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第74話 小さな来訪者

 突然、俺たちの目の前に現れた体長20cmほどの小さな妖精。ウェーブのかかった長い金色の髪に、透明な四枚の羽。


 すげぇ……、本物だ。原初(・・)の妖精なんてはじめて見た。というか、よく見たらこいつかなりテンパってんな。既に泣きそうだし。


「ほう、これは珍しいのう。風妖精(シルフィ)ではないか!」

「なんだエリー、知ってんのか?」

「当たり前じゃろ! 妾を誰だと思っておる!? バカにしすぎじゃ!! しかし、なんでまたこんなところにシルフィがおるのじゃ? お主らは他の種族との交流を嫌っておったではないか?」


 エリーがそう話すと、シルフィは怯えながら答えた。


「は、はははい!! 私たちはラグリスの森の奥地に結界を張り、静かに暮らしておりました!!」

「ん? 暮らしておりました?」


 俺が聞き返すと、そのシルフィはヘッドバンキングするかの如く頭を上下に振った。

 余程、俺のことが怖いとみえる。そんなことないのに。そしてシルフィはそのまま話を続けた。


「はい。私たちの里は妖精女王(タイタニア)様と竜神さまのお力で、敵から狙われないように結界が張ってありました」

「うむ、知っておるぞ。でも、その里を包む結界が強力すぎてお主らも里から出れないと聞いておったが?」


 なんだその排他的な結界は? 俺がいうのもアレだけど種族みんなしてどんだけ引き篭もりなんだよ。


「ですが先日、我らの里を包む結界が突如消えてしまったのです。妖精女王(タイタニア)様がおっしゃるには聖竜の加護が消えてしまったと。だから結界はバランスが保てなくなって消滅しまったようなのです」



「「………………」」


 

 あれ? なんだろう……どこか聞いたことがある話だなぁ。ヤベェ……何故か冷や汗が止まんねぇ。



「私たちは、いきなり外敵からの危険に身を晒されてしまいました。その時は妖精女王(タイタニア)様のお力で、なんとか小規模の結界を張ることができたのですが、恐らくその結界は長く持ちません。そこで妖精女王(タイタニア)様は、我らに里の結界を消えた原因を探るよう指示をされたのです」


 ……うん。これ完璧に俺のせいだな。


「そっ……そうか、それは大変だったな。とりあえず話はわかったんだけど、お前がここに来た意味がわからん。つか、よく単身でこのダンジョンの最深部まで潜ってこれたな? お前がダンジョン踏破の最高新記録だぞ? で、どうするんだ? 俺、一応このダンジョンの主なんだけど相手した方がいいのか?」


 シルフィは物凄い勢いで首を横に振った。


「めっ……めめめ滅相もございません!! 私に敵意はありませんっ! それにここがダンジョンなんて知りませんでした!! そちらにいる男性のフードに入ってたら、転移でこちらに移動してしまっただけですので……。だから、こここ、殺さないでください!!」


 なるほど、ミッチーのフードに隠れて侵入してきたのか。……ジト目でミッチーを睨んでおこう。


「大丈夫だから落ち着けって。敵意がないのなら、こっちも戦闘の意思はねーよ。で、どうするんだ?」

「えっ? どうするとは?」

「カゴ、キエタ。ソレ、ゲンイン、オレ」

「………………」



 ……おや? 妖精の反応がない。ちょっと言い辛かったから、カタコトで話しかけたのがまずかったのだろうか? 仕方ない、次はジェスチャー付きでやってみるか。


「……カゴ……キエタ。ソレ、ゲンイン、オレっ!!」


 これでどうだ? わかりやすいように、指差し確認までしてやったんだ。それなのに、そんなハトが豆鉄砲を食らったような顔すんなって。俺の渾身のギャグがダダ滑りじゃん。くそ、ボケ殺しめ。もう、サラっと言っちゃおう。


「すまん、聖竜倒しちゃった」

「………………」


 いっけね的な感じで伝えてみた。このままテヘペロの流れで許してくれないかな? すると、泣きそうだったシルフィの目がぐるんと上を向き、なんとそのまま気絶した。


 うぉっ!? 危ねぇ!!


 俺は慌ててシルフィを両手で受け止める。

 手の中にすっぽり入ったシルフィを見ると「アババババ……」と、言いながら泡を吐いて痙攣し始めた。


 ナニコレ? バグったの? リアクションおかしいんだけど? 


 シルフィの発狂ぶりに若干の恐怖を覚える。つか、そんな大変なことなのか? 俺はそっとテーブルの上にシルフィを横に寝かせた。


「なぁ、リリーナ。聖竜の加護を受けていた種族って他にもいると思うか?」

「いえ、聞いたことありません。そもそも、妖精族が他種族の加護を受け取っていたのに驚きです。きっとその妖精の女王が個人的に受けていたものではないでしょうか?」

「なるほど。なんか裏がありそうだな」

「恐らくじゃが、加護を得るために命の供物を捧げておったのじゃろうな。妖精の供物であれば、あのドラゴンのことじゃ。よろこんで加護を渡したであろう」

「うわぁ……なにそれ? 超引くんだけど? でも、俺のせいで妖精族の里がヤバイんだよな? その妖精の女王次第だけど、そいつらもうちのダンジョンで面倒をみてやったほうがいいだろうか?」

「マスターって、そういうとこ優しいですよね? 守護者メンバーの件もそうですけど、あまりやりすぎると、そのうち足をすくわれますよ?」


 ……おっふ。


 リリーナに痛いところを指摘されてしまった。でもまぁ、確かにそうだな。そのうち、この性格が仇となるかもしれん。気を付けておかねば。

 しかし肝心のシルフィが気を失っちゃったな。あとはリリーナに事情聴取を頼んで、俺は今日の支度でもするか。珍しく、俺は今日忙しいのだ。





 ダンジョン防衛戦の翌日。俺とリリーナ、エリー、ミッチーは今後の展開を話し合っていた。王国への対応のことだ。


 勇者を倒してしまったので、良くも悪くも王国から目を付けられてしまうだろう。ミッチーのことはバレていないと思うが、きっと今後はウィンクードの街も王国の介入が以前よりも増すはず。万が一、ミッチーの正体が王国へバレたりでもしたら、一気に討伐隊が編成され、残りの勇者や高ランク冒険者たちの標的ともなる。そして一番の問題は、せっかくミッチーが作ったウィンクードの街が廃墟と化すことだ。きっと商人たちは、今回のように見切りをつけウィンクードから完全に撤退するだろう。


 それだけは避けなければいけない。


 だって、ノーリスクで魔素欲しいからね!! 彼らのおかげでウィンクード然り、うちのダンジョンは潤っていくのだから。まさに商人さまさまだ。それで、俺たちの選べる選択肢は二つ。


 王国への従属か独立か。


 というか、従属なんて真っ平ごめんだったので、実質の選択肢は独立の一択。そう、ダンジョンと都市が手を組むという、未だかつてない都市国家を作ることが目的だ。


 エリー曰く、大罪の魔王相手にいくら王国でも簡単には喧嘩は売らないはず。逆にウィンクードを庇護下に置き、大々的にダンジョン採取の宣伝を行ったら、商人たちのやる気に火がつくだろうとのこと。そして、ウィンクードを起点とした魔族との交易。確実に金になる。これに商人たちが食いつかないはずがない。


 ふふふ……、完璧だ。完璧すぎる!!


 そろそろ先日解放した捕虜の騎士も王国へと辿り着く頃合いだ。相手の出方が楽しみである。……でもまさかいきなり戦争けしかけられないよね? そんな不安を残しつつ、今日へと至るわけだ。


 そして今日はめでたくミッチーが建国宣言を行う日。そう、記念すべき独立都市国家【ウィンクード】誕生の日となる。


 もちろん、国王はミッチーだ。彼には感謝しかない。こんな面倒くさ……げふんげふん、こんな責任ある立場に望んで立ってくれたのだ。さすが、我が心の友!! 感謝です!! でも、うちのサキュバスは嫁にはやらんよ?


 ただ、一点問題が。ミッチーの演説の最後には俺が登場しなければならないのだ。ちゃんと国民の前でダンジョンマスターと仲良くしてますってアピっとかないと後々面倒なんだって。めっちゃ、緊張するんだけど……。いるの? こんな演出。


 なんでもミッチーだけだと人魔協力の説得力がないらしい。だから俺が直々にウィンクードへと降り立って、その存在をアピールするのが目的なんだとか。うん、超面倒くさい。しかし、一番面倒な仕事をミッチーに頼んでしまった手前、断るに断れない。


 ちなみにこの宣言を行うに伴い、近隣の小さな村の村長や、町の有力者、果ては貴族までもが、もの珍しさにウィンクードの街までやってきている。噂話が伝わるのは早い。想像以上に注目されているみたいだ。


 というわけで本日の俺は誠に遺憾ながらその準備で忙しいのだ。しかし魔王に慄く民衆の顔を見るのは少し楽しみだな。


 ……ふははははは!! 平伏せ愚民ども!!


 あっ、今のセリフちょっと魔王っぽいな。では、まずはお着替えからしますか。マリアが待っている衣装室へGO!!



本日もデビダンを最後まで読んでいただき誠にありがとうございます。

ブックマーク、評価、感想、誤字訂正をご指摘いただいた皆様。心より御礼申し上げます。

次回、ゴブリンを超えし者(*´ω`*)チェケラ


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