第58話 勇者の盾
【五祈刀】の詠唱を変更させていただきました!
アドバイス頂いた皆さま。本当にありがとうございます。
『ゴブリダさん、オペレーターのシャーリーです。3階層より、騎士団が降りてまいります。戦闘配置についてください』
「シャーリー殿、既に迎撃態勢は整っております。いつでも戦闘は開始できますゆえ、ご指示ください」
勇者たちが転移トラップに嵌ってから数十分……。
遅れながらも聖騎士隊と騎士団は4階層へと到着した。
「ゴブリダ様! 黒鬼騎士団及びゴブリン兵団、全42隊配置完了しました。いつでも戦闘可能です」
「ごっ……ゴブリダの兄貴ぃ!! は、ははは早くやらせろよぉぉ!! かっ……身体が疼いて、疼いて仕方ねぇーんだよぉぉ……。おでたち狂戦士団に、ままま、任せてくれれば全部やるかららららら、……ヒャッハぁぁーー!!」
ゴブリダの前に、黒鬼騎士団副長のゴブスロと、狂戦士団のゴジャギが報告にやってきた。
「うむ。ゴブスロにゴジャギよ。落ち着くのだ。すべて、主様の予定通りにことが進んでおる。我らが勝手に動き、それを崩すわけにはいかん。シャーリー殿の指示を待て。ところでゴジャギよ。その鎧はどうしたのだ?」
ゴブリダの目に入ったのは、異様な雰囲気を醸し出している銀色のハーフアーマー。その両肩の肩当からは針のように尖った棘が数本伸びていた。
これは以前ルルが作り出した試作防具である『二重呪の鎧』。呪いの二重掛けを施した鎧である。だが試作品であるため、残念ながら効果は未知数。
しかしそれでもゴジャギは嬉しそうにゴブリダへと語り出す。
「こっ……ここコレ、ルルたんが、おでのために作ってくれた、よっ……よよよ鎧。こっ……ここ、この肩のトゲトゲ刺すと気持ちぃぃぃ。刺す、血が出る、気持ちいぃぃ、にゃはぁぁぁ……」
「そっ……そうか。ルル殿の新しい鎧か。しかしゴジャギよ、まだ戦闘前だぞ? 戦う前に頭から流血する奴がおるか! あとで派手に暴れてもよいから、もう少し待て。……あと、もう少しだ」
するとシャーリーからゴブリダに念話が入る。
『ゴブリダさん、騎士団たちの進軍を確認。戦闘を始めてください!』
「御意っ! ゴブスロ、ゴジャギ、戦闘開始だっ!! いくぞ!!」
こうして4階層の防衛戦が始まった。
⌘
《2階層》
……ここは、どこだ? 草原?
勇者の守護者であるオズワードは強制転移で2階層へと送られていた。
取り乱すこともなく、冷静さを保っているのは場数をこなしているためだろう。そして本人が転移先に気付くのに、そうたいして時間は掛からなかった。
なっ……2階層か!? くそ、やられた!! カノープス様と分断させられたのか!? 部屋丸ごとの転移トラップなんて聞いたことがないぞ!? すぐにみんなと合流しなければ。
するとオズワードの視線の先に見慣れたシルエットが目に入る。
「おい、バーナルド!!」
「おぉ!! オズワードか! 無事だったか。カノープス様は?」
「わからん。おそらく、俺たちとは別の階層へと転移させられたのだろう。きっと、ここの迷宮主の狙いは俺たちとカノープス様との分断だ。探し出して合流するぞ!!」
「わかった。いこう」
勇者の守護者の中でも、この聖十字騎士の二人は守りの要ともいえる存在だ。共に装備するその大盾は、幾度となく勇者に降り注ぐ様々な攻撃を受け止めてきた。まさにタンク役の鑑と言っていいだろう。そして、その防御特化の二人と相対するのは……。
「こーら! ちょっと、どこいくのよぉ~。やっと、二対二になったんじゃな~い」
「そうよぉ~。お楽しみは、こ・れ・か・ら」
四腕のミノタウロス二体である。破壊の化身とも思えるその巨体は見るだけでも圧倒される。
オズワードとバーナルドはすぐさま警鐘を鳴らした。
そしてオズワードは槍のように柄の長いハンマーアックスを、バーナルドはスパイク付きの鉄棍棒のようなバトルメイスを手に戦闘態勢へと移った。
「あら、やだん。あんたたち、そんな貧相な武器でアタシたちとやろうと思ってるわけ?」
「ラブちゃんの言う通りよ~。そんなガラクタに頼らなくてもいいじゃない。あんたたちも、アタシたちと同じように相応しい武器を持ってんでしょーが。これよ、こーれ」
そう言うと、ピースは硬く握り締めた拳を前へと突き出す。
「漢は拳で語り合うものよ!! さぁ、アタシたちと一緒に語り合いましょーか!!」
ラブとピースが大地を蹴り、オズワードとバーナルド目掛けて突進していく。並みの冒険者相手ならば、その圧力だけでも恐怖を与えるのだが、さすがは勇者の守護者。それに怯まず迎え撃つ。
「バーナルド! 俺がバフをかける。お前は障壁を頼んだぞ? いくぞっ……神聖防御加護!!」
「あぁ、わかった。くそっ、一撃がデカそうだぜ! ……五重金剛幕!!」
「「どっせぇぇぇーーい!!!」」
ラブとピースが二腕の右ストレートを繰り出すと、聖十字騎士たちに直撃する前に見えない壁に阻まれた。そして凄まじい轟音と共に、辺りに衝撃波が拡散していく。草木はなぎ倒され、ダンジョン内に爆風が吹き荒れる。
「あっらー、あんたたち意外にやるじゃないの? 防がれるなんて思わなかったわ! でも、これはどう?」
ピースがそう言うと、腰から白い刀身の大鉈を引き抜いた。
「穢レ給ヘ汚レ給へ……、ソノ障壁ヲ……、穢レ壊シ給ヘ……【五祈刀】!!」
「……!? バーナルド!! 後ろへ跳べっ!!」
オズワードの叫びも虚しく、バーナルドは展開した防御障壁ごと大鉈で叩き斬られてしまった。袈裟斬り気味に入った斬撃が直撃したのだ。そして勢いよく鮮血が噴き出し、バーナルドの鎧はみるみるうちに真っ赤に染まっていく。二人を守るように展開していた防御障壁はガラスのように粉々になり崩れ去った。
「ぐはぁっ!?」
「バーナルドっ!!」
崩れ落ちても不思議ではない一撃。それをバーナルドは持ち前の気力でなんとか踏んばった。そして斬られてもなお、その闘志は折れず右手に持ったバトルメイスがピースの顔面を捉える。
鈍く重い音が響きわたり、ピースが後方へと吹き飛ばされた。
「げふんっ!! ……いいわ、今の一撃いいじゃないの!! 久しぶりに感じちゃったわ……ふぅぅぅう、滾ってきたぁぁ!! どんどん行くわよ!!」
ピースはバーナルドに回復させる暇を与えず、左腕に巻きついた鎖鉄球をブンブンと回しながら攻撃を続けていく。一撃一撃が、まるで爆撃のような攻撃。大地は爆発で抉れ、どんどん辺りの地形が変わってゆく。それをバーナルドはバトルメイスと大盾で必死に捌いていった。
オズワードがジリ貧のバーナルドのフォローに入ろうとすると、それを阻止するかのように頭上から巨大な軍配が振り下ろされた。それをバックステップで間一髪躱すが、その軍配の一撃で大地が大きく凹む。
オズワードの頬に冷や汗がつたった。自身の背丈ほどもある軍配だ。攻撃範囲もおのずと広くなる。そしてその威力も半端なく大きい。
「ちょっと、あなた!? なんで避けるのよぉー!! 当たりなさいよぉ!!」
「バケモノめ、調子に乗るなよ!!」
オズワードがハンマーアックスを握りしめ、それをラブの頭上へと振り下ろす。ラブは軍配でハンマーアックスを撃ち返し、逆に左二腕のストレートをオズワードへと叩きこんだ。
なんとか大盾でガードし直撃をさけたが、そのまま岩壁へと叩きつけられ吐血する。
「あら、あんたちょっといい男になったじゃない。やっぱり男は血を流してなんぼよね」
「ふん、図体だけの馬鹿に言われたくはないな……くらえ変態」
――ズドォォォーーーン!!
突如、ラブの足元が爆発する。
オズワードがラブに吹き飛ばされる超然に放り投げた起爆ポーションが爆発したのだ。黒い煙が辺りを包む。
「ごほっ、ごほっ!! ちょっとぉ!! めっちゃ煙たいんですけどっ!?」
ダメージはほぼゼロ。しかし、それでいい。僅かにできた隙をオズワードは見逃さなかった。
「はぁぁぁぁ……、塵と化せ地竜轟衝撃ぁぁ!!」
オズワードの闘気を纏ったハンマーでの多段連撃。自身を独楽のように回転させ、遠心力をのせて相手に打ち込む技だ。その威力は一撃一撃が必殺の威力。その総攻撃数……なんと27連撃!! 並の魔物であれば塵さえ残らない技である。ラブもそれを必死で捌いていくが、オズワードの攻撃数が次第に勝り始め、攻撃が次々とヒットしていく。
「うぉぉぉぉ、砕け散れぇぇーー!!」
そして最後の攻撃をラブへと打ち込むと、地面は大きく爆ぜ粉塵が舞い上がる。まさに会心の一撃。大地は削れ20メートル近いクレーターができた。
「ちょ……ちょっとラブちゃんっ!?」
「やっとお前にも隙ができたな。吹き飛べ!! ……剛鬼粉砕衝!!」
バーナルドもバトルメイスに巨大な闘気を纏わせ、必殺の一撃をピースへと叩きこんだ。
まさに全身全霊の一撃。スクリューのようにバトルメイスは回転し、無防備なピースの胴体へと突き刺さる。轟音と共にピースは数百メートル先まで吹き飛ばされ、それをなぞるように衝撃波で大地も抉れた。
「はぁはぁはぁ……この変態どもが」
「ごほっ、ごほっ……。気色悪いんだよ……あと………」
「「俺たち、勇者の盾をなめるなよ!!」」
漢たちが吠えた!!
本日もデビダンを最後まで読んでいただきありがとうございます(´ω`*)
では最後に声優の千葉先生のように次回予告を。
次回予告
宿命の阿吽の中に光を求め、ダンジョン内でバトルを繰り広げる、あっ! 男たちがいたぁぁぁぁ~~~!!
次回、デビダンっ!!
天を覆う暗黒の星ぃぃぃぃーー!!死闘の果てに乱世は動く!!!
くらえっ、芭蕉羅漢十八衝!!!!!!
オカマの掟はあたしが守るっ!!




