表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/95

第41話 ミチオ・T・ウィンクードの憂鬱

「バカなっ、一人多いだと!?」


 カイゼル髭のおっさんがオレの方を見て驚いていた。

 そう、オレこと田中美智夫は33歳にして異世界転移したのだが、どうやら召喚した側にとって俺は招かれざる客のようだった。

 

 そして目の前には、高校生くらいの男女が四人。


 きっとあいつらが今回(・・)の召喚対象者なのだろう。全員、何が起きたかわかっておらずテンパっている。女の子に至っては泣きそうだ。男三人に女一人か。……取り合いだな。


 オレはよくラノベを読むので、なんとなく状況の把握ができていたが、あまりよくはなさそうだ。

 ……くそ、異世界転移に巻き込まれた系か。チートはあるのか? スキルは? 魔法は?


 しかしそんなオレの心配を他所に、この物語は勝手に進行されていく。とりあえずオレたち五人はこの国に保護され、今回の顛末を説明された。


 この国の名はレグナードと言って封建制度を設けている国家のようだ。近隣諸国との関係も良く国家間の戦争などは滅多にない。

 今回オレたちを召喚した目的は魔王討伐、ダンジョン踏破の二つだ。

 しかも、魔王は一人ではなく何千といるので、ゲームのように倒しても『はい、終了』とはいかない。

 オレたち……、いや、あの勇者四人の目標は一人でも多くの魔王を討伐することだ。


 オレはというとやはり予想した通りチート、いやスキルや魔法といったこの世界では当たり前の物すら持っていなかった。まさにお荷物。ゼロからのスタート。こんなお荷物なオレだけど、召喚に巻き込まれた被害者ということで、しばらくは王城にて保護されることになる。それに異世界の知識はどんな些細なことでも貴重なようで、一応客人扱いとして暮らすことになった。

 右も左もわからない異世界生活。ラノベのようなキラキラしたものではなく、やけにリアルな異世界ライフが始まった。





 それからあっという間に一年の月日が経ち、各自が否応ながらこの世界に馴染み始める。

 慣れとは怖いもので、まともな感覚はすぐになくなった。貴族、平民、奴隷のカースト制度も当たり前と思うようになってしまった。


 そしてあの勇者四人は自身の勇者スキルの特訓、戦闘訓練の毎日。

 正直、自分が勇者で召喚されなくて良かったとも思うほどの練習量だ。ちなみにそんな勇者四人を鍛えてるのは、この世界で勇者の称号を得た現地(・・)の勇者だそうだ。


 オレも宮廷魔導士に魔法を教えてもらったが、取得できたのは土魔法の一種類のみ。しかも一年努力した結果でコレだ。使えるだけマシなのだが、あの四人と比べられるのは辛い。それでも生きる残るための努力はし続けた。


 そしてさらに召喚されて二年が経ち、俺は国家建築魔導士として仕事を得た。というか半強制的に任された。地方の村でモンスターが侵入してこないように防壁を作る仕事だ。やはりオレのようなただ飯喰らいをいつまでも保護をしてくれるわけはなく、勇者の旅立ちと共に城を追い出された。


 しかもこれが死ぬほどキツイ。30名ほどの部下を与えられたが建設途中にモンスターが襲ってきたり、山賊がやってきたりと、何度も死にそうになった。部下が死んでいなくなると、すぐ国から補充されるので、オレたちはまるで使い捨ての駒のような扱いだ。……ほんとありえない。


 ただ、この世界に来てからわかったことが一つある。

 

……力が全てなのだ。


 どこの世紀末伝説だよと思うかもしれないが本当なのだ。

 情報網が発達していないこの世界では、法で守られるのは国や地方領主の管理が及ぶすぐ近隣の領土だけだ。それ以外の土地では、略奪や強盗、殺人までが毎日当たり前のように起こる。まるで、あの某世紀末アニメなのだ。

 ただ、そんなに都合よく正義の味方は現れない。下手に助けようものなら自分たちの命が危ない。襲われたら逃げる。これがこの世界の唯一のルール。力のないものは淘汰される弱肉強食の世界。正直、鬱になりそうだ。まじでクソ世界。


 そんなクソみたいな毎日を送ってると国からある辞令を通達される。

 辺境で開拓村の村長をやってほしいとのことだ。どうやらそこには新規ダンジョンがあるようで、武装したゴブリンが巣を作ってるらしい。しかも魔剣持ちのゴブリンまでいる。

 武装したゴブリンがメインのダンジョン。普通ならばゴブリンが武装してるなんてあり得ない。だからきっとそのダンジョンは資源が豊富なのでは?というのが国の見解だ。

 そして、オレはそのダンジョンからの資源採掘を目的とした開発村の作成を任命された。


 ダンジョンもゴブリンとスライムのみである。

 普通であれば危険度はそこまで高くない。いや、オレでもなんとかなりそうなダンジョンなのだが、調査に入った冒険者は一人として戻らないらしい。


 ……はっ? 生還率ゼロ?


 いや、ちょっと待った!!


 この数字滅茶苦茶ヤバくないか? オレにそんなヤバいダンジョンの近くで村長をやれと? 断ろうと思ったが国王からの勅令なので、断ったら死刑だそうだ。

 ……何度も言うが、まじでクソだな。

 

 しかし悪い話ばかりではない。既に冒険者ギルドや騎士団が動いており、村の形だけはできているようだ。ゼロからのスタートじゃなくて心底安心する。しかも、冒険者ギルド支部、騎士団を駐留させるとまで言われたので、不本意ながらもその辞令を受け取った。


 そしたら話がトントン拍子に進み、いきなり騎士爵を叙爵させられた。既に開拓村の名前は決まっていたみたいで『ウィンクード』と言うらしい。

 俺の名前もミチオ・T・ウィンクードと勝手に変えられ、田中が省略された。オレの苗字が……。


 そしてウィンクードへと出発の日、今まで一緒に働いていた部下たち、その家族たちも開拓村への移住を希望してきた。

 その理由を聞くと、どうやら今までクソみたいな上司の下ばかりで働いていたがオレはどうやら違ったらしい。またクソみたいな上司の下で働くなんて真っ平御免とのこと。どうせ人手足りないんでしょ? だったら付いていきますだって。


 オレにも少しは人望というものがあったようだ。この異世界に来て一番嬉しかった出来事だ。そして何よりも一人ではないということが非常に心強い。騎士団含め総勢280名。開拓村への移動を開始した。





 そして五日かけて、ラグリスの森にある開拓村へと到着した。

 道中、モンスターは現れたが、騎士団同行だったので大事に至らず全員無事だ。

 到着してすぐに目にしたのは、グチャグチャに壊された防壁や建物。胴体を真っ二つにされた騎士や冒険者の死体の数々。


 ウィンクードは何者かに襲撃されていたのだ。

 目の前が真っ暗になるのが、これほどリアルに体験できるとは。でも村の中にモンスターが残っていなかったのが不幸中の幸いだったな。


 村には生き残りが居たので話を聞くと、三日前にダンジョンの入口に聖騎士隊が魔封じの神殿を建設したそうだ。そしたら昨日、それに激怒した迷宮主が現れて聖騎士隊、冒険者達を皆殺しにしたとのこと。しかもあのダンジョンの迷宮主は高位悪魔将(アークデーモン)のようだ。というか……。


 じ、次期魔王候補かよぉぉ!?


 なんでこんな辺境にいるの? 聞いてないっすよ!? ゴブリンの巣って言ってましたよね? 全然、話が違うんだけど……。マジで国王をぶん殴りたい。


 ふふっ……。(白目)ゼロではなくてマイナスからのスタートか……。しかも近所には超ド級の大クレーマー(アークデーモン)がいるっていうかなりのハードモード。


 ……いいだろう。やってやんよ! 元社畜なめんなよ!! 想像以上にハードモード過ぎて逆にやる気出たわ。どんな手を使ってでもこの世界を生き抜いてやる。


 まずはいつものように防壁造りからだ。コツコツと前に進もう。


 そして目指すは迷宮都市。国王も勇者もギャフンと言わせるくらい凄い街を作ってやる!!


 こうしてこのオレ、田中美智夫の物語がやっと始まった。……ハードモードで。



気まぐれ更新すみませんm(_ _)m

本日分です^ ^

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございます!
バージョンFのTwitterはこちらから
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ