第3話 ダンジョンを作成をしよう
目が覚めると大きな木々が立ち並ぶ森の中だった。
ここが地上か……。うわっ、眩しいっ!? アレが太陽? めっちゃ光ってるやん! 教科書通りだな。
しかし困ったな。強制的に激戦区とやらに放り込まれてしまったな。働きたくないのに……。とりあえず目立たない所にダンジョンを構えるとするか。誰も寄り付かなさそうな場所が良い。何か言われたら初心者なんで間違えてましたでゴリ押ししよう。
俺は空へと飛びあがり、ラグリス大森林の上空を飛行しながらダンジョンの拠点を探し回った。
おっ、あの山の麓なんていい感じじゃないか? 林の奥で獣道もない。うん、さすがにこんな場所、誰もこないっしょ!! もう疲れたしパパッとダンジョンを作ってしまおう。テキトー、テキトー!
俺は岩壁にダンジョンコアをかかげてダンジョン作成と念じる。すると目の前に大きな洞穴ができた。
うむ、ちょっと大きいが熊の巣穴みたいだな。これがダンジョンとは誰も思うまい。とりあえず中を見てみるか。500mほど真っ直ぐ歩くと広さが体育館くらいある大部屋へとたどり着いた。そして更にその奥には扉を挟んで部屋があったので中へと入ると、教科書に載っていたマスタールームと呼ばれる部屋へと入室した。
マスタールームの広さは学校の教室くらいあり、部屋には映画館のスクリーンのようなモニターとダンジョンコアが台座に設置されていた。室内は住んでいた寮なんかよりもずっと綺麗で、ちょっとした高級ホテルのような感じだ。床に敷いてある赤いフワフワな絨毯が気に入った。
俺はモニター前に豪華なソファーが設置されていたので、そこに腰を掛けた。
「ふぅー、やれやれ……疲れたな。念願のダンジョンマスターになれたのはいいけど、まさか激戦区に来るとはなぁ……だいぶ予定とは違うけど、少しはゆっくりでき……」
——ビービービー……
【侵入者が現れました。速やかに対処してください。】
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ???
おいっ!! ふざけんなよっ!! なんだ俺? 呪われてんのか!? 作ってまだ30分も経ってないぞ? どういうことだ!?
モニターを見ると緑色の醜悪な顔をした小さなおっさんが5体侵入してきた。
って、ゴブリンかよっ!?
あいつら地上育ちの魔物だから生態とかよく知らないんだよね。学校でも交流なかったし。そういえばあいつら、ダンジョンマスターとか関係なしに襲いかかってきたりするんだよな? しかもダンジョンに勝手に住み着いたり、物を破壊したりしてダンジョンクレームの元凶って先生が話してた気がする。
さて、どうしよう?
とりあえず話して帰ってくれないなら斬るか? 俺は魔力で黒い剣を形成した。学生時代に磨いた数少ないスキルの一つ【暗黒剣】だ。こうみえても暗黒剣は10段階評価の6なんだぜ! ……って、何が微妙だ!! 下級悪魔にしたらまぁまぁいいんだぞっ!!
俺は大部屋でゴブリン達を待ち構えた。マジでついてないわ。さっさと終わらそう。
しばらくすると上半身裸で腰蓑をした緑色のおっさん5人が入ってきた。うん、絵面が汚ねぇ。
「おい、そこで止まれ。それ以上進むなら敵とみなして斬るぞ?」
「おっ‥お待ちください!! 我らは敵ではありません!! 貴方様へは敵意は一切ございません! いきなり訪ねてきて大変申し訳ないのですが、どうかお話だけでも聞いてはもらえませんでしょうか?」
おっさんたちが土下座をしながら懇願に近い形で話しかけてきた。これを無下にすると紳士の恥だな。
「一応、理由は聞こう。話せ」
俺が許可をすると、先程も話しかけてきた一番身体の大きいゴブリンが話し出した。こいつがリーダーなのか?
「あっ……ありがとうございます! 実は我らはこのラグリスの森に、つい昨日まで大集落を構えておりました。しかし、集落へとやってきた多数の冒険者たちに襲われてしまい、あっけなく壊滅してしまいました。500人規模の集落でしたが、生き延びたのは僅か20名。今は行く宛てもなく森の中を彷徨い続けております」
えぇぇー……くーらーいー。ダンジョン構えて早々なんでこんな相談されんの?
「そうしましたら、森の奥で貴方様が、ダンジョンをお造りになられたところを見てしまいまして、今こうしてお願いに参った所存です」
あらやだ、見られていたの? 恥ずかしいわ。誰にも気付かれないと思っていたのに……。
「まぁ……、大体そのお願いも予想がつくけど、一応言ってみな?」
「はいっ、我らゴブリン族を貴方様の庇護下……、眷属へと加えていただけませんか?」
……だよね。
つまり此処に住みたいっていうことだよな?
えぇー、ミノタウロス先生もゴブリンはクレームの元凶と言ってたから個人的には断りたいんだけどなー。しかし、このまま彼らを見捨てて野垂れ死にさせるのも気分悪いし‥。
確か他の種族を庇護下に置くと、どんな命令も聞くパシリにできるって、パイセン言ってたな。20人のパシリか……まぁ、そう考えたら20人くらい増えてもいいか。
「わかった」
「ほっ……本当でしょうかっ!! ありがとうございますっ!!」
「ただしっ、条件がある」
「「「「「ゴクリッ……」」」」」
緑色のおっさんたちが生唾を飲む音が部屋に響き渡る。
「俺さ、働きたくないから基本自給自足でやってね。後、このダンジョンに出入りする時は絶対に人族たちに見られないようにすること! そして万が一……、これは万が一ね。もし死にそうな冒険者が近くに倒れていたら、こっちに連れてきてダンジョン内でトドメさして。魔素が回収できるから。この3点が守れるなら庇護下に置こうと思う。どう守れそう?」
そう言うと、先ほどのリーダーとおぼしきゴブリンが全員の顔を見渡し軽く頷いた。
「……貴方様に全て従います。どうか我らを庇護下に……」
よし契約成立。まぁ、この条件でいいなら好きにさせよう。思ったほど悪い奴らでもなさそうだし。ダンジョン内で冒険者たちを殺すと魔素を吸収できるようなのでラッキーパンチで回収できるなら頼んでおいた方が良い。
「じゃあ他のゴブリン連れてきて。契約の儀式をやるから」
「ははーっ!! 有難き幸せ。それとよろしければ、貴方様のお名前をお聞かせ願えますか?」
「そうか、自己紹介がまだだったな。俺は下級悪魔のヨルシアだ」
「ヨルシア様……、これより我らが主はヨルシア様にございます。この命貴方様へと捧げまする」
こうしていきなり、ゴブリン族20名がダンジョンへと移り住んだ。