第6話 秘書襲来!!
「ふわぁぁぁぁぁぁぁぁ~~、よく寝たぁぁ~」
いやぁー、めっちゃ寝れた。今回はどれだけ寝れたかなぁ? 以前は8日だったから記録更新となるか? モニターの日付を見るのが楽しみだぜっ! とりあえずまずは風呂にでも入ろう。
寝室からマスタールームへと入ると、ソファーに金色のモップのような物が見えた。
あれ? 寝る前あんなとこに物を置いたっけかなー?
俺は欠伸をしながらソファーへと近づいていくと、その金色のモップが突如俺の方へと向き動き出した。
「貴方、いつまで寝れば気が済むんですかっ!? 起こしても起こしても起きないし!! 私が来てから三日経ったんですよ!? 三日っ!! こんなに寝る魔族なんて聞いたことありません!! 呪われているんですか!?」
その金色のモップはサキュバスの髪の毛だった。ホワイトゴールドの髪に露出の多い服。顔は幼いのに無駄にでかい胸。つか、なんで上位魔族のサキュバスがこんな地方ダンジョンなんかに来てんだ? それに興奮しすぎだろ? 発情期か??
「誰だお前?」
「hsdふぃwぺおfjくぇhfp!!!!」
どうやら逆鱗に触れたようだ。言葉にならない言葉で俺を罵ってくる。よくそんな言葉をポンポン思いつくもんだ。しかし懐かしいな……。あのミノタウロス先生も俺が早弁する度にこんな感じで怒ってたっけ? あの顔といったら……ははっ。
「人が怒っている最中に何を笑っているんですかぁぁーー!!」
「あれっ? 俺、今笑ってました? うわぁ……恥ずかしい」
「私が話していたことわかってるんですか!?」
「あっ、すんません。ちょっと考え事してました」
「オラァァァァーー!!」
——スパァァァーーーン!!!
「ぶべらぁぁぁぁーーー!!」
え? えっ? なんで? なんで? 知らない人にいきなりビンタくらったんだけど?? めっちゃ痛いっ!! 気合い入れすぎだろ!?
「はぁはぁはぁ……。こんな奴が私の上司なんて……。悪夢よ……」
は? 今なんて? いやいやいや……そんなバカな。部下を雇った覚えなんてコレっぽっちもないぞ。
「うわぁぁーーん!! もう最低!! 最悪!! まだオークやスライムの方がいいよぉぉーー!!! うわぁぁぁーーん!!!」
ビンタされたと思ったら、次は大号泣か……。情緒不安定過ぎるだろ。それにしても俺はスライム以下なのか……。ショックだぜ。下級とはいえ悪魔なんだけど? しかしこのまま泣かれ続けても面倒くさいな。やれやれ。
「なぁ、お前。よくわからんが元気出せよ。生きてりゃそのうちいいことあるって」
「ぅぅうるしゃいっ!! 最底辺悪魔が私を励ましゅな!!」
おっふ……。なんか暴言吐かれまくってるんですけど? 鉄のメンタルの俺だから笑って許してやるけど、オークたちなら既に五回はやられてますよ?
つか、アホらし。もういいや。そっとしておこう。そのうち落ち着くでしょ。気分転換に風呂でも入るかな。
ふと横目にモニターを見ると、かなり日にちが経っていた。計算するとトータル就寝時間なんとびっくり216時間!! よしっ、記録更新!!
ダンジョンコアを見ると魔界LINEが届いていたのでメールを開いた。えーっと、何々……
【おめでとうございます。新人迷宮ランキングで貴方の納めた魔素量は中間発表にて第5位となりました。よって、これからのダンジョン発展を期待し魔界より秘書官を一名派遣致します。きっと貴方の力となりますので、秘書官と共にダンジョンを発展させていってください】
うわぁ……、すっげー有難迷惑ぅー。つかその秘書官、力になるどころか、その力を使って上司にダメージを与えたんですけど? ……うん、見なかったことにしよう! そんなことよりも俺は風呂に入りたいんだ!! さぁて、おっ風呂、おっ風呂♪
「……どこに行くんですか?」
サキュバスさんが物凄く低い声で話しかけてきた。
「えっ? 風呂だけど?」
んっ? サキュバスさんが俯いて小刻みに震えている。げっ? もしかしてトイレ?? 俺、悪魔だからそういう生理現象ないからトイレ作ってないんだよなー。
「あっ、すいません。トイレだったらここにはないんで、するんだったら大部屋のゴブリンたちのとこ行って出しちゃってください」
——スパァァァーーーンンン!!!!!
「ぶべらぼばぁぁぁぁーーー!!!」
「あっ……あなたはレディーに対するマナーがコレっぽっちもないんですかぁぁー!? それに私にもそんな人間みたいな生理現象はありません!! これは貴方への怒りに震えていたんですっ!!」
まじDV! DV反対!! この短時間にニ発もビンタ喰らっちまったじゃねぇか!! つか、何? 俺への怒りって? まじでわかんねぇんすけど? サキュバス……パネぇ! マジパネぇ!!
「そもそも、なんでマスタールームに大浴場や寝室があるんですか!? 信じらんない! 貴方、本気でダンジョンを作ろうと思ってるんですか!?」
「いや、ダンジョンの製作はゴブリンさんたちに任してるから……」
「はっ? 何を言ってるんです?? ゴブリンがダンジョンを作れるわけないじゃないですか!! 貴方がやるんですよ! あ・な・た・がっ!!」
「いや、それが現にこのダンジョン、ゴブリンたちが作ってるし。ほらっ」
「‥‥は?」
俺はモニターにツルハシやスコップでダンジョンを掘り進めているゴブリンさんたちを映し出した。あっ、またゴブリン増えてる。あいつら生活魔蟲のような奴らだな。しかし、たった九日ほどでさらに広くなってるし。もう迷宮やん。つか、あれ? モンスター増えてね? なんか草のような奴いるんだけど? ……まぁ、いいか。考えるのめんどくさっ。お互いクレームだけは気をつけてくださいよ?
「なっ? 言ったろ? このダンジョンの作成者は俺じゃなくゴブリンさんたちです」
「そんなこと、自信を持って言うなぁぁー!!」
「まぁまぁ、落ち着けよ」
「これが落ち着いてられますか!? いったい何を目指そうとしてるんですか!!」
「うーん、強いて言うならダンジョンの大家さんかな?」
「マスターがバカだぁぁーー!! もーいやぁぁー!!」
あっ、壊れた。よし! 今がチャンス!! 風呂に入ろう!!
こうしてうちに絶叫巨乳サキュバスが住み着いた。