第5話 ダンジョン拡張(勝手に)
8日振りに目が覚めた……。
自分でも引くくらい寝たと思う。だがしかし、俺は今魔族に生まれて初めて幸せを感じている。本当にこのベッドをダンジョンカタログに載せてくれた人には感謝だ。めっちゃ助かっています!!
さて、久しぶりにモニターでも確認するかなー……。
って、なんじゃこりぁぁぁ!?
僅か数日で、入り口からアリの巣のようにダンジョンが広がっていた。
え? はっ? まじで? ゴブリンさんたち頑張り過ぎじゃね? 通路だけじゃなく十畳間くらいの小部屋も三つできてるし。
どんだけ働くんだよお前らっ!! もっとサボっていいのに。
ダンジョンコアを見ると【魔素4650】と表示されていた。おぉー、すげー溜まったな。とりあえず送信っと……。うむ、めっちゃ仕事した。
さてと、とりあえずゴブリダの所へと行くか。まずは事情を聞こう。俺はダンジョンマスター限定の迷宮魔法【ダンジョン内転移】を利用し、大部屋へと舞い降りた。
――転移っ!!
⌘
「あ……主様ぁー! ははっーー!!」
俺が大部屋へと現れた瞬間、ゴブリダを筆頭にゴブリンたちが一斉に土下座をし始めた。
え? ナニコレ? ナニコレ? 新しい宗教??
「おい、ゴブリダ。そういうのいいから顔上げろって」
「はい、ありがとうございます」
「しばらく見ない間に通路や部屋が増えたな」
「もっ……申し訳ございません!!」
「いやいや、褒めてるんだって! そんな額を地面に擦りつけるな。おでこが擦り下ろされるぞ!?」
「あ……有難き幸せっ!!!」
イマイチ会話が噛み合わんな。ふと辺りを見渡すとやけにゴブリンが多い。それになんかちっちゃいのがいる。
「なぁ、ゴブリダ。お前ら人数増えた?」
「はっ……はいっ! 集落が安定し落ち着いたので三日前に12人子供を産ませました!」
多いな! つか、そんな子供ってそんなポンポンできるもんだっけ? まぁ、いいや。
「そうか、何よりだな。何か困ったことはないか?」
「おぉ……我々のような者にもお気遣いいただけるとは。不肖ゴブリダ、涙で顔を上げられませぬ」
「いや、上げろよ! そのくだりいらないからっ!! とりあえずゴブリダから見て何か問題点はないのか?」
「しっ、失礼致しました!! そうですね……、もし主様さえよろしければ入り口から真っ直ぐ延びたこの通路を塞いでもよろしいでしょうか? いくつかの通路がこの部屋に開通しましたので、正面から延びたこの道は危険にございます。」
ふむ、確かにそうだな。ダンジョンコア使って通路を消すか。DPも消費しないし後でやろう。
「わかった。それはこちらでやろう。今よりこの通路の使用は禁止だ。いいな?」
「「「ははっーー」」」
なんかこいつら面倒くさいな。悪い奴らじゃないんだけど、いちいち指示する度に大袈裟過ぎるだろ? つか、こいつらよく見たら身体中キズだらけじゃないか。よその魔物と戦ったのだろうか?
「なぁ、ゴブリダ。なんでお前らそんなキズだらけなんだ?」
「はい、これは食料となる獲物を追いかけていると木の枝に引っ掛けたり、相手の反撃に遭ったりでキズを負ってしまいまして。まだまだ我らの努力不足でございます」
いや、服を着ろ!! バカかっ!? 努力不足以前に腰蓑1つじゃんっ!! そりゃ怪我するだろう。なぜ、服を作らない!? いや、もしかして作れないのか?
そういえばDPカタログに錬金用の釜が売ってたな。
……仕方ない。今回こいつら頑張ったからご褒美として何か装備を作ってやろう。とりあえず部屋に戻るか。
——転移っ!!
さてと、カタログー、カタログっと。ペラペラとカタログをめくっているとダンジョンコアにメールが届く。
——(魔界LINEです!)
【魔素の送信お疲れ様です。魔素送信の合計が5000Pを超えましたので初回特典として10000DPを進呈致します。引き続き頑張ってください】
うぉぉぉぉぉ!! まじでっ!? 一万Pも貰えんのっ!? めっちゃ太っ腹じゃないっすかー!! 錬金釜が【1000P】だから余裕で買える。ゴブリダたち喜ぶぞー。
さて、カタログナンバーを入れ……。ふと、カタログの次のページが目に入った。
【貴方のダンジョンに錬金室はいかがですか? この部屋さえあれば、装備、衣類、ポーションなんてお茶の子さいさいで製作できます。もちろん魔具もOK! 素人さんでも使いやすいアシスト機能付き! 今なら購入特典として武器庫もセットで販売しています(DP5000)】
これだぁぁぁぁぁ!! いいじゃん、いいじゃん。武器庫セットとか滅茶苦茶お得じゃね? DPも入ったことだし購入決定♪
――ポチっとな。
さて、部屋の場所はどうすっかな。とりあえずマスタールーム入口の両脇に向かい合わせに設置するか。気に入らなれば後で移動もできるし。……よし、設置っと!
マスタールームから出ると錬金室と武器庫が出来上がっていた。まずは錬金室から入ってみるか。
部屋へ入ると魔学の化学室みたいな感じだった。部屋の中央に巨大錬金窯、各種素材棚(ダンジョンインベントリー連動)、テーブルや椅子といった家具が配置されている。よし、せっかくだし何か作ってみるか。あいつら木の槍使ってるから、せめて鉄の槍でも装備させてやろう。確かあいつら鉄鉱石とか採掘してたよな……ガサゴソガサゴソ。
実に1年ぶりの錬金だ。学生時代に錬金にハマり、【錬金釜ぶち込み同好会】まで発足したほどだ。やりすぎて錬金室を爆破し出禁になるまで続けた俺の青春。懐かしいな……錬金室を爆破した時のミノタウロス先生の顔といったら……くっくっく。はっ……いかんいかん。集中せねば。久しぶりだから上手くできるかな? えーっと、鉄鉱石と角材を入れて、俺の魔力少々……オラァァァァァ!!
――ボボボボンっ!!
【鉄の短槍が出来上がりました。武器庫へと収納しますか?】
おっ、うまくいったな! しかもあの武器庫って自動収納機能付いてるんだ。へぇー、便利じゃん。じゃあ、収納っと。さてと、次にあいつらの防具でも作るか。鉄だと重いから革だな。素材素材っと。あいつらの食べ残しでいっか!
そして俺は半日かけて鉄の短槍30本、鉄の斧10本、鉄の剣10本、鉄の短剣30本、革の鎧40個、革のブーツ40足を作成した。マジで地上に来てから一番仕事した。若干、凝り性な性格なので全てに俺の紋章(翼の生えた悪魔)を刻印した。
うむ、上出来、上出来。さて、ゴブリダたちを呼ぶか。
⌘
「あっ……主様……。ほっ……本当にこのような物を受け賜り、わ……我々ぇ……われわれぇぇぇぇ……うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんん!!」
ゴブリダが男泣きしたぁーー!! そして泣き方が汚ねぇ!! 鼻水が水あめのようになってるし!!
「とりあえず、この装備を好きに使っていいから怪我のないよう気を付けてくれ」
「あっ……ありっ……ありが……うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!」
「なっ……泣くな!! ダンジョンを広くしてくれたお礼だから!! また頑張ってくれたら作るから頼むよ!」
「ヴぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!!」
……駄目だ。会話にならん。しかし感謝されるのも偶にはいいな。ゴブリダたちに有効活用してもらおう。