第44話 告死の不死王
――「告死の不死王」
古来、不死者とは魔道を極めんとする人族が、闇を魅入り魔族へと堕ちるのだが、告死の不死王は闇に選ばれし者が、新たに生まれ変わり真祖系の魔族へと転生する。
その力は巨大で何千という魔法を使いこなす魔道を極めし者。特に死霊術に長け、一人で何万もの軍隊を相手に戦えるほどだ。過去には一人で十万もの大軍を相手どった者もいる。
そしてその身を破壊されても、自身の魔力が尽きない限り復活するというタフさ。
ついた名が【告死の不死王】。
これはかつて億千万死の魔王として君臨した初代告死の不死王に付けられた二つ名が位階として確立された事例である。
告死の不死王はダンジョンを持たない。その名を聞けば冒険者など来ないから。
告死の不死王は配下を持たない。戦場でいくらでも手に入るから。
不告の不死王は誰も恐れない。それは自分が最強だと知っているから。
そして当時最強と呼ばれる勇者と相打ちになってから1200年……。
千年の時を経て、再びその告死の不死王は復活した。
異世界人の心を宿して……。
⌘
「ヨルシア……、お主はなんという奴を蘇らせたのじゃ」
「はぁ? あれスケルトンじゃねーの? どっからどうみてもスケルトンなんだけれども? もしくは化学室に置いてある標本。あっ、それもスケルトンだったわ。たまに入れ替わってるよね?」
「………」
……んっ?
リリーナさんからのツッコミが来ないだと!? おいおいボケ殺しか? そんなあるある、あるかーってツッコまないと。
ふとリリーナさんを見ると声も出せないほど驚愕していた。
「リリーナ。……おい、リリーナ!! 聞こえてないのか? リリーナ!!」
「はっ、はい!!」
やっと返事した。
まったく、二人ともどうしたと言うのか。
ちなみにこの間イセカイジンほったらかし。自分の身体をマジマジと見ていた。
やっべ……。
なんて言い訳しよう? いきなり自分の身体が骨だけになっちゃってんもんな。何か話しかけてやらねば。
「いっ……イセカイジン、気分はどうだ?」
「ちっ……ちっ……」
『ち』がどうした? まさか……。やっぱり彼の思っていた姿と違ったのだろか?
やっべぇぇ……。やっちゃった感じ?? もはや大クレームの予感しかしねぇ……。今更ながらこれってクーリングオフとかできないの? つか、だって俺もこんなことになるとは思わねーし!! 骨だけになるんなら始めから書いておけよな! 腕輪を嵌めたら骨になりますって。 これ、謝って許してもらえるのだろうか?
とっ……とりあえず、粘土で肉付けを……。
俺が、冷や汗ダラダラでテンパってると、イセカイジンが突如咆哮をあげた。
「チートきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
え? チート? チートきたの?
うわっ、めっちゃ嬉しそうにガッツポーズしてるし。つか、骨しかないけど大丈夫? けどまぁ、彼が嬉しそうだからいっか。
エリーとリリーナは何故かドン引きしながらヒソヒソ話してる。
こっちは無視かーーい!?
とりあえず彼の話を聞くか。 やれやれ、ほんとチートがあって良かったぜ。
⌘
「いやぁー、ミッチーめっちゃ大変だったんだな。つか、国王も酷くね? 強制召喚したなら最後まで面倒見ろってな!」
「そうですよ! あいつ次会ったらマジでボコります!! それにしてもヨルシアさん凄いっすね。たった数ヶ月で有名ダンジョンの仲間入りですもんね!」
「あっ、そうなの? ここ有名なの?」
「王国ではめっちゃ有名ですよ! 魔鉱石の発掘ダンジョンとしてですけど。でもヨルシアさんほんと凄いっすよ?」
「そうなんだー。でも俺さ、ここだけの話なんだけど実は働きたくねぇんだわ。ホントは引き籠りたいのよ。それなのに冒険者は攻めてくるわ、騎士団は来るわ、極めつけは目の前に街できてるし。だから領主呼びつけてクレーム言おうとしたら、キミうちのダンジョンの一員になっちゃったからさ言えないじゃん?」
「ヨルシアさん! さーせんっ、マジさーせんっ!! ちょっと、ケジメつけさせてもらってもいいっすか?」
そう言うとミッチーは自分の頭蓋骨を外し壁にガンガン投げつけた。
まさかの一人キャッチボール!? なかなか斬新なケジメの取り方だな。これが異文化交流か。
「いやいやいや、ミッチーそんなことしなくていーよ!! それに……ミッチーはもう俺たちの仲間だろ?」
「……ヨルシアさん」
俺はタナカ・ミチオことミッチーと、たった数分ですっかり仲良くなってしまった。話してみると案外良い奴で、なんかこう、彼とは波長が合うんだよなー。
「じゃあ俺、ヨルシアさんが立派なNEETになれるように、地上で頑張って冒険者たちを牽制しますんで安心して引き籠っててください!! 勇者も俺がボコりますんで大丈夫っす!!」
なっ……なんて素晴らしい男なんだろう!!
俺が引き籠れるよう頑張ってくれるなんて……マジでいい奴!! 最近、働きづめで心が折れかけていたけどミッチーの言葉でなんかやる気が出てきた!!
「ミッチー……俺、頑張るよ!! 頑張って立派なNEETになるからさ応援しててくれよ!! ミッチーのためにも絶対働かないから!! 俺、負けな……」
「アホかぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
―――ズドォォォォォォォォォン!!!
不意打ち気味にリリーナさんからの上段廻し蹴りを側頭部に喰らった。
しかもただの蹴りではない。恐ろしい速さの旋風脚で、俺が一撃目で吹っ飛ぶ前に二撃目を叩き込むという、まさかの神業だ。
え? 俺の状態? ふふっ……、絶好調で城の壁に突き刺さってますよ? もう慣れっこっすわ。
「いいですかマスター? 次、NEETになりたいなんて口にだしたら、このコンボを100連で叩き込みますからね?」
うん。もう二度とリリーナの前でNEETになるって言うのはやめよう。リリーナのやつ本気だ。
ふとミッチーの方を見ると案の定ガクブルっていた。
……ミッチー、その気持ちわかるわー。だからウチのリリーナだけは怒らせないでね。
⌘
「全く!! 少し目を離したらこれなんですから!!」
リリーナがプリプリと怒っていた。俺がリリーナに怒られない日はない。正直、毎日のログインボーナスのようなものだ。嬉しくないけど。
「では、ミチオさん。改めて自己紹介をさせていただきます。私がこのダンジョンのサブマスターのリリーナです。そして、こちらが魔界の神であらせられる暗黒神エルアリリー・サタニエル様です」
「ミチオとやら。良きに計らえ」
すると何かのスイッチが入ったようにミッチーが豹変した。
「うぉぉぉぉぉ!? リリーナさん、サキュバスっすよね、サキュバスっすよね? しかも隣の萌え幼女も最っっ高!! 魔族に転生してよかったぁーーー!! 地球のみんな聞こえてるかぁぁー!? 俺は……俺は二人の神に出会ったぞぉぉーー!!」
骸骨がよくわからないことを大声で叫んでいた。ミッチーも実は真性の変態なのだろうか?
「まっ……マスター。私、ちょっとあの人苦手です。生理的に……」
「わっ……妾も悪寒が走る。こんな気持ち初めてじゃ……」
Oh、ミッチー。女性陣の好感度マイナスからのスタートだぜ。
「まぁ、ミッチー落ち着けって。まずはミッチーのステータス見せてくれよ」
「ヨルシアさん、さーせん!! ちょっと待ってください。えっーと……ステータスオープン!!」
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名前:ミチオ・T・ウィンクード
称号:召喚されし者/転生者/新米領主/億千万死の魔王
種族:不死族
位階:告死の不死王(Aクラス)
保有魔力量:289680
魔王スキル
魔王覇気
固有スキル
彩色の邪眼
特別種族スキル
不死の理/無慈悲なる告死
種族スキル
恐慌・隷属
スキル
人化/霊化/錬金・錬成/物理攻撃無効
特別魔法素質
死霊/腐蝕
魔法素質
爆炎・煉獄/水氷雪・零凍/風塵・雷陣/土岩鋼・流砂/重力/空間/結界/幻惑/邪呪/封印/召喚/深淵/鑑定/生活
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あれ? ミッチー、称号すでに魔王なの? つか、おれより強いじゃん? それに魔法素質がおかしなことになっている。やっぱりミッチーにダンジョン運営任せようかな?
するとステータスを一緒に見ていたエリーが口を開く。
「ヨルシアよいか? お主は魔王を眷属にするという、未だかつてないことをしたのじゃ。しかも妾が魔王襲名の儀を執り行っていないにもかかわらずこやつは魔王の称号を所持しておる。聖女の神託に引っかからないとは言え間違いなく勇者や聖教会どもの最優先討伐対象者となるじゃろう。だから心せよ。お主はもうNEETになれぬ!」
NEETになれぬ………、NEETになれぬ……、NEETになれぬ……。
エリーに言われた死の宣告に近い言葉が俺の頭の中を駆け巡る。
え? NEETになれない?
そんな馬鹿な……。(白目)
ふふっ……いいだろう。その挑戦受け取った。
ヨルシアと書いて諦めの悪い男と読む!!
勇者? 聖教会? 知らねーよ!!
そんなことくらいで俺はNEETになることを諦めない!! もし、そいつらが俺の邪魔をするなら全力で叩き潰してやるっ!!
……そう、ミッチーがね!!




