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第39話 忍衆【睡蓮】

 エリー役職事件から一週間ほどが経った。今日も俺はマスタールームでグダグダと過ごしている。

 リリーナやオペレーターのサキュバスさんたちは相変わらず忙しいそうだ。

 一階席を覗き込むとシャーリーと目が合った。こちらを見て笑顔で手を軽く振ってくれたので、俺もシャーリーに振り返してあげる。誰かさんと違ってええ娘やなー。


「……マスター? 何してるんですか?」


 背後からリリーナに声を掛けられたのだが、その声に怒気が含まれてるのは気のせいだろうか? つか、いきなり機嫌悪いんですけど?


「いえ、何もです!! リリーナさんこそどうかしましたか!?」

「……別に」


 なんで不機嫌っ!? やっぱり俺なんかした? これはあんまりですよリリーナさん!!


「……もういいです。それよりもマスター、一階層に野良のモンスターが増えてきましたが、このまま放置でよろしいのでしょうか?」

「そうだな。とりあえず放置でいいんじゃね? ダンジョンに害はないんだろ?」


 一階層に野良のモンスターが住み着き始めて早二週間。

 そこにはちょっとした生態系ができ上がっていた。蝙蝠、猪、狼、熊、蛇、蜥蜴系といった魔物がそれぞれ縄張りを作っているのだ。

 ニ階層に降りてくるバカな魔物たちはゴブリンたちがおやつとして美味しく頂いている。魔素が濃いため繁殖率も高く、冒険者たちにある程度狩られてもその数は一向に減っていかない。


 しかし問題もあった。


 最近では、その魔物を狩るためだけにダンジョンに侵入してくるハイエナのような冒険者たちがいるのだ。それによってこのダンジョンの生存率は上がり、素材狩りを目的とした冒険者集団が来るようになってしまった。このままではダンジョンにせっかくできた生態系を壊し兼ねない。


 どうしようか考えていると、先日ケロ君から修行をしたいとの申し出があったのを思い出した。

 ちょうどいいので、大量に魔物狩りをしている冒険者だけを狙って実戦練習という名の冒険者狩りをしてもらうことに。ケロ君も俺から仕事を任されたせいかとても嬉しそうだ。

 

 そして俺は初めてケロ君の戦闘を目にした。

 その技のキレは凄まじくモニターの前で興奮してしまったほどである。

 だって、ケロ君が斬られたと思ったら、次の瞬間それ丸太だったんだぜ? しかも、ゆっくりトコトコ歩くだけでケロ君何人にも分身してくし。俺としてはなんじゃこれですよ。


 一番凄かったのは背中に背負ってる和傘だ。

 実はこれ暗器だったんですよ。しかも仕込み刀。バッと傘を広げて冒険者の視界を奪ったと思ったら、冒険者たちの首が次々と宙を舞ってる。

 死角からの一撃必殺。まさに忍。ケロ君パネェ。


「それにして、また冒険者たちが増えてきたなー。また外に集落でも作られてるのか?」

「かもしれませんね。人族の連中のしぶとさは生活魔蟲(ゴキブリン)以上ですから。気になるようでしたらパケロさんの眷属に斥候を依頼しますか?」

「えっ? そんなことできんの?」

「はい。忍衆【睡蓮】は斥候や暗殺を得意としてる部隊ですので、マスターからの依頼とあれば喜んで動いてくれることでしょう」


 何それ? めっちゃカッコいいんですけど? 


「それにダンジョンから半径3キロ周囲であれば、斥候部隊の視覚をモニターリンクさせて表示させることもできます。以前のようにマスターがダンジョン外に出ていく必要もありません」


 何故か、リリーナさんにギロリと睨まれる。

 怖っ!? りっ……リリーナさん、やっぱり機嫌悪いのか!?


「じゃ……じゃあ、リリーナさん。早めに段取りするようケロ君に指示出して」

「かしこまりました」


 こうして忍衆【睡蓮】にダンジョン外の斥候を頼むこととなった。





 翌日……。


 ダンジョンの入り口付近に、今回ダンジョン外に探索に出る斥候部隊の忍衆と忍頭のケロ君が集まっていた。みな忍装束に身を包みやる気満々だ。そしてよくみると桃色の装束を着た女の子もいた。

 ほう、あれがかの有名な『くノ一』と呼ばれる忍びか。しかし、あんな自己主張の強い色の服を着て大丈夫なのだろうか? 隠密行動するんだよね?


 初めてのダンジョン外の探索。

 危険な任務なので、激励の言葉を忍衆に掛けることにした。

 俺がマスタールームから転移しようとすると、リリーナが顔を赤くし右手を前に出してきた。

 ん? リリーナも一緒に来たいのか?

 つか、今更だけどリリーナも限定とはいえ迷宮魔法が使えるやん。自分で転移できるんじゃね?と思いつつも口には出さない。なぜなら、きっと機嫌が悪くなるからねっ!! 俺は空気を読む男。そっとリリーナの手を取りダンジョン入り口へと転移した。


 忍衆たちは、俺たちが現れると片膝をつき頭を下げる。

 おぉ、めっちゃ忍者っぽい!!

 今回、ダンジョン外に探索に出るのは忍衆総勢十名。ケロ君イチオシの眷属だ。


「みんな。任務はリリーナから聞いてると思うが、もう一度確認するぞ? 今回の任務はダンジョン周辺の探索だ。人族との戦闘ではない。万が一、冒険者たちと遭遇したらすぐ撤退するように! いいな?」


 忍衆を見ると全員軽く頷く。

 いやぁー、なんか、こう気持ち良いものがありますな。 闇の組織のボスのようで、もの凄く気分が良い。 さぁ、最後に憧れのあのセリフを言わせてもらおう。



「……さ「ケロッ(散っ)!!」」

「「「……ケロ!!」」」


 まさかのケロ君の掛け声と共に忍衆は外へと飛び出していった。


「………………」




 ……ど、ど、どどどど畜生がぁぁぁぁ!!




 ケロ君っ!? それ、俺が言いたかったんだよ!! 君に悪意があるとは思えないが、それだけは言わせてほしかった。(白目)







 そしてダンジョン外の探索を始めて丸二日。あっという間にダンジョン外の探索が完了した。

 俺はマスタールームでリリーナから忍衆の調査報告を受けている。というかマジで眠い。寝てやろうかと思ったが、永遠の眠りにつかされてはかなわないので渋々リリーナの報告を聞いている。

 それにしてもさすがプロの斥候集団。仕事が早い!


 まず始めに、以前俺が破壊した人族の集落……。

 案の定復活してました。しかも魔物の侵入を防ぐ城壁ができていて以前よりも強固になっていた。塀の中には建物も多く、しっかりとした街となっている。ちなみに街の名前は『ウィンクード』と言うようだ。

 

 忍衆の調査によると、街には宿屋、酒場、冒険者ギルド、各商店施設、奴隷商館、挙句の果てには森を開拓して田畑ができている。住人は主に冒険者や商人、奴隷などが多い。


「なぁ、リリーナ。一つ思ったんだが、なんであんなに早く集落が復興されてんだ?」

「おそらく人族の中に土木、建設に特化した魔道士が複数いるのでしょう。それに異世界より持ち込まれた建築技術は脅威です。設計の簡略化、建物強度、三日でちょっとした村が出来上がります」

「マジか……。じゃあ、いくら潰しても潰しても駄目じゃねーか」

「はい。そして最近わかったことなのですが、人族がダンジョン1階層より生息魔物の素材はもちろん、鉱石の採掘などを行いダンジョン資源の搾取を行なってました」

「泥棒やん!!」


 ひとん()から物を盗ってくって、人族の奴らどんな神経してんだよ!?

 そういえば泥棒の原点を聞いたことがある。

 とある国が召喚した勇者が、人の家のタンスを勝手に開けたり、壺を割ったりし、挙句の果てには王城で管理している宝を盗みまくる世紀の大泥棒勇者の逸話を……。

 あかん、あかんよ! NO MORE ダンジョン泥棒!! 


「マスター。人族たちがダンジョン内の採掘を始めたことにより1階層は徐々に広くなっているのですが、素材などはダンジョンインベントリーに入らず魔素なども回収ができません」


 あっ、そうなの? ダンジョンは広くなってんのね。素材は持ってかれるけどダンジョンが広くなるのらいいのか?


「きっとマスターのことですので、ダンジョン広くなってラッキーと思ってるのでしょうがそうはいきません」


 ばっ……バレた!? けど、ダメなのか?


「うちの魔鉱石は魔素を大量に含んでるため、持ち帰られると人族たちの手によって強力な武器へと作り変えられます」

「そうか。その武器を使ってうちのダンジョンに攻めてこられても厄介だな」

「はい。ですので、魔鉱石の採掘を行なっている人族は集中的に倒していきます」

「なるほど」


 しかし、目と鼻の先に人族の集落があるから採掘を阻止しても、またすぐに違う奴が来て同じことしそうだ。これ意外とかなりマズい問題なのでは? どーすっかな……。


「ヨルシアよ、珍しく悩んでおるな? どーしたのじゃ? ダンジョン運営相談役の妾に相談してもいいのじゃぞ?」


 そう言いながら、ソフトクリーム片手にうちの相談役がマスタールームへとやってきた。

 おい、相談役!! お前、自由だな!! しかもどうやら風呂上がりのようだ。

 いいなー、俺も早く仕事終わらせて風呂行きてー。

 するとリリーナがエリーに今までの経緯を説明する。


「なんじゃ。そんなことか。そこは小さな街なのじゃろう? だったら街に攻め入って支配地域にすればいいのじゃ! 侵略して人族を隷属して支配下におけば万事解決じゃ!」

「物騒だなっ!! 戦争なんてするつもりはねーよ! そんなことしたら益々人族に目をつけられるだろーが!!」


 エリーがとんでもないことを言い出す。


「しかし、支配地域を持てばヨルシアも魔王襲名の条件を得るのじゃがな」

「いや、だから魔王になるつもりはないってば! 何回も言うけど俺は引き篭もりたいの!!」

「でもマスター? エリー様の提案ですが案外悪くないかもしれませんよ?」

「おいっ、リリーナ!!」

「なにも、真っ向から街に攻め入って支配下に置かなくてもいいんです。街には必ず領主か代官がいますよね? 例えばその領主を操って裏から街を支配するのも一つ手ですよ? そうすれば人族たちに気付かれず街を実効支配できます」


 何この人たち? めっちゃ怖いんですけど? なんでこうもやる気なのだろう?

 でも考えようによっては、そこから冒険者たちの情報を得ることができるな。

 情報大事!……うん。確かに面白そうだ。

 面倒だがやってみるか……。ウィンクードの実効支配を。



遅くなりましたが、感想、評価、ブックマークをして頂きました皆様方、本当にありがとうございます。ひっそりと書き続けていきます。

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