第4話 初めてのダンジョン改築
ゴブリンたちが住み着き3日が経った。
大部屋に草木を使った彼らの家なども続々とできてきた。なんつーか、すげーワイルドな家だ。超DIY。もっと綺麗に作ればいいのに……。でも彼らが満足してるならいっか。
俺はというと、ずっとソファーに座りイビキをかきながら寝ていた。悪魔は特に食事を必要としないので本当に3日間ずっと寝ていただけだ。だが、そろそろ風呂に入りたいな……。リフレッシュの魔法で清潔を保てるのだが、やはりそれとこれとは別で気分転換に風呂には入りたい。
よし、そろそろダンジョンコアに溜まった魔素を魔界に送ってみるか。ダンジョンコアを見てみると、【魔素1250】と表示されている。
中々、魔素濃度の濃い土地だな。ダンジョンコアが土地に馴染んでいないのにこの回収量……。馴染んだらどれほどの量の魔素が回収できるのだろう?
だから、この地域はダンジョンが乱立し冒険者達がやってくる激戦区となっているのだろうか? 俺もここに座ってるだけで、常に腹一杯だもんなぁ。地上スゲー。まぁ、いいや。……送信っと。いやー、仕事したなぁー。これでまた3日後くらいに魔素を送信しよう。さぁて、おやすみっと。
——(魔界LINEです!)
どこか聞き覚えのある機械音声で目が覚める。
誰だよっ!? せっかく寝かかってたのに……。ちょっと不機嫌になりつつもダンジョンコアに届いたメールを確認する。
【魔素の送信お疲れ様です。魔素送信の合計が1000Pを超えましたので、初回特典として3000DPを進呈致します。引き続き頑張ってください。】
あぁ、忘れてた。そういえば魔素と引き換えに、ダンジョン改築用のDPがもらえるんだったな。まぁ、タダでもらえたしせっかくだから使ってみるか。
俺はダンジョン改築カタログを見ながらまずは風呂を探した。おっ、あったあった! マスタールーム改築。風呂は100P、大浴場は1000Pで作れるようだな。しかもサウナ付き。いいねぇー。俺はダンジョンコアにカタログナンバーを入力する。もちろん大浴場一択だ!!
するとマスタールームの一角が光り輝き扉が出現した。でけたー!! 風呂だー!! 俺はその扉をバンっと開けるとそこは魔界リゾートスパのような大浴場となっていた。
いいね、いいね! お風呂も各種一通り揃ってるじゃない! 大理石ジャグジーも素敵。おっ、サウナも広いな。浴場の一番奥に扉があったので、開けてみるとそこは露天風呂だった。もちろん本当に外に出ているわけではなく、壁に天候投影がされているだけだが、俺にはそれで十分だった。なんて贅沢品。よし、せっかくだから入るかー! 3日振りの風呂だぜー! ひゃふぅー!!
⌘
俺は部屋着に着替えてマスタールームのソファーでグダグダになっていた。
えっ? 感想? ……最っ高に決まってんだろうが!! もうダンジョンって素晴らしいね。究極の癒し空間だわ。身体がサッパリしたせいか、再び眠くなってきた。つか、久しぶりにベッドで寝たいなぁ……。
……って、作ればいいじゃん!! カタログ、カタログ……っと。えーと、寝室は……あったあった! これは500Pでできるのか。よし、作成っと……。すると大浴場ができたようにマスタールームに扉がもう一つ出現した。
室内へ入ると天蓋付きの巨大なベッドが部屋の中央に設置されていた。おぉ、いいねー。布団もフカフカ。ソファーも悪くなかったが、これはそれ以上に良く眠れそうだ。俺は3日振りにベッドで就寝した。おやすみなさーい……すやぁー。
⌘
目が覚めてマスタールームのモニターを確認しに来ると5日も経過していた。
な……ん……だと……。俺に戦慄が走る。
なんて恐ろしい布団なのだ!! 俺を5日も拘束するなんて……。こんな布団こうしてやる! こうしてやる!
そう言いながら再びベッドへと潜り込んだ。そして更に2日が経過した。
いっ……いかんよぉ……コレぇぇ!? めっちゃ寝れる!! 睡眠欲を駆り立てるアビリティでも付いてんのか?? さすがに1週間も寝っぱなしは不味い。少し身体をマスタールームでラジオ体操しながらほぐしてると外に通じるドアからコンコンとノックされた。
えっ? 誰? セールスマン? うちセールスお断りなんですけど……。
俺は指をパチンと鳴らし服を着替え、恐る恐る出てみるとそこには緑色のおっさんがいた。
「おぉ、主様!! 何度も何度もお呼びだてしまして申し訳ございません」
あっ、何度も呼んでくれたの? すまん寝てて全然気付かなかったわ。
「どうしたの?」
「はい。ご覧の通り、集落がある程度形になってまいりましたので、そのご報告と一点相談がございまして……」
「あぁ、それはご苦労さん。で、相談とは?」
「この主様のダンジョンですが、入り口から真っ直ぐ来るだけで、この大部屋と主様がいらっしゃるマスタールームまでたどり着けてしまいます」
うむ、確かに!! だが、冒険者は来ないものと想定してる。
「そこで主様さえよろしければ、我々でこのダンジョンの拡張を行わせていただけないでしょうか?」
「えっ? ダンジョン作ってくれんの?」
「はいっ!! 主様さえよければ是非やらせてください!!」
おぉ……なんて働き者なゴブリンたちなのだろうか。俺とは完全に対照的だ。
そういえば貧乏なダンジョンマスター用の掘削ツールがカタログにあったな。自らダンジョンを掘削してその土砂などを魔素に還元するアイテム。あった、あった。ダンジョンツルハシとダンジョンスコップ。えーっと……ダンジョンポイントは20Pか。って、安ぅ!! 俺は早速カタログで10本づつ取り寄せてそれをゴブリンたちに渡した。
「掘るならこれで掘ってね。そうすれば土砂や出てきた素材はダンジョンインベントリーに自動的に収納されるからさ。説明書によると固い岩もこのツルハシなら壊せるんだって」
「おぉ!! 主様、ありがとうございます!! 我らにこのようなアイテムを下賜頂けるとは……。恐悦至極にございます」
「ところで、いまさらなんだけどお前がここの族長なのか?」
「いえ、そうではありませんが前の長が冒険者の襲撃でやられましたもので、私が勝手にまとめておるだけでございます」
「そうか、じゃっ、君は今日から族長ね。ダンジョンの拡張とかは君に一任するから頼むよ。そういえば名前はあるのか?」
「いえ、名などございません。族長を任せていただけただけでも光栄にございます」
「じゃあ、呼ぶ時面倒くさいから、今日からゴブリダと名乗ってね。じゃ、そういうことで!」
「おぉ……主様には……」
——バタンっ!!
何かゴブリダが言おうとしてたけど、面倒くさかったのでドアを閉めて強制的に会話を終わらした。
さて、確かにゴブリダの言う通り直線ではマズイな。とりあえずこの大部屋とマスタールームも少し離すか。
【ダンジョン通路作成。10メートル/100P。】
高っ!! ぼったくりじゃね? でも背に腹は代えられんしな……。とりあえず100メートルばかしマスタールームと大部屋の間に通路を作るか。……ポチっとな。
ゴゴゴゴッ……。ガコン!ッ!
外で岩が動く音がした。モニターでマップを確認すると大部屋とマスタールームの間に通路ができていた。よし、後はゴブリダたちに任せよう。DPが残り100Pになってしまったが、もう俺の欲しい物は揃ったので特に気にしない。そう、後悔はない!
それにしても久しぶりに仕事したな!! あー、疲れた。さぁて、風呂にでも入ってゆっくりしますかー! ひゃふぅー!! ダンジョンライフ最高!