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第73話 ある日常の光景

お待たせ致しました♪

4章スタートです!

「マスター、朝ですよー? いい加減そろそろ起きてくださーい。もうみんな食堂に集まってますよー。エリー様も一緒に起こしてくださいねー」


 部屋の外からリリーナの声が聞こえてくる。


 もうそんな時間か……。あぁー……眠い。

 なぜ、こんなにも眠いのだろうか? 寝ても寝ても眠い。もはやこれは俺にかけられた呪いの一種かもしれん。

 つか、リリーナとマリアの朝って早いんだよなー。特にマリアのやつ。あいついつも何時に起きてんの? 俺が起きると既にあの濃いメイクが完成されているのだ。化粧が薄いとはいえリリーナも同様である。二人の化粧をしている姿を未だに見たことがない。まぁ、これといって見る気はないが。


 それに比べこいつは……。


 俺の上から崩れ落ちたのか、隣で大の字で寝転がるエリー。白いキャミソールがめくり上がりヘソが出ていた。


 神様がお腹丸出しって……。


 つか、口からヨダレ出てんだけど? おい、そのピンクの枕で拭くなって! リリーナに怒られるからやめろっ!! ……もはや威厳無しだな。


 俺はエリーの身体を横に揺すり声を掛ける。


「おい、エリー。朝だぞ。起きろー? ほら、リリーナがうるせえから早く起きろって!」

「うにゃ~~……、あと一日眠るのじゃあ~……」

「おい、こら? ふざけんなよ。何? 後一日って? 規模がでけぇよ! ていうか、それ俺のセリフだかんな?」

「あぁーー、もう、うるさいのう!! そんなにヨルシアが寝たいのなら、妾と一緒に寝たらいいではないか!!」


 えっ? 何ソレ? 超名案。


 リリーナに起こされるから、しぶしぶ毎朝八時には起きてたけど、これ別に強制じゃないじゃん。うん、やめやめ。俺としたことが真面目君すぎた。こんな規則正しい生活してたら、きっとあの怠惰の神様にも怒られるに違いない。


「そうだな。魔族は欲望に忠実に生きていくに限る! じゃ、俺も寝るわ! おやすみー♪」


 それに俺って魔王なんだし、ちょっとくらいのわがままなら許されるっしょ! ひゃっふぅー、布団気持ちーなー! リリーナにバレるまで爆睡しよう!!



「マ・ス・タぁー……?」



 その時、俺の全身に悪寒が走る。


 そう、アレだ。例えるなら草食動物が、呑気に草をモグモグとしていると、すぐ背後に口を開けたケルベロスが待機してるアレに近い……。



「な・ん・で・寝・て・る・ん・で・す・かっ!!」



 ――ギリギリギリギリギリ……。



「いだだだだだだ!! 痛い!! 痛いって!! ごめんなさい、ごめんなさい!! リリーナさん、やめて! 寝起きからアイアンクローはキツイって!!」



 リリーナのアイアンクローやっば!! もうやだ、こめかみ超痛い。俺、泣きそうなんだけど? つか、なんでダメージ入んの? リリーナの隠しステータスに俺特効の何かでもあるのだろうか? 魔王殺しとか。


「もう、目を離すとすぐこれなんですから!! エリー様を起こしてくださいって言いましたよね?」

「すっ、すみません……つい……」

「『つい』じゃありません! ほら、エリー様も起きてください。食堂へ行きますよー」

「うにゃ~~……仕方ないのじゃ~~」


 くっ、エリーのヤツ。リリーナの言うことは素直に従いやがって……。

 朝から思わぬダメージを受けたが、気を取り直して食堂へと行くか。

 




 勇者たちとの戦いが終わり早十日ほどが経つ。我がダンジョンは平穏を取り戻しつつあった。


 捕らえた騎士団の捕虜たちも、現在5階層に設置した湖底監獄[スライムさんの家]で大人しく修行僧のような生活を送っている。湖の底に作った監獄なので、逃げられないと悟ったのか今のところ大きなトラブルなどはない。騎士たちは拘束などはしておらず、監獄内を自由に歩き回れる程度の自由は与えてある。

 食料も、転移魔法で人数分の食材を送り自炊させている。自分たちの食いもんくらい作ってもらわねばな。


 そして、勇者の守護者たち。こいつらは勇者の遺言もあって地底魔城にて保護してやっている。各自状況を把握しているのか、反乱を起こそうとか敵意剥き出しというわけではない。どことなく諦めた感じに近い。


 特にカタリナ。生気がなく抜け殻状態だ。それに見兼ねたミッチーが、カタリナのために料理を作ったことがきっかけで、今うちの城で空前の料理ブームが到来した。最近ではカタリナもミッチーの料理を手伝っている。何かをやることで気が紛れるらしい。ただ、ここで一つ問題が。


 ――リリーナである。


 俺たち魔族は食事を摂らなくても魔素を吸収すれば生きていける。まぁ、中にはそれが味気ないといって、わざわざ料理を作る少数派なヤツもいるのだが……。


 しかし困ったことに、よりによってリリーナがその少数派に入ってしまった。起きる度にリリーナ手作りの朝食が用意されている。それにより、みんなで朝食を食堂で食べるというルーティンが完成されてしまったのだ。


 ……正直、面倒くせぇ。


 でもこんなことをリリーナに言えるはずがない。だって本人、狂ったようにルンルンなのだ。

 もう止めれない、止められない……リリーナの朝ごはん。やだ、変な謳い文句できちゃった。


 そして今も俺を迎えに二人の少女が正面から走ってきやがった。そう、アリエッタとマリエッタだ。


「ヨルシアさまー、おはよーございます! もうみんな集まってますよー」

「おはようございますぅー。早く行くですー」

「おう、お前らか。おはよー」


 何故か、この十日間でこの魔法少女二人に懐かれてしまった俺。あれから城に連れてきてからというもの、二人ともずっと泣きっぱなしの喚きっぱなし。にっちもさっちもいかないので、俺必殺のアメちゃんで三日ほど餌付けしてみた。するとあら不思議。 徐々に会話も増え、あっという間に心を開いてくれた。アメの威力は絶大だ! ……アメちゃんおそるべし。


 まぁ、それにより若干ミッチーのヘイトを稼いでしまったのは別の話だが。とにかく今はみんな元気に暮らしている。そして、この二人は俺の出迎えまでやってくれているのだ。俺は二人に手を引っ張られながら食堂へと入っていった。





「ヨルシアさん、おはようございます」

「おぉ、ミッチーおはよう。毎日朝からご苦労さん」

「いえいえ、大丈夫っすよ! それよりも、……ヨルシアさん、今日も覚悟した方がいいですよ?」

「…………そんなに酷かったのか?」

「えぇ……、今日もヤバいです。討伐ランクでいったらオリハルコン級ですよ」


 そう言って俺とミッチーは席に座る。食堂にはミッチー、守護者メンバー、マリアにエリー、そして俺がテーブルを囲む。

 そして、テーブルにはミッチー監修の、カタリナやシルキーたちが作った、美味しそうな料理が所狭しと並べられていた。焼きたてのパンや、彩り綺麗なサラダ、芳ばしいベーコン。


 それを見たオズワードとバーナルドが凄い勢いで料理を吸い込んでいく。つか、こいつら食べ方ヤバいくね? 掃除機か!? もっと味わって食えよ。


 でも、マジでいいなー……羨ましいぜ。俺もそっちを喰いたい。


 だが、そんなことを言ってても目の前の現実からは逃げられない……。リリーナが満面の笑みで俺の皿を運んでくる。そして、テーブルに置かれたのは、黒くて丸い謎の物体。……もはや地雷臭しかしない。



 ――これは何なのだろう? まず本当に食べ物なのだろうか?



 俺がそれをフォークで叩くとカンカンと金属のような甲高い音がする。


 これが食材から出る音なのだろうか? 臭いは……まさかの無臭!! 料理なのに臭いがないだとっ!? もしかして新手のダークマターなのであろうか? もはや食べ物ではなく鉱石に近い感じがする。



「しぇ……シェフ、リリーナ?」

「はい、マスターなんでしょう?」

「こっ……この石炭(?)はどうやって食べるのかね?」

「ちっ……違いますっ!! 石炭じゃありません!! これはミチオさんから習った『おはぎ』ですっ!!」


 おはぎ? なんじゃそら? 


 俺はミッチーを見るが、彼は遠い目をしながら首を横に振るばかり。どうやら、本物とは違う全くの別物らしい。……ははっ、どうしよう? ……泣けてくる。


 しかし、こんな硬い物をどうやって食べればいいのだ?


 俺は、おもむろにおはぎにフォークを刺してみた。すると、フォークの先がバキンっと折れ、そのままクルクルと回転しながら、城の壁へと突き刺さる。



『『フォークが……折れただとっ!?』』(全員白目)



 えっ? ちょっと待って、ちょっと待って。おはぎって自動的に防御障壁か何かが展開されてる食べ物なのっ!?


「あっ……アレ? おかしいな? ちょっと茹で過ぎちゃったのかな? あっ、でもマスター! きっとアメのように舐めてれば、そのうち溶けてきて噛めるようになりますよ!!」


 ……リリーナ? まわりを見てみろよ? みんなそれは違うって顔してるだろ? 察しようぜ。


「ヨルシアさま? その黒い物体、何か堅い物にぶつけてみたらどうですか? クルミのように割ったら食べやすいかもしれませんよ?」

「あーちゃんの言う通りですー。その未確認物体をこれで割るのですぅ。 ……えい、魔鋼壁(ガンズウォール)!!」


 アリエッタとマリエッタが見兼ねて口を挟んできた。物にぶつけて割るか……確かにいいかもしれん。二人ともナイスアシスト!! 


 目の前にはマリエッタが作った極厚の黒鋼の壁。

 俺は黒いナニカを右手で掴み、そのまま大きく振りかぶった。そして左足を天高く蹴り上げ、そのナニカを全力で鋼の壁へと放り投げる。


 唸れ! 俺の渾身のストレートぉぉ!!



 ――バキィィィィィーーーン!!



 黒いナニカは、金属同士が削り合う嫌な音を出しながら、黒鋼の壁へと大きく減り込んでいった。

 そして、その減り込んだ中央部から大きなヒビが全体に入り、黒鋼の壁は音を立てながら崩れ落ちていく。だが、残念なことに、その瓦礫の中央には形を保ったままの黒いナニカが綺麗に輝いていた。



 ――ノー……ダメージ……だとっ!? バカなっ!?

 


「しぇ……シェフ、リリーナ? 一つ聞いていいか?」

「はっ……はい! マスターどうぞ!!」

「おはぎとは鋼より硬い食べ物なのかね?」

「……いっ、異世界の……食べ物……ですから」


 おっ……恐ろしい娘っ!? サラッと嘘をぶち込んできた!! リリーナわかっているのか? これもはや食べ物ではなく兵器だぞ? 


 しかし、マジどうしよう……。今日も(・・・)食べられないな。ちょっとくらいのもんなら喰ってやるけど、さすがに噛めないものはどうしようもない。仕方ないか。食べたふりをして今日も消す(・・)しかない。


 そうと決まればリリーナの気を逸らさねば。



「あぁ!! リリーナの後ろに森の精霊がっ!!」

「はぁ? マスター、何言ってるんですか? 森の精霊なん……」



「嘘っ!? なんでバレたのっ!?」



 リリーナが振り返ると、そこに透明な四枚の羽で羽ばたく、森の妖精(?)がポンっと出現した。



「あぁ、しまった!? 姿隠しの結界も解けちゃったっ!!」



 食堂内の時が止まる。



 そして一呼吸おいてから、全員の声がハモった。




「「「えぇっーーーーー!?」」」




 どうやら、うちのダンジョンに妖精が迷い込んだらしい。

 

本日もデビダンを最後まで読んでいただき誠にありがとうございます。

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