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第42話 領主は異世界人

 領主の近辺調査を開始して三日が経った。

 やはりうちの斥候さんたちは物凄く優秀で、あっという間に領主を丸裸に調べ上げる。今日はその調査報告をリリーナが翻訳し、俺が分かりやすいよう資料にしてもらった。


 どうやらこの地へとやってきた領主はイセカイジンのようだ。この世界の王族どもに召喚され勇者として魔王を倒す存在。俺たち魔族にとっての天敵だ。

 そのスキルはどれも厄介な物ばかりで多くの魔王が犠牲になっている。そんな凶悪なイセカイジンがうちの近くで領主をやっている今日この頃……。



「りっ……リリーナさんっ!? これ、めっちゃヤバイよね!? ぉぉぉ、ぉお俺、討伐されちゃうじゃん!!」

「マスター、落ち着いてください! 報告書をよく読んでください!! 書いてある通り、今回やってきた異世界人は勇者ではありません」

「えっ!?」


 リリーナに言われた通り報告書をもう一度読み直す。

 あっ、本当だ。勇者ではないと記載されてる。俺、テヘペロ!

 いやぁーマジ焦ったー。勇者とやり合うなんて御免こうむる。


「マスター、安心するのはまだ早いですよ? ハズレ勇者だとしても異世界人の知識は、我々が想像できないような発想が多く、中には脅威になる物すらあります」


 イセカイの文明は、この世界の文明より進んでいるらしくどれも興味深い。カガクの力で弱小国家が大国へと軽く変貌するほどだ。

 だから魔王の中にはイセカイジンがもたらすカガクを脅威と見て、そういった研究をしている輩を徹底的に排除する軍団もあるくらいだ。イセカイジンは恐ろしいなー。


「しっかし、なんでイセカイジンがこんな辺境で領主なんてやってんだ?」

「理由は分かってませんが、建築技術やそのスピードは恐ろしく早いものがあります。その能力を国に買われたのかもしれませんね。このままの調子ですと人口もあっという間に1000人を超えてくるでしょう」

「はぁ!? 普通に小都市やん!? なんで? ここ辺境だよ? 人が来る意味が分かんない!!」

「はい、それも調査済みです。このダンジョンより採掘される魔鉱石ですが、市場に出回っている他の物よりも純度が高く高値にて取引きされるようです。それにより商人たちが奴隷を引き連れて多数押しかけ人口増加に繋がっています。さらにうちのダンジョンの採掘を目的とした傭兵部隊も多数確認したとの報告もあります。良かったですねマスター。たくさん仕事できますよ?」



 ふっ……ふざけんなぁぁぁぁ!! 全然、引き篭もれねぇーー!! つか、こいつら命よりも金なのか!? 狂ってんな人族ども!! みんなそんなに頑張って仕事するのやめよーや!! そんなのブラック過ぎるぞ!?



「しかしリリーナさん。マジでまいったわ……。どうしようかね?」

「マスター、何も難しく考える必要はありません。領主には特に主だった護衛などはいませんでした。接触しようと思えばいつでも接触できます」

「そーなの!?」

「危機感と言いますか、自分自身に関する防衛意識が低いような気がします。平和ボケしてる可能性がありますね。異世界人特有の欠点と言ったところでしょうか」


 ならば街に潜入するよりも、領主本人を攫った方がすんなりとことが進む感じだな。


「リリーナ、例えば夜に領主宅に侵入し、そのまま領主を拘束。そしてこのダンジョンまで攫うことは可能だと思うか?」

「問題ないかと。領主本人はさほど強くもありません。しかも町の守衛は門の出入口にしか配置されてませんので、パケロさんの忍衆ならすぐにダンジョンまで連れてくることができます」


 なるほどね。イセカイジンかー。勇者でないなら、一度話して見るのも面白そうだな。報告書の内容だとやり手っぽいし、俺より優秀ならこのダンジョンの管理もさせて、俺引き篭もれるんじゃね? 俺、天才かっ!?


 もしかしたらそのイセカイジンとの謁見が上手くいって、腕輪を使わず俺の配下になってくれる可能性もある。そうしたら俺のスキルの【契約】で眷属にさせてもよし、失敗しても呪いの腕輪を装備させて魔族堕ちさせてもよし、どちらに転んでも特に問題はないな。


「リリーナ。ケロ君に領主を攫って俺の前にまで連れてくる緊急ミッションを出してくれ」

「かしこまりました」


 よぉーし! じゃあサクっと領主さん攫って話を聞いてみますか!





《その日の夜》



「おーい、リリーナ、エリー。もう寝るぞー! 早く布団に入れー」


 鏡台の前でリリーナがエリーの長い髪を(くし)()いていた。

 髪の長い女子は毎日大変だなー。ニ人とも髪が腰まであるからブラッシングにすっげぇ時間掛かっている。先に寝てもいいのだが、エリーが眠りに入った俺の上に跳びかかってくるので、最近はそれを防ぐために極力起きているようにしてるのだ。


「はいっ、エリー様。終わりましたよー」

「リリーナ、いつもありがとうなのじゃ。さてと……ヨルシア!! おりゃぁーー!!」


 まぁ、結局こうして跳びかかってくるのだが……。つか……おいこら、リリーナ。羨ましそうな顔で見るんじゃない。お前は肉食獣っぽくて怖ぇーんだよ! リリーナが渋々、俺の隣へと潜り込んでくる。


 ふぅ……、今日も無事に一日が終わったな。

 生きてるって素晴らしいー!! さて、おやす……



【緊急連絡メールです。緊急連絡メールです】



 寝ようとした矢先、よくわからんアラートが部屋に鳴り響く。

 するとリリーナがダッシュでメールを確認しに行った。


 やれやれ、もう眠いんだが?


 リリーナさんに任せて俺は寝てもいいよね? いや、いいはずだ。だってもう今日の仕事は終わってるからね! さて、おやす……。


「マスター大変です!! パケロさんから緊急通信が入りました。どうやら領主を確保しダンジョン入口まで連れてきたみたいです! すぐ謁見の準備をしてください!!」


 うそーーーん(白目)。


 俺、たった今寝ようとしたところだよ? つか、ケロ君仕事早すぎ!!

 いや、良いことなんだけれども……良いことなんだけれどもね。しかし、なんだこの言いようがないような怒りは!? くそぉぉぉぉ!!!!


 俺は若干、不機嫌になりながらも謁見の間へと移動した。







 玉座に座っていると、目の前の扉が開かれる。

 ちなみに俺のすぐ隣にはリリーナが、膝の上にはエリーが座ってる状態だ。


 はっ? ロリコン?


 おい、ふざけんな。神様を横で立たせるわけにもいかないだろ? しかも玉座は一人用だし、苦肉の策で膝の上だ。

 おい、リリーナ? 次は私みたいな顔をするんじゃねぇ!! 何度も言うがこれは一人用だ。


 そしてケロ君と忍衆に連れられ、簀巻きにされた人族が歩いてくる。パッと見、怪我もないようだ。さすがはケロ君。安心のプロの技。

 しかし、すんなり寝られなかったせいで俺の機嫌はすこぶる悪い。

 いや、ケロ君たちのせいじゃないから、そんなに恐縮しないでね。ケロ君たちがビクビクしながら横に整列する。


 さて、領主はどんな奴だろう?


 領主を見るとプルプルとめっちゃ震えていた。

 口が削岩機のようにカチカチ言ってるし。

 えっ? 小動物? つか、チワワですか? 震えすぎじゃね? まだ、何も話してないんですけど。

 何もしてないけど、何故かすでに死にそうな気配……。とりあえず俺から話しかけるか。



「よく来たイセカイジン。俺がこのダンジョンの主、ヨルシアだ」

「…………」


 ……イセカイジンからの返事はない。ただの屍のようだ。


 って、おい!! ノリツッコミさせんなよ。

 それに俺、名乗ったのにガン無視か!? 人としてそれはあかんでしょ? 名乗ったら、名乗り返さなきゃ? 常識やん!!

 すると、みかねたリリーナが口を開く。


「貴様っ、マスターが名乗ったのだ!! 貴様も名乗り返すのが礼儀ではないのかっ!! この痴れ者めっ!!」



――ジャキンッ!!!



 あっ、リリーナがジャキン(爪を伸ばす)しやがった。

 おいおい、ガチギレですやん……。でも、リリーナさん、それは逆効果ですって。ほら、イセカイジンもう泣きそうだし。なんかあんな怯え方されると逆に可哀想になってきた。


「リリーナやめろ。……イセカイジン、名を聞こう」


 俺がリリーナを片手で制し、イセカイジンに優しく問いかけてみた。

 これでガン無視されたら、有無を言わさず殴ろう。


「たたたたた……たっ、たなか、たなか、みっ……みちおですっ!!」


 え? なんて?


 恐ろしいほどのカミカミで自己紹介された。ちょっと待て。

 『タタタタナカタナカミミチオ』でいいのか?

 なんかタの数が若干違うような気がする。つか、そもそもこの前の会議で表示されていた名前と全然違うような気が……。

 あっれー? こんなんダッケカナー!? 聞き直すのも失礼な気がするし……。


 それにしても自己紹介だけで、俺の心を乱すとはさすがイセカイジン!! やるな!!

 こうしてイセカイジンとの謁見が始まった。


 

紅葉見に行くついでに気まぐれ更新です^^

本日分です。

宜しくどうぞ(*´∇`*)

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