第49話 城塞都市ウィンクード
お待たせいたしました。
3章開始です。
「マスター、朝ですよー。そろそろ起きてくださーい」
「うーん……あと10分~」
「……もうっ!! マスター、いい加減に起きないと朝から吸精しちゃいますよっ!!」
「それは勘弁してください!」
俺はベッドから飛び起きダッシュで洗面所へと逃げていった。リリーナのジト目が痛い。
だって仕方ないでしょ? 昨日もあれだけ絞り取られたのだから……。
もうどうしてこーなったのか覚えてないが、リリーナが俺の正妻となって早三か月。俺は毎晩毎晩と彼女たちに襲われ続けている。主犯はリリーナ、エリー、マリアンヌだ。
リリーナは進化してからというもの、あのじゃじゃ馬な性格が少し落ちつき優しくなった……と思う。それでもたまに鉄拳制裁はあるが。そして容姿も美少女から美女へと変貌し、不覚にもこの俺がドキっとする場面がある。……解せぬ。
それに比べエリーは相変わらずのチビだ。そろそろ家に帰れよと思いつつ既に数ヶ月……。恐る恐るリリーナを通して本部にチクリを入れたのだが、問題ないので預かってくださいと言われた。なぜだー!? 神様そんな扱いでいいの? ……解せぬ。
そして最後はマリアンヌ。彼女、夜だけあの厚化粧をやめたのだ。するとビックリ、めっちゃ清楚な爆乳お姉さんが爆誕した。しかも化粧をとると、あの高飛車な性格ではなくて、お淑やかお姫様キャラに変貌するという謎のオプション付き。どうやら元の性格はお淑やかお姫様の方らしい。弱い自分を隠したくて厚化粧をして誤魔化していたようだ。一度で二度おいしい……のか? ……解せぬ。
今では左にリリーナ、右にマリアンヌ、身体の上にエリーと謎のフォーメーションまで確立し四人で寝ている。起きている時よりも寝る方が疲れるってどういうことだろうか? ……解せぬ。
⌘
そして先日、なんとミッチーが騎士爵から小貴族の男爵へと陞爵した。
なんでも開拓村の短期発展と、高位悪魔将が住むダンジョンを抑えたのが陞爵の理由らしい。
そのことを朝からミッチーが謁見の間へと報告にきていた。
最近のミッチーは、バリバリ働きまくってて俺も会うのは久しぶりなんだよな。ウィンクードの街もちょっとした城塞都市と化し、今では立派な城壁が街を囲んでいる。
そして、街の中央にそびえ立つミッチーの居城。
その名も『ウィンクード城』。
なんでも俺の城を見てたら、自分も城に住みたくなったんだってさ。自分の持てる魔法や技術、全てを駆使して、寝る間も惜しんで三週間で建てやがった。やり過ぎだろ?
ちなみにこの城、以前ミッチーがいた世界の『チバ』というところにある城がモチーフらしい。俺の城と比べると小さな城だがセンスが良くフォルムも綺麗だ。
そしてウィンクードの街も、人口があっという間に3000人を超え、その勢いはとどまることを知らない。ほぼ商人と奴隷なのだがそれでも凄い。ついた二つ名は【夢の街ウィンクード】。税収が右肩上がりで笑いがとまらないんだってさ。そういう俺も一日で回収できる魔素の量が6000ほどあるので笑いが止まりません! DP変換したら、デイリーで3000DPだぜ? ミッチー様々だ!
こうして、異例の新人男爵だけど城住まいという、他の小貴族たちが嫉妬に狂いそうな肩書きをミッチーは手に入れた。
話の最後、ミッチーにリリーナが嫁になったと報告をしたら血の涙を流し「クソがっ! 爆発しろ!!」とよくわからない呪文詠唱をされた。
その後、なぜかめっちゃ羨ましがられたが。つかミッチーって、そんなにリリーナのことが好きだったのか? なんかすまんな。
⌘
ミッチーが四つん這いになり、謁見の間の床をドンドンと叩くこと五分。
ようやく彼は落ちついたようで、スッ……と立ち上がる。
「ヨルシアさん、すんません。取り乱してしまいました」
「いや、いいけどさ。つかミッチーってリリーナのこと好きだったの?」
隣に立ってるリリーナがなんてこと聞くの!?と言った驚愕の表情で俺を見てくる。
いや、気になっただけたしそう睨むなよ。
「いえ、リリーナ様がというわけではないんですけど、サキュバスの嫁は俺の夢というか、野望というか、希望と言いますか、とにかく生きる原動力だったんすよ!」
ミッチーの偏り過ぎな種族愛がヤバい。リリーナさんガチで引いてるし。
「いつかはサキュバスと言いますか、転生したらまずはサキュバスと言いますか、とにかく俺サキュバスが好きなんすよ!!」
うん、ミッチーそろそろ黙ろうか?
もう彼の発言が狂気に近い。オペレーター席にまだサキュバス10人いるぜって言ったらストーカーにでもなりそうだな。申し訳ないが秘密にしておこう。
「ミッチー、君のサキュバス愛はわかった。いつかミッチーのことを好きになってくれるサキュバスが現れるといいな(白目)」
「はいっ!!」
遠い目をしながらミッチーに語りかけると嬉しそうに帰っていった。彼のハーレムルートに幸あれ。
「マスター、あんなこと急に言わないでください!」
「あんなこと?」
「ミチオさんが私のこと好きかってことです!」
「は? なんで?」
「えっ!? だって…、マスターは私が他の男性にとられてもいいんですか?」
リリーナが顔を真っ赤にしながらクネクネと身体を捻る。俗に言うNTRという奴か。リリーナが他の男にねぇ。
なにそれ? エッロ!! だが、やはり嫌だ!!
なんだ、この未だかつて味わったことのない気持ちは!? 違う、断じて俺は変態ではないっ!!
それにここで肯定でもしたら、きっと謁見の間に血の雨が降るだろう。だから俺は言わない。
「いや、ダメに決まってんだろ? それに……」
「それに?」
「他の男がリリーナの鉄拳に怯えるだろ? ただでさえ握力ゴリラなんだからさ。つか、それに耐えられるのなんて俺くらいじゃねぇか?」
「…………ゴリラ?」
そして謁見の間に血の雨が降り注いだ。
⌘
リリーナさんの鉄拳制裁が終わりマスタールームへと移動した。
「のう? ヨルシア、お主顔の形が変わっておらぬか? 今度は何をやらかしたのじゃ?」
「いや、ちょっとですね……」
「夫婦喧嘩ですっ!!」
まだリリーナがプリプリしてる。そんなに怒らなくてもいいのに。
リリーナさん進化して強くなったから、そこそこダメージ入るんだよな。自己再生が追いつかない。
「まぁ、ヨルシア様!? なんてお姿に!? 大変っ!! ……来なさい白薔薇っ!!」
マリア(マリアンヌの通称)がそう言うと、床に魔法陣が浮かび上がり、そこから白炎で形成された荊の蔓が俺に向かって伸びてきた。
すると目の前で白い炎の薔薇が咲き、ポワッ……とした暖かい光が俺の顔を包み込む。
うわー、あったけー。
何これ? めっちゃ気持ちいいんですけど?
しかも薔薇の良い香りがして癒されるぅー。
みるみる俺の腫れた顔が元通りになり痛みも引いていった。
これ回復魔法だったのか。すげぇー!? マリアが女神に見える。
「リリーナさんっ!! 少しは手加減されたらどうですの! ヨルシア様に万が一があったらどうするつもりですか! あっ……、でもそれはそれで付きっ切りで看病ができますわね。 リリーナさん!! なぜもっとぐちゃぐちゃにされませんでしたの!?」
……前言撤回。
なぜ言い直した? 実はマリアもポンコツなのか? つか、ぐちゃぐちゃって。死ぬ一歩手前ですやん。
「マリア、あなた付きっ切りで看病しようと考えてるけど無駄よ! 私も進化してから回復スキル使えるようになったから。一人でマスターの看病なんてさせないわ!」
「ぐぬぬぬ……、そうでしたわね。いいでしょう! ならばリリーナさん勝負よ! どちらがよりヨルシア様を治せるかを! ヨルシア様、申し訳ありませんが、もう一度ボコボコになっていただけませんでしょうか?」
「ならねぇーよ!! つか、お前ら狂ってんなっ!! サイコか!?」
本当にウチのチーム女子は恐ろしい。サラッとキツいこと言ってくるからなぁ。
「つか、そろそろ本題を話していいか?」
「本題? なにかあったんですか?」
リリーナが首を傾げて聞き返してきた。
「ミッチーの話だと、今日からウィンクードの街で三日間お祭りをやるらしい。ミッチーの陞爵祝いの祝祭が開かれる。そして、ここからが非常に重要だ。……俺は魔族人生の中で、お祭りというものを経験したことが一度もない」
そう、魔界には人族たちのように楽しそうな祭りがないのだ。もっと、こうドロドロとした派閥争いが絡んだものしかない。怖い人たちがたくさんいて、抗争という名の祭りが毎年開催される。
「そこでだ! どーしても俺はこのお祭りというものに参加してみたい!! だからリリーナ……。幻術をかけて俺を人族に見せ……「アホかぁぁぁぁーー!?」」
話の途中だったのだが、リリーナさんの黄金の右が治ったばかりの俺の顔面を直撃する。
あーぁ、いいのもらっちまったな……。
ふっ、立ち上がることすらできんとは……。思わず白目で痙攣してしまう。
それにしてもひどくないか? ただお祭りに行きたいって言っただけなのに。
そして俺の意識は久しぶりにブラックアウトした。
誤字訂正をしていただける神様。
本当にありがとうございます。自分の未熟さが身に沁みます。
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これからも通勤・通学のお供に読んでいただければ幸いです。
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