表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/95

第37話 ケロ君ちへ行こう

 今日はリリーナ、エリー、ケロ君と一緒に新階層の視察に来ていた。俺たちは現在、地下水脈の4階層を歩いている。

 地下水脈のダンジョンとだけあって、通路のすぐ脇には流れの強い川があり、その川縁には魔蝦蟇(ギガン・トード)鬼牛蛙(オーガ・トード)の住処がいくつもあった。


 ともにDランクの魔物だが、ダンジョン地形と相性が良いのでランク以上の働きをしてくれるだろう。体長も2~3メートル程もある強大な蛙で、舌攻撃、怪力、毒、粘液といった攻撃手段で冒険者たちの侵入を阻んでくれるとても頼もしい魔物だ。

 特にその伸縮自在の舌がいい! 奇襲も出来るし、冒険者を水中へと引きずり込むといった戦法もとれる。ゲリラ戦や地形戦ができそうだ。


 それにしても水の勢いがマジで強いな。水がうねり、そのけたたましい音がダンジョン内に幾度も響き渡る。

 ……正直に言おう。ここめっちゃうるさい。


「おーーーい!! リリーナぁー!! ここうるさいから下の階へ移動するぞ!!」

「えっ? なんですかー?? マスター聞こえませーん!!」

「ヨルシアーー!! 妾を呼んだのかー!?」

「ケロー!? ケロー!?」


 ……駄目だ。周りの音がうるさ過ぎて会話が成り立たない。リリーナが俺の話を聞こうとズンズンこちらへと近づいて来る。

 ん? なんだろうこの感じ。なぜか地雷臭がする……。


 悪い読みは的中するもので、リリーナが通路の窪みに躓き転んでしまった。


 ちょっとリリーナさぁぁん!?


 俺は地雷だと思いつつも咄嗟にリリーナの身体を支えてしまう。

 そして悲しいことに俺の左手がリリーナの右胸をキレイに掴んでしまっていた。

 Oh……、ワシヅカミ……。

 つか、手から肉がこぼれるだと!? バカなっ!? なんだこの乳は!?


 それにしても柔らかきことプリンの如しだな。あまりの危機感に何故か名言が浮かぶ。つか、やべぇ……これ思考が加速してんな? 走馬燈か? さぁ、覚悟はできてる! いつでもこい!(0.01秒)


「きゃ……きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



——スパァァァァァァーーン!!



「ぐはぁぁぁぁぁ、久々のビンタぁぁぁ!!」


 やはりかぁぁぁーー!? しかもコレそこそこの威力だし!! 俺、身体ごとぶっ飛んでるんですけど!?

 マズい。体勢を、体勢を立て直さないと……って、ん? あれ? 水面が近い……ぞ……?



——ドボォォォォーーン!! ……ゴボゴボゴボゴボ。



「マスター!?」「ヨルシア!!」「ケっ……ケロォォ!?」


 やっぱ地雷だったじゃん!! 川に落ちたんたんですけど? というかリリーナさん酷くないか!? 俺、助けただけだし!!


 ただ、この状況はマズい。思いのほか水深が深いのだ。しかも足つかねえし。ついでに上下左右もわからん。洗濯機の中ってこんな感じなんだろうなぁ。って、そんなことよりも早く脱出せねば!!


 よっ! とう! はっ! おらっ!!


 ……って、上手く身体が立て直せん!

 うーん……。水中って身動き取りづらいのね。どうにも上手くいかん。

 すると俺の腕に、何かがシュルルっと巻き付いきた。


 んがっ? なんだこれ? 凄い力でグイグイと引っ張られる。

 そのまま俺は川の流れとは逆の方向へと引っ張られ、魚のように勢いよく釣り上げられてしまった。まさかこんなところで『巨大魔魚マカジキ』の気持ちがわかるとは。

 空中で体勢を整えた俺は地面へと着地する。腕に巻き付いていたものを確認すると魔蝦蟇(ギガン・トード)の舌だった。

 

 うぉぉ、マジで助かった! やるなカエルさん。それにしてもすげぇ力だな……。 この水流をものともしないとは。


「マスター!! 大丈夫ですか!?」

「おう、問題ない。このカエルさんに助けられたよ」

「……マスター、その、ごめんなさい。つい……」


 ついってなんだろう? 手がすべった感覚でビンタを繰り出せるのだろうか? だとしたらそれ病気だからね?


 するとカエルさんが腕に巻き付けた舌を外してくれた。

 

「ゲコォ!!」


 ケロ君とは違い、重低音が強い鳴き声だ。輪唱し始めたらワイングラスくらい簡単に割りそうな声だ。


「ケロっ、ケロケロケロっ、ケロ!」

「マスター、パケロさんによると、この方は魔蝦蟇の主の【ベルツノ】さんです」

「ゲロゲーロ!!」

「おっ、おう! よろしく。さっきは助けてくれてありがとう」


 そう言うとベルツノさんは嬉しそうに一鳴きし、流れの強い川へと飛び込んで帰って行った。多くを語らないのだな。ベルツノさんカッコいいぜ!


 とりあえず一通り4階層は見まわったので、次はケロ君の集落のある5階層へと移動した。長居して再びリリーナの地雷を踏むのはごめんだ。

 ……あー、さぶっ!!





 5階層へと降りると、そこは天候投影がされた湿地帯の階層だった。

 どんより雲が漂い、辺りを濃霧が包む。5メートル先が見えないほどの濃い霧だ。この濃霧のせいで5階層は天然の迷宮と化している。俺が冒険者だったら、この階層をクリアする自信はない。つかまずキレる。

 そして所々ある底無しの沼。これも天然のトラップになっているのところがエグい。一度嵌ったら出られないという凶悪なものである。


「ケロっ! ケロケロ!」


 ケロ君が蓮の池の前に立ち止まり手招きをする。どうしたのだろう?

 すると大きく息を吸って池へと飛び込んでいった。

 えっ? ついて来いと?

 ……いやいやいや。さっき水難にあったばかりだから泳ぐのは勘弁してほしい。


 俺は迷宮魔法でダンジョンマップを手元に表示した。そしてマップを確認すると、どうやらこの池から地下水路を泳ぎ、しばらく進むとケロ君宅がある集落へ移動できるようだ。


 う~ん……、これは無理だな。途中で酸欠で死んでしまいそうだ。よし、無難にダンジョン内転移で移動しよう。

 俺はリリーナとエリーの手を握ろうと思ったが、以前の失敗を思い出す。

 前はいきなり手を繋いだせいでリリーナにビンタされたっけ? あれは痛かったなぁー。危うく同じ過ちを繰り返すところだった。……オレ、ベンキョウ、シタ。


「おい、二人とも。転移するから手を出してくれ」

「うむ。ヨルシアよ、優しく握るのじゃぞ?」

「は、はい!!」


 リリーナがなぜかガチガチに緊張している。

 あの……手を繋ぐだけですよ? 彼女は本当にサキュバスなのだろうか?

 あっ、そんなことよりも鼻がムズムズする。くしゃみ出そう。さっき川に落ちたせいだな。


「へっ……くしっ!!」


——ムニュ……。


 んっ? むにゅ?

 ……いやいやいや、バカなっ!?

 なぜ俺の左手にリリーナのおっぱいが召喚されてるんだ? いや、待てよ? もしかしたらこれは幻かもしれん。よし、もう一度揉んでみよう。

 ……ムニュ、ムニュっと。

 うむ、柔らかし!! はい、現実でーす!!

 

 あっ、リリーナの顔が真っ赤だ。

 とりあえずウインクして誤魔化してみるか。

 ……パチリっと。


「こぉの、ド変態がぁぁぁぁーーーー!!」

「なんでこうなったぁぁーーー!!」



——バキっ、バキっ、バキ、バキ、バキ、バキっ、バキっ、……ドボォォォーーン(沼に落ちた音)!!



 さっ……殺劇舞◯拳んんーー!?

 つか、今度は底無し沼かよぉぉ。俺、今日の運勢悪かったっけ? ……ブクブクブク。

 




「へっ……くしっ!! あー、マジ寒いわー。誰かさんのせいで一日にニ回も服着たまま泳ぐハメになるとは思わんかった」

「だから、謝ってるじゃないですか! それにマスターが私の胸を揉むから悪いんですっ!!」

「なんじゃ、ヨルシアはおっぱいは大きい方好きなのか?」

「んっ? いや、あまり拘りはないけどあったらあったでいいんじゃねーか」

「こらぁー!! 真面目に答えなくても良いですからー!! エリー様も変なことを聞かないでください」


 リリーナが顔を真っ赤にしてツッコミを入れてくる。ウブかっ!?


「しかしヨルシアよ。さすがに悪魔のお前でもそのままじゃと風邪を引くぞ? 一度、帰った方がよいのではないか」


――なっ……何ぃ!? 風邪だと!? その手があったかー!!


「エリー様、いけませんよ? マスターのことです。風邪を引いたフリをして寝室で引き篭もろうと平気で考えています。まぁ、仮病を使うようでしたら倍の仕事を後日やってもらいますけど」


 考えてたこと速攻バレてるしっ!? 俺はもうリリーナがいる限り二度とサボることができないのだろうか……。



――否!!



 男なら不可能に挑戦しろと、どっかの偉い悪魔公が言っていたような気がする。よし、帰ったら仮病を使って……。


――ギロリっ!!



 うん。リリーナさんの殺気がヤバい。仮病使ったらマジで死ぬ。軽く撲殺されそうだ。やめておこう。


「エリー様、マスターが仮病を使おうとしてるので、一度城に帰り着替えてもらいましょう」

「そうじゃの。此奴のことじゃ。これ幸いに一か月ほど寝込みそうじゃし、その方がよいかもしれぬ」

「ニ人とも酷くねっ!?」

 

 そして俺は城へと戻り、風呂でゆっくりと濡れた身体を温めた。

 やっぱ風呂はいいよなー。考えた奴マジ天才。風呂の神様とかいるんなら祭壇でも作ってあげたいくらいわー。

 そしていつものように三人でベッドで横になり、目を瞑るとふと大事なことを思い出す。


 あっ!!


 ケロ君のこと忘れてた……。いっけね、俺テヘペロ。

 しかし、もう既に俺は布団の中。すまんケロ君。俺はもう動きたくはないのだ。

 俺は心を鬼にして、そのまま目蓋を閉じた。ただ、ケロ君のことを思うと眠れないかもしれん。

 ケロ君……ごめ……ん……スヤァー。

  


 ――翌日。



 おかしい……。思いのほか爆睡してしまった。

 どうやら俺には眠れない夜というのは無縁のようらしい。気持ち新たにケロ君の集落へ向かうとするか。それにケロ君のことだ。一度ぶっちしたぐらいで怒ることはないだろう。だってリリーナと違ってケロ君優しいからね!!


 そして集落へ着くと、目を真っ赤に腫らしたケロ君にお出迎えされた。

 ……あれケロ君泣いたの? これはこれでちょっと心に刺さる。 ……マジですまん。


 ケロ君に謝り、俺は一通り集落を案内された。ちなみにケロ君宅は武家屋敷?という立派な建物だ。

 おぉー……これが和風と呼ばれる建物か。ゆっくり見せてもらうとしよう。だって仕事サボれるからね! そして俺はケロ君宅見学という名目でその日の仕事をサボった。


まぁ、後でバレてリリーナさんから鉄拳制裁を受けたのは、また別の話。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございます!
バージョンFのTwitterはこちらから
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ