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第36話 全6階層ダンジョンへ

 報酬のことすっかり忘れてた。とりあえず俺はダンジョンコアの階層追加を起動するとアナウンスが流れる。


【ファマト様がパケロ・シュレーゲル様から奪った階層は計三階層となります。しかし、そのうち一階層は既に魔素へと変換されています。よって指定階層が足りないため、ファマト様のダンジョンより他の階層をお選びください。】


「おいおい、それってルール違反じゃねーのか? ケロ君の階層無くなってんじゃん」

「マスターの言う通りです。指定した報酬が揃ってないのに賭けを受けるのは規約違反ですね。違約ポイントを相手に請求しましょう」

「リリーナの言う通りじゃ。これでDPをぼったくれるのう! かっかっかっ!」


 するとダンジョンアナウンスが俺たちの会話を聞いていたかの如く返答をしてきた。



【今回、規約違反が発覚しましたので、ファマト様には違約ポイントとして三万DPをヨルシア様にお支払いいただきます。さらにファマト様のダンジョンのお好きな階層を、無条件にてヨルシア様に一階層お引き渡しすることになっております。こちらの補填内容でご納得できない場合は魔界裁判を行いますので再度申請をご提出ください】



 魔界裁判とか超面倒くさい。手打ちの条件としては魅力的だがケロ君次第か。

 俺がケロ君の方へと振り向くと軽く会釈をされた。ご随意にどうぞってか。リリーナも俺に一任するようだ。


「わかった。その内容で文句はない。相手のダンジョンを選ぶからリストアップしてくれないか?」


 そう言うとダンジョンモニターに変態のダンジョンが映し出される。なんと全15階層のダンジョンだった。うちの五倍! すげぇな!


「あいつ意外と頑張ってたんだなー」

「そんな他人事のように言わないでください! マスターだってやればできるんですから!!」

「ヨルシア、リリーナの言う通りじゃぞ? 特にここは混沌地のダンジョンじゃ。100階層も夢ではない!!」

「ご主人様! ダンジョン大っきくなったら私、ぬいぐるみだらけの階層が欲しいです!」

「ケロっケロ♪」


 みんな好き放題言いやがって。俺は働きたくないって何度言えばわかってもらえるのだろうか?


 まぁ、とりあえず階層を選ぶか。っと、言っても変態のダンジョンはスケルトンやゴースト専用といったちょっと陰気臭い階層が多い。つか、八割がアンデッド階層だ。

 リリーナ曰く、うちのダンジョンにはネクロマンサーがいないのでアンデッド系モンスターの管理ができないらしい。下手に手を出すと、DPが湯水の如くなくなるんだってさ。アンデッドはそれくらいピーキーな魔物なんだな。南無阿弥陀……。


  しかし、アンデッドを外すとなると残り二階層から選ばなければいけない。一階層にある廃墟フィールドか、14階層にある全長6キロほどもあるアーチ型の洞窟フィールドのどちらかだ。


 うーん……、碌なのがないな。しかし謎なのがこの14階層の巨大空間。何のために作ったのだろう?


「なぁ、リリーナ。なんであの変態こんな広い空間作ったんだろうな?」

「きっと対勇者用の戦闘フィールドかと思います。15階層にあるマスタールームを守るために作ったのではないでしょうか? 対勇者ともなると、その戦闘も凄まじいものになると予想されます。どのダンジョンも戦闘用フィールドを作成されてますよ?」

「ほう、なるほどな。じゃあ、俺もいずれ作んないといけないのか?」

「そうですね。特にマスターの場合、広範囲殲滅魔法などが多いので、このような戦闘フィールドがあった方がよいと思います」

「じゃ、これ貰っとくか!」


 俺は階層を選択し、ケロ君の元ダンジョンの計二階層と巨大地下空間の一階層を手に入れた。めっちゃウマウマ! でも、ダンジョンバトルはしばらくはやりたくないな。だってめんどいし。


「ヨルシアよ。階層の順番はどうするのじゃ? 階層の設置もセンスが問われるぞ?」

「うーん、悩むよな? ケロ君の元ダンジョンは地下水脈の迷宮と沼地のフィールドだから重ねて置きたいし」

「ケロケロっ!」


 ケロ君は特に階層の順番に拘りはないらしい。どこでもいいようだ。リリーナも何も言ってこないので、とりあえず俺の好きなようにする。こんな感じだ。


1階層:巨大戦闘用フィールド


2階層:ゴブリン迷宮(集落はフィールド)


3階層:地底湖迷宮 (地底湖はフィールド)


4階層:地下水脈迷宮


5階層:沼地フィールド


6階層:地底魔城フィールド


 いきなり全6階層にまで増えた。中小ダンジョンとしては異例の階層内容だ。しかもケロ君の眷属が、そのまま俺の眷属へとスライドしたので、戦力も一気に増加した。


「リリーナ。新規でうちのダンジョンへとやってきた眷属を教えてくれ」

「はい。まずはパケロさんの一族が56名。その眷属の魔蝦蟇(ギガン・トード)が43体、鬼牛蛙(オーガ・トード)が39体となっております」

「そうか。割り振りはどうなってる?」

「地下水脈の方に、魔物の魔蝦蟇(ギガン・トード)鬼牛蛙(オーガ・トード)が住んでおり、沼地フィールドの方には魔族のパケロさん一族が住んでおります」

「わかった。リリーナありがとう。じゃあ、後で挨拶しに行くか」

「そうですね。良いと思います。それとこれはただの疑問なんですが、マスターは何故戦闘用フィールドを1階層に置いたのですか? 通常はマスタールームの一つ上の階に設置するのが定石でしたが?」

「ああ、それ? さっきリリーナが対勇者用って言ってたろ? どうせ強い奴が来て地下まで侵入されるなら、被害広がる前に一階層でパパッと仕留めた方がいいかなーって思ってさ。どうせ相手しなきゃなんないなら早いうちに終わらせた方がよくない?」


 リリーナとエリーがジト目でこちらを見てくる。あれ? なんか間違ったこと言った?


「リリーナよ。此奴はダンジョンの意味をわかっておらぬのか?」

「エリー様、うちのマスター馬鹿なんです……」


 なんで? なんかいきなりディスられた。酷い……。


「ヨルシアよ。お主はダンジョンマスターなのじゃぞ? なぜ、こんな時ばかり率先して最前線に立つのじゃ? いつも引き篭もりたいと申しておったではないか? マスターたる者、座して待たなければならぬ時もある。ダンジョンで侵入者の体力を奪い、お主が必ずトドメを刺すことの方が大事じゃぞ?」

「マスター、その通りです。それにマスターが私たちを守るのではなくて、私たちがマスターを守るんです。勘違いしないでください!! マスターもいい加減、私たちのこと信用してくれてもいいじゃないですか!!」


 そうか。確かにそうだよな。俺がそんな行動をすればお前たちのこと、全然信頼してないぜって言ってるようなもんだよな。リリーナの言うことはごもっともだ。


 それならお言葉に甘えて引き篭も……。


「ちなみにマスター。これも勘違いしてほしくないのですが、引き篭もってよいとは言ってません。仕事をしないのは絶対ダメです。なので仕事はちゃんとしてください。いいですね?」


 リリーナさん、やっぱりパネぇな。マジで俺の思考を読めるんじゃねぇか?


「わっ……わかった。……考えときます(小声)それじゃあ、1階層は入れ替えるか?」

「いえ、それも考えたのですが1階層にこれだけ広いフィールドがあるのなら、ゴブリダさんたちのように野良のモンスターが魔素につられてやってくるかもしれません。様子見で1階層をこのままにしておいても面白いかもしれませんよ?」

「うむ。リリーナの言う通りじゃ。強い魔物が住み着いたら眷属にするのも一つの手じゃな」


 なるほど。みんなよく考えてんなー。頼りになるわ。


「それじゃ、今日はここまでにするか。ケロ君も久しぶりに仲間に会えることだし、挨拶は明日にしよう。ケロ君、今日はゆっくりしてこいよ」

「ケロぉ〜♪」


 おっ、ケロ君嬉しそうだな。良かった、良かった。


「仕方ありませんね。それに今日はマスター、ちょっと……その……カッコ良かったです……(小声)」


「は? 『ちょっと、郭公(カッコウ)食べてきます?』だ? ……いや、どうしても食べたいならいいけどさ。あまり変なもん食べて腹壊すなよ? って、出す穴はあるけど出るものがないか。リリーナ良かったな! 下痢はしないみたいだぞ? はっはっはっ!!」

「何の心配をしとるんじゃおのれはぁ!! いっぺん死んでこんかぁぁぁーーい!!」



——ズドォォォォォーーン!!!

 


「ぶべらぁぁぁぁーーー!! なんでーー!?」


 久しぶりにリリーナの上段回し蹴りを喰らった。しかも旋風脚気味の三連撃。マジ威力がハンパない。下級悪魔なら即死だぞ!? つか、あの変態よりもリリーナの方が強いんじゃね?

 とりあえずうちのダンジョン最強はリリーナに確定で!


 リリーナ恐るべし!!



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