出さなくて良かったー。リリーナのエグいツッコミがくるとこだったぜ!
「ふふふ……妾に策アリじゃ!! 早速、ルルのところへと行くぞ!」
こうして俺たちの人造人間作りが始まった。
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