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第38話 憤怒の化身

「なぁ、リリーナ」

「マスター、どうしましたか?」

「どうして冒険者と呼ばれる連中はこうも飽きずにうちのダンジョンに来るんだ?」


 ダンジョンバトルが終わり十日ほどが経った。その間、冒険者たちは途絶えることもなく現在もウチのダンジョンに来ている。


「そうですね。考えられる理由としては、マスターの悪名が広がってることが考えられます」

「悪名って……。俺、そんな酷いことしてないぞ? 基本的に戦闘を仕掛けてくるのは人族の奴らだし。正当防衛してるだけじゃん!!」

「だとしてもです。人族の連中は私たちを見れば敵なのです。戦う理由なんてそれで十分なんですよ」

「ひでぇ話だな……」

「それにマスターの悪名が広がるのも仕方ありません」

「は? なんで?」


 何故かリリーナがジト目で俺を睨む。

 あれ? 俺なんかおかしなこと言ったか?


「はぁ……。マスターがわかっておられないようなので説明しますけど、マスターはこのダンジョンの生存率いくつか知ってますか?」

「生存率って、冒険者がこのダンジョンから生き延びて出ていく確率だよな? えっ? 30%くらいじゃないのか?」

「……0.4%です」

「は?」


 え? ちょっと意味がわかんない。


「基本、うちのダンジョンに侵入してきた冒険者はほぼ全て殲滅しております。中にはレベルが高く強い者もいますが、それらは何故かマスターが率先して倒してますよね? ほんとやめてもらいたいのですがダンジョンとしては最小限の被害で済みますし、何よりマスターが仕事しますので、もう何も言いませんが」


 たっ……確かに。つい先日まで、夥しい数の冒険者が侵入してたからなぁ。あまりの忙しさに途中で戦力配置を考えるのが面倒くさくなって、俺が直にレベルの高い冒険者たちを相手したことがある。あいつらまぁまぁ強くてゴブリンたちじゃあ相手にならなかったからしょうがなくね?


「それに、あの聖騎士事件です。あれがトドメですね。マスターの正体もバレましたし、人族にとってウチは脅威の塊です。冒険者や騎士団が来て当たり前です」

「はっ!? 騎士団も来てんの!?」

「現在進行形で来てるでしょーが!! 今更、何言ってるんですか! 既にゴブリダさんが相手をしてます!!」

「やべぇじゃん! すぐ倒そうぜ! ゴブリダたち、間引きされちまう!!」

「マスター……あの、大丈夫ですよ? ウチの黒鬼騎士団強いですから。それに新設された狂戦士団がいい仕事してますので被害ゼロで抑えられると思います。マスターが出ずともオペレーター対応で問題ありません」


 狂戦士団って、確か呪いの装備で身を固めたゴブリンたちのことか?

 あいつら妙にハイテンションになって、鳴き声もヒャッハーに変わってんだよな。何故に世紀末!? 位階もゴブリンバーサーカーだし。呪いで進化って……。

 つかルルの奴、ゴブリンたちに変な薬とか投与してないよね? 頼むからマッドサイエンティスト路線だけはやめてほしい。お父さん少し心配です。


「じゃあ、リリーナ。とにかく俺は何もしなくていいんだな?」

「はい、今のところ問題ないので大丈夫です」

「わかった。じゃあ、それならちょっと寝てくるわー」



――ギリギリギリギリギリギリ(アイアンクロー締め付け音)



「痛だだだっ!! 嘘です、嘘です! ここでちゃんとダンジョンチェックしてます!! いや、させてください! だからリリーナさん、手を離してくださいっ!! コメカミ爆発します!!」(早口)


 あまりの痛さに息をするように嘘が出る。

 てか、リリーナの握力いくつあんだ? 軽くオリハルコンとか握り潰せるんじゃね? マジゴリラ!!


 俺が苦肉の策で目を開けて寝ようと試みると、タイミング悪くマスタールームにエリーが入ってきた。

 もう嫌な予感しかしない。すると早速、エリーが俺に爆弾を投下してきた。


「のう、ヨルシア? 妾にも役職をつけてたもう」

「……はっ?」


 エリーが変なことを言い始めたんですけど? 面倒くさいが事情を聞くしかないか……。





「なるほど。リリーナやルル、ゴブリダ、ケロ君には役職があるのに自分だけそういうのがないから不満だということか?」

「そうじゃ! 妾も役職が欲しいのじゃ!! 妾もこのダンジョンメンバーの一員じゃぞ?」


 この幼女は何を言っているのだろうか? あんた暗黒神だろというツッコミをすべきなのか? いや、まずは優しく諭してみよう。エリーはリリーナと違ってDVをしないもんね!


「あの、エリーさんや? 君は魔界の神様だよね?」

「そうじゃ! 週一でちゃんと称えぬと神罰を下すぞ?」


 あっ、そこは週一でいいんですね。

 マスタールームには、ちゃんとエリーを祀った神棚を設置し、リリーナが毎日手を合わせてるからそれは問題なし! まあ本人、降臨してるからそれ意味なくね?と、思うがリリーナに怒られそうだからツッコミは入れない。


「じゃあ、役職も暗黒神とかでいいんじゃね?」

「いやじゃ、いやじゃ!! それだとヨルシア一味の仲間ではないではないか!」


 一味って。そんなどっかの海賊じゃないんだから。


「ちゃんと役職を考えてたもう!」

「うーん……、エリーは一応神様だからなぁ。役職を付けちゃうと、後で俺が本部の偉いさんに怒られないか? 魔界の象徴に変な役職つけないでくださいって」

「それは大丈夫じゃ! 文句を言う奴がいるのならば、妾の権力で一族ごと消すから問題ないのじゃ!」


 エリーがサラッと怖いことを言ってくる。一族ごとって……。


「マスターいいではありませんか。エリー様もうちのダンジョンの一員っていう『しるし』が欲しいだけだと思うんです。エリー様に何か付けてあげましょうよ!」

「おぉ! さすが、リリーナじゃ! 妾の気持ちをよう分かっておる。ヨルシアよ! 早う付けてたもれ!」


 おふっ……。リリーナがエリーの味方をし始めた。チーム女子は結束が強くて困る。

 仕方ない。テキトーに付けてやるか。


「じゃあ、生き物係なんてど……」




——ブォォォォォォン……




 俺がそう言い切る前に、エリーがスっ……とドス黒いオーラを身に纏った。


 その纏うオーラは禍々しい憤怒の鬼神で凄い形相で俺を睨みつけてきた。しかも小声で「やんのか? おん? おん?」とまるでチンピラのように因縁をつけてくる始末だ。てかね、また近くにいるだけで肌がピリピリと痺れるんだけど? これ殺す気だよね? 俺を殺す気できてるよね?


 しかし冗談抜きでヤバい。このままだとマジで俺、処される!! リリーナよりもリアルに処される未来が()えるんですけど? ヤバイヤバイヤバイ、何か出せ俺っ!! このピンチを乗り切るんだ!


「エリー落ち着け。ほんの冗談だろ? ちゃんとエリーに相応しい役職を考えてるって! なっ?」

「……ヨルシア、ほんとじゃろうな?」

「ほんとだ! マジだ! 信用しろっ!!」


 するとエリーがオーラをシュンっと消し去った。

 ……ふぅ、命拾いした。リリーナ以上にエリーは怒らすと不味いな。肝に銘じよう。下手すると、簡単に処される。ガチで。


 しかし、何かエリーに相応しい役職はないのか? 可もなく不可もなくお飾りだけの役職。ふっ……、ないな。


 あ゛あ゛ーー、めんどくせぇーー!!


 つか、なんで命を懸けて人の役職なんて考えなきゃいけねぇんだよ!! こんな時に相談できる人が居たらなぁぁーー!! でも俺、友達いないから無理ですけどねっ!! ……あれ? なぜだろう? 目からしょっぱいものが溢れてくる……。


 でも待てよ……相談? 相談!! いいじゃんコレ!!


「エリー、お前に相応しい役職を考えたぞ!」

「なんじゃ、なんじゃ! 早く教えてたもう!」

「マスター、変な役職だと次は本当に消されますよ?」


 さらっとリリーナが怖いことを言ってくる。大丈夫だ。変じゃないはず。


「エリーの役職は【ダンジョン運営特別相談役】だ!! どうだ?」


「いっ」


 いっ……? その次は何? 嫌なの? ねぇ、嫌なの? 俺、処されるの? しっ‥……死ぬの嫌ぁぁーーー!!


「いいではないかぁーー!! 【ダンジョン運営特別相談役】じゃと!? 超カッコ良いのじゃ!!」

「エリー様、素敵な役職を付けてもらって良かったですね♪」

 

 エリーが目をキラキラさせて「相談役♪ 相談役♪」と言いながら俺に抱きついてくる。

 はぁー、何とか乗り切ったな。めっちゃ手汗かいた。もう役職付けなんて二度と御免だ。ストレスが半端ない。


 と、いうわけでエリーが今日からウチの【ダンジョン運営特別相談役】に就任した。

 いるよね、肩書にこだわる人。


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