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第72話 聖女セシリア・アーデルハイド

 レグナード王国は建国してから、未だかつてないほどの危機を迎えていた。それは、神殿に祀られていた聖竜レグナードの像から、その加護がゴッソリと消えたのだ。慌てた神官たちは、その原因を究明すべく聖女に神託の儀を依頼するが、竜の加護なしの儀式は至難の(わざ)

 しかし、それでも王国の危機を打破しようと、聖女が祈りを捧げること二週間。遂に聖女のもとへある神託がくだる。


 従来通りの神託であれば、勇者の卵、魔王出現の知らせや、艱難辛苦(かんなんしんく)なことあれば、それを乗り越えられるような助言を与えられるもの。

 それを期待し、無理を通して行った神託の儀であったが、くだされたものは全く正反対なものであった。




――それは滅びの預言。




 あまりのショックと心労に聖女は神託を伝えることもなく、そのまま崩れ落ち気を失ってしまった。

 そして、神託が下るのと同時にレグナード王国へ一人の騎士が戻った。


 それはコーニール付きの副官ブライアス。ダンジョンから解放され、王都へと帰還したのだ。そして、ウィンクードのダンジョン侵攻について国王へと報告するのだった。勇者の死亡、守護者の壊滅、騎士団及び聖騎士隊の捕縛。その捕虜交換についての交渉、そして最後に……。



 ――夢の街ウィンクードの独立。



 このウィンクードの領主ミチオ・T・ウィンクードの謀反とも思える宣言。ブライアスによると、ミチオ・T・ウィンクードと迷宮の魔王が手を組み都市国家を立ち上げるとのこと。人族と魔族が共存できる唯一の国。それを建国するというのだ。


 これには国王も大激怒し、すぐにウィンクードへの挙兵準備に取り掛かった。その裏切り者を処罰するために。しかし、ここで思わぬ人物より待ったがはいる。


 待ったをいれたのは、神託の間で気を失った聖女セシリア・アーデルハイドだ。あれから、死んだように深い眠りに入った聖女。目覚めるとすぐさま自分がやるべきことを整理した。これより訪れる王国滅亡の危機。

 それを回避するにはあの迷宮の魔王を敵に回してはいけない。ウィンクードの領主も然り。王国が目指すべき道は和平のみ。


 そして、国王を説得しようと謁見の間へと出向いた矢先にこれだ。このままでは神託の通り、王国が滅びに向かってしまう。それだけは避けなければ。しかし、ここで国王に滅びの預言を伝えようものなら、もうそのレールから外れることができなくなってしまう。私がなんとかしなければ! その気持ちだけで聖女セシリアは国王へと進言を行った。





「陛下。恐れながら申し上げます。ウィンクードへの挙兵、今しばらくお待ちくださいませ」

「セシリアよ。その発言、心せよ? いくらそなたであろうとも、その理由が不確かなものであるならば、余はそなたを罰するぞ?」

「御意に。それでは申し上げます。先日、遂に神託がくだりました」

「おぉ、それはまことか!?」


 一瞬にして国王の表情が明るくなった。これまで何度も王国の危機を救った聖女の神託。今回もそうなるであろうと、自然と期待に胸が膨らむ。


「まずは、ウィンクードのダンジョンへと魔王が出現致しました」

「セシリア……。それは先程、そのダンジョンより逃げ帰ってきた者より聞いた」

「いえ、それがただの魔王ではございません。まずは1200年前、この国に未曾有の被害をもたらした億千万死の魔王が一人」

「なんだとっ!! そのような凶悪な魔王が復活したのか!? して、一人とな? もしや……」

「はい。お察しの通りでございます。もう一人は伝説の大罪(・・)の魔王」

「バカなっ!!」


 思わず、国王の声が大きくなる。億千万死の魔王ですら、国家戦力が必要になるにも拘らず、そこに大罪の魔王まで。悪夢としか言いようがない。だが、聖女の話はそれで終わらなかった。


「そして、その大罪の魔王は、我が王国の守護竜でもある聖竜レグナードを撃退し、その手中に収めております」


 この聖女の発言で、国王ゲオルグ・ラル・レグナードは思わず口を噤む。

 信じたくない……いや、信じられない。しかし聖女が受けた神託。それを疑う余地はない。


「仮にこのままウィンクードへと侵攻したとしましょう。三勇者の二人は王国のため、その命を懸けて戦うと思います。それがたとえ負け戦になろうとも。しかし、異世界の勇者たちはどうでしょうか? 最後の最後まで果たして王国のために戦うことができるのでしょうか?」

「だが、セシリアよ! このまま何もせずにただ黙って指をくわえて見ていろというのか!? ウィンクードの異世界人は魔王側へと寝返ったのだぞ!! あまつさえ、その国の王となるとさえ言うておる!! これを余に我慢せよと言うのかっ!?」


 国王は興奮を抑えられず、怒りで身体が震えた。


「陛下……、そこで一つ提案がございます」

「申せっ!!」

「はっ……。私を捕虜交渉の使者としてウィンクードへと行かせてはいただけないでしょうか?」


 聖女のあまりに突拍子のない発言。おもわず王は眼を見開いた。


「セシリアよ……。何を言うておる。お主の役目は軍使ではない。そのようなことをさせられるはずがなかろう?」

「しかし、他に方法がございません」


 国王は悩む。当初、話し合いなどするつもりは全くなかった。最大戦力でウィンクードへと挙兵し、その諸悪の根源を断ちたかった。しかし、蓋を開けてみれば魔王が二体、さらにそれがウィンクードと手を組んでいるという事実。指し手を間違えれば追い込まれるのはこちらだ。


 そして、なにより聖竜レグナードの加護が消え去ったのが痛い。勇者たちの戦力も軒並みダウンしている。


 正直、頭が痛すぎる話ばかりだ。


「……それは今の現状が好転すると思って良いのだな?」

「必ずや……、陛下のご期待に応えてみせましょう」

「……護衛は最小限の者しかつかせぬゆえ悪く思うな。本来であれば交渉の場など設けるつもりなどなかったのだ。しかし、少しでも相手がこちらに敵意を示すようであれば、騎士団全隊をもってすぐさま挙兵をする。よいな?」

「かしこまりました。陛下の格別なる恩情、恐悦至極にございます」


 まずは第一段階。滅びの預言を回避したとは到底言えないが、そのベクトルを少しずらした聖女の行動。しかし、まだまだ運命の分かれ道は続く。聖女が目指すは和平の道。彼女の困難は始まったばかりだ。





 


 そして二日後……。



 その日、聖女セシリア・アーデルハイドが、王都よりウィンクードのダンジョンを目指して出立した。異世界人の勇者ユウナ・サトウを連れて……。


「セシリア様、二人きりの旅楽しみですね!」

「ユウナさん? これは遊びじゃないのよ?」

「わかってますよー。でも、楽しみなんです! ダンジョン踏破や戦闘以外の外出なので。それにしても、あのおじさん(・・・・)元気かなぁー」


 セシリアが選んだ付き人は、自身より二つほど若い今年18歳となる異世界人の女勇者だ。

 その長い黒髪はポニーテールにまとめられ、セーラー服に帯刀するという独特な佇まい。しかし、彼女の実力は折り紙付き。この一年で踏破したダンジョン数、……なんと『49』!! アダマンタイト級の平均アベレージが10~15踏破ほどとなるので、その三倍以上はこなしているのだ。


 しかも、驚くべきことに、……彼女はソロ(・・)の冒険者でもある。一人でダンジョンに潜り、踏破することからついた二つ名が『殲滅の剣姫(プリンセスデストロイ)』。


 そして聖女セリシアも自身の身分を隠すために、豪華な装飾などは身に着けず、装備は白いローブに細剣(レイピア)のみ。肩口まである緑色の髪もおろしたままのスタイルだ。


 絵になるような美女が二人。


 その二人が、レグナード王国を滅びの運命より救うために、その一歩を踏み出した。




本日もデビダンを最後まで読んでいただき誠にありがとうございます(。-`ω-)

感想、ご指摘、ブックマーク、評価、誤字報告をいただきました読者の皆様。心より御礼申し上げます。

次回から4章開始です(*´ω`)4章は【都市国家建国編】となります♪

そして開始前に3章で進化した者たちのデータを作成しておきますm(_ _)m

今後ともデビダンをよろしくお願い致します


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