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第77話 ダンジョン街

 ミッチーが建国宣言した翌日、ウィンクードは物凄く大変なことになっていた。


 止まらぬ難民流入。ウィンクードへと入れない獣人たちは外壁の周辺でテントを張っていた。いわゆる難民キャンプである。俺たちの予想を遥かに超えて集まる獣人たち。その数なんと八千人!! どこから来たの?と言いたくなる。

 

 ミッチーが自身の魔力をフル活用して、ウィンクードの周りを整地し領土を増やしていっているのだが、全員を受け入れるには数ヶ月は掛かるだろう。王様が肉体労働って……。国ってこういう風にできるんだっけ? 


 それでも一気に獣人たちが住む場所を確保できるわけではないので、死人が出る前に俺が一肌脱いでやることにした。

 新しく階層を増やして、そこに街を作るのだ。現在のDP(ダンジョンポイント)も勇者たちを撃退したことにより、軽く50万オーバー。勇者撃退ボーナスとしてなんと30万Pも稼いでしまった。今ならなんだってできるような気がする。俺、超バブリー。


 とりあえず、このままいくとウィンクードはすぐ食料問題に直面すると思うので、新一階層に耕作地帯を設けようと思う。まずはリリーナに相談だな。勝手にやったら、後で間違いなく叱られる。あれ? 上下関係が逆なような気が……。うん、深く考えるのはやめよう。それが俺の長所!!





《地底魔城 謁見の間》

 

「あのマスター? 階層を追加するのはいいと思いますが、その街は誰が管理するのですか? まさか、受け入れる獣人たちに任せるわけではないですよね!?」

「いやいや、まさか。そこまで俺もバカじゃねーよ。適任が二人いるじゃねーか」

「二人……ですか?」

「そっ! もう呼んであるから。あいつら暇そうにしてたし、いいんじゃね?」


 奇怪そうな顔をするリリーナ。すると、ちょうど見計らったようにコンコンとドアがノックされた。


「どうぞ、お入りください」


 リリーナが許可を出すと、入室してきたのはオズワードとバーナルドの二人だ。軽く会釈して俺の前に跪く。さすがはイケメンエリート。ちゃんと礼節を心得ている。王国で名誉騎士爵を持っていただけはあるな。生まれが戦争孤児とは思えない。


 ただ、そんなエリートな彼らも、ダンジョンで牛二頭に負けてから心に大きなトラウマを負ってしまった。だって全身キスマークが付いた状態で発見した時は、不憫すぎて彼らに同情をしてしまったほどだ。まだ今でもうわごとのように「牛オカマくるな……牛オカマくるな……」とうなされているらしい。不憫なり。

 

「オズワード、バーナルドよくきた。調子はどうだ?」

「はっ、陛下の恩情もあり、非常に穏やかに過ごせております。感謝しかございません」

「オズワードの言う通り、傷も癒え、いつでも働けます。何かご用命でしたでしょうか?」 


 こいつら受け答えも超マジメ。マジで優等生だな。逆に俺がだらしなく感じるんですけど?

 勇者の守護者から魔王の部下へとなったが、彼らの生活力と対応力の高さに俺は素直に驚いた。逆臣扱いとなっても折れない強い心。素晴らしい……だから俺も彼らをリスペクトしたくなる。


「えー、君たちにある任務を任せたい」

「任務ですか?」


 任務と聞いてオズワードの顔が引き締まる。


「そうだ。実はウィンクードに大量の難民が押し寄せてきて、外壁の外まで溢れてしまっている。このままだといずれ死者も出てくるだろう。そうなる前に、その溢れた難民を受け入れる街をダンジョン内にも作ろうと思ってな」

「その街の警護を自分たちに?」

「いや、警護だけではなく、二人には街の管理、階層の管理なども頼みたい。平たく言えば領主と同じ仕事をしてほしいんだよね。もちろん君たちをサポートする魔族もつける」

「「領主ですかっ!?」」


 俺の突拍子もない言葉に二人の声がハモった。


「今回、新しく追加する階層はダンジョン規定最大の全長20キロに及ぶ超巨大階層だ。そこに農耕地や養殖池を作成するから、二人でその階層を半分ずつ管理を頼みたい。街も階層の東西二つにわけるから、どちらがより良い街を作れるか競ってほしい」


 そう俺が話すと、街を作るという言葉に先に反応したのはバーナルドだった。


「陛下、その役目お任せください!! いや、是非やらせてください!!」


 おぉ……なんか知らんがめちゃくちゃやる気やんけ。働き者は大歓迎!! だって俺が仕事しなくて良くなるからね!! するとそんなバーナルドを見たオズワードが呆れながら口を開く。


「おいおいバーナルド? お前、簡単に言うが人の命を預かるんだぞ? それに万が一、獣人たちが反乱を起こすようならそれを鎮圧しなければいけない。お前にその覚悟はあるのか?」

「そんなことは百も承知。それでもやりたいと思ったんだよ。王国では領地なしの名誉貴族までしかなれなかったが、ここでは自分の領地をいただける。領地経営はオレたちの夢だったじゃないか!! これを受けずに男と言えるのか!?」

「お前は相変わらずだな。……わかった。それに陛下からいただいたこのチャンス。ものにしないわけにはいかない。陛下、微力ながらこのオズワード、尽力させていただく所存でございます」


 堅いっ!! クソ真面目かっ!? しかし、いい返事をもらえて良かった。これで面倒くさい仕事が一つ減ったからな。

 

「じゃあ、決まりでいいな? 階層の準備ができたら声をかけるから、それまではゆっくりしていてくれ。後さ、その街の名前も考えておいてほしい。そういうの面倒くさいから二人に任せるわ! じゃあ解散」

「「はっ!!」」


 そう言って二人は颯爽と部屋を出ていった。どうやらやる気満々のようだ。鉄は熱いうちに叩けというし、面倒くさいがさっそく準備するか。


そして俺とリリーナは打ち合わせをするためにマスタールームへと場所を移した。



 



 

《マスタールーム》


 意外と街作りは面白い。


 モニターに表示されている階層図に作成するものを置いていくだけである。楽しいせいかリリーナとの打ち合わせもすこぶる捗った。


「マスター、DPは現在517890Pありますが、新階層作成で20万P使用します。その他にも天候投影、農耕地作成、養殖池、牧場、街道などの作成で約10万P。そして1000人規模の街を2カ所に設置するので、これも同じく10万Pほど必要となりますがよろしかったでしょうか?」

「おぉ、湯水の如く減っていくな。でも必要経費だ問題ない。それよりも侵入してくる魔物の通り道は大丈夫なのか?」

「はい。入口から直線で下の階層へと誘導できる道筋を作成してあります。それに街は外壁で囲い込む設計にしてありますので、よっぽどのことがない限り住人たちに被害はでないかと」


 いい感じだな。建物もレンガ調の住居にしたり少し拘ってみた。オズワードとバーナルドが住む領主の館は、迎賓館のような立派なヤツにしてやろう。くくく……彼らの驚く顔が楽しみだ。


「おーぬーしーら!! めちゃくちゃ楽しそうではないか! 何故、妾を呼ばぬのだ!!」


 振り返ると腰に手を当ててプンスカ怒っているエリーがいた。おいおい……寝起きからプリプリするなよ。つか、いつも何時まで寝てんだよ。日増しにエリーが堕落していっているような気がしてならない。めっちゃ羨ましいんだけど?


「いや、呼ぶも何もエリー寝てたじゃん!? 起こしても起きなかったし」

「もっと強く起こしてくれてもよかったではないか!! そんな楽しそうなことを二人でやるなんてずるいのじゃ! 妾も街を、つーくーりーたーいーのーじゃ!!」

「これなんの駄々っ子!? 無茶ぶりもいいとこだぞっ!? 作るも何もリリーナと粗方、形にしたから手を加える箇所なんてほぼないぞ?」

「あの、エリー様は何か作りたい施設があるのですか?」


 げっ!? リリーナ、そんなこと聞くなよ!! それ地雷だからな? この駄々っ子の目を見てみ? 輝き過ぎて目が白くなってんだろ? 八卦六十〇掌で点穴つかれんぞ? 


「さすがはリリーナ!! よう妾の気持ちを汲んでくれた。ヨルシアよ……妾はアレを作りたいのじゃ。あの赤き宝石……りんご飴製造工場を!! そして妾は毎日、ルビーのように真っ赤に輝くりんご飴に囲まれて生活するのじゃ!!」


 エリーがマジでアホな子になりつつある。頭ん中湧いてんのか? つか、りんご飴製造工場って……。規模がデカぎるだろ。


「却下だ、却下!! さすがにDPの無駄使いのような気がしてならない。りんご飴はまたミッチーに頼んでもらってきてやるからそれで我慢しろ。なっ?」

「いーやーじゃー、いーやーじゃ! いつでもどこでも好きなタイミングでりんご飴を食べたいのじゃー!! ヨルシア作ってたもう!!」

「エっ……エリー様? 街にエリー様の銅像も立ててありますし、今回はそれで我慢しましょ? マスターもDPの余裕ができたら作ってくれるかもしれませんし」


 リリーナも地雷を踏んだと思ったのか俺のフォローにまわってくれた。しかし、エリーの駄々っ子は止まらない。さすが神様。我慢することを知らない。超面倒くせぇ。親の顔を見てみたい。


「りーんごっあめっ!! りーんごっあめっ!!」


 エリーがよくわからないコールと手拍子をし始めた。手拍子がチンパンのように見えて吹きそうになるからやめてほしい。


 しかし、飴っていうのは魔性な食べ物だな。神様ですら半狂乱にさせる。そして、それを与えるだけで知らないヤツも心を開く。そう考えると飴の生産工場があっても良いように思える。



 ……しゃーないか。



「リリーナ。バーナルドの領地でりんごの果樹園、そしてトウキビ畑の設置。そしてオズワードの領地で、飴の加工工場を設置してやってくれ」

「マスター、いいんですか!?」

「あぁ、ダンジョン名産の食べ物の一つくらいあってもいいだろ」

「やったのじゃー!! さすがはヨルシア! 愛しておるぞ!」


 エリーの愛がとても安いように思えるのは俺だけであろうか? 食べ物で釣れる神様って……。


 その後、エリーからの邪魔がかなり入ったが、夜までには街の製作は完了し、新たに階層を追加した。

 こうして一日にしてダンジョン内に街が二つできた。一つは農業畜産の街【ビルソン】。もう一つは加工業の街【ベイリー】。この二つの街が原因で、ヨルシアの名がさらに広がろうとは本人も予想だにしていなかった。


 

本日もデビダンを最後まで読んでいただき誠にありがとうございます。

ブックマーク、評価、感想、誤字訂正をご指摘いただいた皆様。心より御礼申し上げます。

今後もひっそりと更新してまいりますので、どうぞよろしく(。-`ω-)


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