表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/95

第65話 不死の理

 《9階層》


「……流星光爆陣(スターダストレイン)!!」


 カタリナが魔法を唱えると、空を埋め尽くすほどの光の球が出現し、俺たち目掛けて次々と降り注いできた。辺りに爆撃音が響き渡り、粉塵が次々と舞い上がる。一発の破壊力が半端ないほど高く、辺獄の大地にポッカリとクレーターができ上がるほどだ。俺とミッチーは死にものぐるいでそれを避けていた。


「みみみみ、ミッチぃぃぃーー!? これマジヤバいんだけどぉぉ!! ちょっ、なんか撃ち返して!!」

「おっ……オレっすか!? こんな状況じゃあ無理っすよぉぉー!!」

「ミッチーならできるっ!! というか、頼むから頑張れ!! なんか魔法を反射させたりできねーの!?」

「……あっ! ヨルシアさん反射はできないけど、この魔法使えそうっす。……いきます!! ………こい魔重力深淵門(アビス・ゲート)!!」


 ミッチーが手をかざすと、突如として空間が裂けて巨大な黒い渦が出現した。


 そのドス黒い渦は、勢いよく光の球を飲み込んでいく。崩れた瓦礫も折れた木も周辺にあるものを何もかも吸い込んでいった。


 おぉ……すげぇ、吸引力。思わずあの家電の謳い文句が脳裏をよぎった。そしてよく見ると、あのクソ勇者とオバハン魔導士もジリジリと黒い渦へと引き込まれている。苦し紛れに二人が斬撃や魔法を放つが、全てあの黒い渦に吸い込まれていった。


 あれ? もしかしてこれ、意外といける? さすがはミッチー!! そのままあいつら二人も吸い込んでしまえ!!


「ふんっ……魔力だけはたいしたものだな。以前とは雲泥の差だ。だがな、残念ながら貴様には足りないものがある」

「おんっ? どうした勇者様? 負け惜しみか? もうお前らはこのブラックホールに吸い込まれて終了なんだよっ!! そんな減らず口はこの魔法を破ってから言うんだな!! はっはー!!」


 おぉ……。ミッチーが優位に立った途端に態度が豹変した。めっちゃノリノリやん? しかし、ミッチー。それはマズいぞ? なんだろうこの小物感? 強いくせにやられるような気がしてならない……。


「そうか。では、言葉通り破らせてもらうとしよう。……聖剣技、降竜双牙斬っ!!」


 勇者が聖剣を振りかぶると、剣に大量の闘気が集まっていく。すると、次の瞬間……。


「……転移っ!!」


 おばはん魔導士がまさかの空間魔法を唱え、勇者をミッチーの背後へと転移させた。あまりに一瞬のこと過ぎて俺もミッチーも動けなかった。


「……俺と貴様の違いは圧倒的戦闘経験の差だっ!!」


 そういって勇者はミッチーに聖剣を振り下ろした。幾多の光の斬撃がミッチーを襲う。



 ――ズドォォォォォォォォーーン!!!



 ミッチーは聖剣の直撃をくらい、もはや判別不能な肉塊と化していた。


「ミッチぃぃぃーー!!」

「人の心配か? 随分と余裕だな? 次は貴様だ、クソ悪魔」


そして、勇者が振り向きざまに俺へと一閃。


「……マジかよっ!? 速すぎんだろっ!!」


 俺目掛けて聖剣が振り下ろされるが、暗黒剣を両手に作成しそれを受け止める。斬撃の圧力で足下の地面がボコッと凹んだ。なんつー力……重えよ!!


「ほう? やるな。だが無意味だな」


 勇者が聖剣にギュッと力を込めると、交差して受け止めている二本の暗黒剣ごと俺を叩っ斬った。肩口から一直線に血が噴き出す。


 くらった!? ヤバイ……距離をおかないとやられる!!


 俺にトドメを刺そうと勇者が聖剣を横に薙ぐ。咄嗟にダンジョン転移を使い、肉塊となったミッチーのもとへと転移した。勇者がそのまま聖剣を振り切ると、辺獄の大地は半月の弧を描き大きく抉れた。


 おいおい、一撃の破壊力がおかしいだろ……。俺の暗黒剣ごと叩き斬るなんてありか? つか超痛い……傷は? 深くはないが浅くもない。

 ……クソっ。自己再生が追い付かないか。痛たたた……、これはマズイ。つか、ミッチーは!?


 ミッチーの方を見ると、それが何だったのか原型を留めていないほどの肉塊と化していた。しかし、その肉塊からポツリと一言漏れる。



「………不……死の……理(ノス…フェ…ラ…トゥ)



 すると漆黒の闇がミッチーを包み込んだ。

 闇が徐々に人型を形成していく。そしてその闇が晴れていくと、そこにはいつものミッチーがガグブル状態で立っていた。


「「……!?」」


「ヨルシアさん!? オレ、オレ、いいいい……今死んでましたよね、死んでましたよね!? あのクソ勇者マジやべぇぇぇー……。オレ無理っす!! あんなのに勝てるはずがないっ!!」

「みっ……ミッチー? 落ち着け、まずは深呼吸だ! パニックになるのが一番ヤバい。よし、こうしよう。俺が勇者の相手するからミッチーはあのオバハン魔導士の相手を頼むな? あっちなら勇者ほど怖くないだろ? ミッチーは強い子だからできるよな?」

「はっ……はいっ!!」


 俺がミッチーの肩をガクガクと揺らし正気に戻す。かなりテンパっていたようだ。それもそのはず。ミッチーは魔族へと転生し、超強い魔力を持つが、その戦闘経験は少なく自分の力を使いこなせていない。


 それにしてもミッチーの強力な防御障壁を抜いて一撃で葬り去ろうとするとは……。勇者強過ぎだろ!?


「まさか、領主サマが人間を辞めて不死者(リッチ)になっていようとはな。これでお前を斬る、ちゃんとした大義名分ができた。感謝しよう」

「しかし、カノープス様。あの再生力……ただの不死者(リッチ)ではございません。恐らく上位種かと。お気をつけくださいませ」


 はぁ……。しかし、この魔導士も厄介だ。術の威力がハンパない。さすがはオリハルコン級。ミッチーすまん。俺が勇者を受け持つから、あのおばはん任せた!!


 俺はグッと力を入れて魔力を解放させる。そして一対の黒翼がいつものように顕現した。すると勇者が……。


「ほう……? 堕天使の翼が出せるのか。なるほど。シリウスがやられたのも頷ける。だが、たった(・・・)の二翼。防御しか取り柄のない翼など俺の前では意味がないぞ!!」


 そう言うと、勇者が恐ろしい速さで俺に斬りかかってきた。再び暗黒剣を両手に作成し、剣戟を打ち返していくが、一撃ごとに手に痺れが残る。勇者の一撃は凄まじく重い。


 あぁー、強ぇーー……マジで面倒くせえわ。とりあえず、こいつの動きを封じないとな。


 

 ……くらえクソ勇者。



 ――遅延の魔眼(ロキ・スロウス)!!



 いきなりガクンっとスピードの落ちる勇者。俺は聖剣の乱舞を掻い潜り、勇者に十文字斬りを叩き込んだ。


 ……悪いな。不意打ちさせてもらった。しかしこうでもしないとダメージ入らんからさ。


 渾身の十文字斬り。その身につけていた鎧も、斬撃に沿って砕け、空中に鮮血が舞い散る。


 イケるか!? そう思った次の瞬間……。



「小賢しい真似をぉぉーー!! 【全耐性の竜鎧(バハムートティア)】!!」



 勇者の身体を竜の闘気が包み込み、突如その制限したスピードが元に戻った。咄嗟の出来事に対応できず、俺は勇者のカウンターをくらってしまう。


「……竜哮砲(ドラグブレイバー)!!」


 ――あっ……やっべ……。


 勇者の左手から放たれる、詠唱破棄の竜言語魔法が俺の右肩に直撃する。黒翼でレジストを試みるが、それも虚しく右肩は円を描くように撃ち抜かれ、俺は身体ごと数キロ先まで吹き飛ばされてしまった。



 ――チュドォォォォォーーーーーーーン!!!



 そしてほどなくして辺獄の大地に大きな地響きと共にキノコ雲が舞い上がる……。


「ヨルシアさんっ!?」

「あなたも自分の心配をしなさい? ……天輪極星咆(スターバーストロア)!!」


 接射で撃ち出した、カタリナの極光魔法。聖なる魔力で形成された巨大な光球はミッチーを大の字にして吹き飛ばした。その威力は凄まじく、ヨルシアの吹き飛ばされた反対側にもキノコ雲が浮かぶほどだった。


「カタリナ、トドメを刺しにいくぞ? 必ず息の根を止めろ」

「はっ!! カノープス様もご武運を」


 カノープスはカタリナにそう告げると、ヨルシアが吹き飛ばされた方角へスタスタと歩いていってしまった。そしてカタリナは……。


「……転移!!」


 ミッチーが吹き飛ばされた上空へと転移し、再び極光魔法を唱える。


「聖なる天の裁きを受けよ!! 天光流星乱舞(ガトリングミーティア)!!」


 夥しいほどの光の弾丸がボロボロのミッチーを襲う。舞い上がる粉塵がさらに増え、その威力に再び辺獄の大地が揺れる。



「さよなら……魔に取り憑かれし哀れな異世界人よ。成仏しなさい。……天帝浄化陣(ウルティマ)!!」



 カタリナの身体が聖なる魔力によって光り輝く。発動するのは対アンデット用の強制退魔魔法。聖なる光に導かれ魂ごと消滅させるアンデッド特効の一撃。


 空に白く輝く巨大な立体魔法陣が出現する。それはまるで天へと続く入り口のよう。

 そしてそこから粉塵が舞い上がる中心部に向かって、いくつもの後光が差し込み始めた。それは非常に暖かな光で、まるで絵画に描かれた幻想的な情景だった。



「…………終わりね」



 カタリナがそう呟くと、中心部から虹色の魂のようなものがいくつも天へと向かい昇っていった。キラキラと光の尾を引きながら、それは空に描かれた魔法陣へと向かう。


 それを見届けようとカタリナは空中に浮遊し続けるが、いつまで経っても魂の浄化は終わらなかった。単純に相手の魔力量が多いだけと思っていたが、いくらなんでも昇る魂の量が多すぎる。


 ふと違和感を感じて上空を見ると、出現した退魔の魔法陣に異変が起きていた。天へと登る魂だと思っていたものに白い魔法陣を、禍々しく真紅に輝く魔法陣へと書き換えられていたのだ。


「……なっ!?」


 自分の使用した魔法陣を書き直される。未だかつてない状況にカタリナは驚きを隠せなかった。


 魔法陣とはコンピュータープログラムのようなもの。プログラムの入口さえわかればハッキングによって理論的には書き換えが可能なのだ。

 ただこの世界の人間にとって魔法陣のハッキングができることなど想像すらしていなかった。だからこの魔法陣のハッキングは異世界人、田中美智雄ならではの技である。


 その膨大なる魔力と、億千万死の魔王より受け継いだ知識を駆使して行った会心のハッキング。


 するとカタリナは粉塵が舞う中心部から恐ろしいほどの魔力の波動を感じた。心の底から凍りつくような魔力の波動。あまりの禍々しさにカタリナに戦慄が走る。

 

 かつて、勇者と一緒に対峙した名だたる強き魔王たち。その魔王たちが纏っていた凍てつく闘気のような波動。心弱き者が、その波動を感じるだけで意識を刈り取るという【魔王覇気】。それが、あの異世界人から感じるのだ。


 ……ありえない。


 あのハズレ勇者が魔王にでも覚醒したとでもいうのだろうか? 目の前で起きてる現実にカタリナは絶句するほかになかった。



「……いい加減にしろよ? 本気で殺しにきやがって……。王国もお前らも絶対許さねぇからなぁぁぁ!!」



 抉れた大地の底に、血だらけで叫ぶミッチーから赤い魔力が立ち昇った。そしてその手を天へと掲げ呪文を唱える。



一切衆生(いっさいしゅじょう)……、全てを喰らえ……、死鬼神怨霊(ヴァイザード・)封獄飢餓呪(アグニナータ)!!」



 ミッチーが使用したのは最上級死霊魔法。


 上空に展開された赤い魔法陣から、地獄の餓鬼魂(ガキダマ)を召喚した。直径100メートルを有に超える餓鬼魂からは、黒く禍々しい触手が何本も伸び、その先端は獲物を捕食できるよう大きな口となっていた。

 

 すべてを食すといわれる地獄の餓鬼魂。それが今まさにカタリナに襲い掛かろうとしていた。


「自分勝手な正義にオレは殺されたくないんでね。悪いが反撃させてもらう」


 告死の不死王(レヴェナント・リッチ)ミッチーの逆襲が始まった。



本日もデビダンを最後まで読んでいただき誠にありがとうございます(。-`ω-)

感想、ご指摘、ブックマーク、評価、誤字報告をいただきました読者の皆様。心より御礼申し上げます。

明日も更新です。

次回、ミチオ覚醒!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございます!
バージョンFのTwitterはこちらから
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ