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第35話 格の違い

「いやぁぁぁぁぁ!! マスターが、マスターが、エリー様!! マスターが死んじゃうよぉぉ〜〜!!」


 マスタールームで顔を涙でグシャグシャにしたリリーナがエリーに抱き着き喚いていた。それをエリーとルルがリリーナを困った様子で宥めている。


「こっ……これ、リリーナ落ち着くのじゃ!! 堕天使化したヨルシアにあの程度の炎で傷なんてつけられぬぞ? ほら、よくモニターを見るのじゃ!!」

「そうですよ、お姉様! ご主人様は負けません!!」


 マスタールームのモニターに映し出されているのはファマトが放った地獄の炎。通常の悪魔ならひとたまりもない。一瞬で炭と化すほどの威力だ。それが三分経ってもなお轟々と燃え盛っていた。


「えっ……エリー様の嘘つきー!! マスター、いないじゃないですかぁー!! わだじ、戦ってぼじぐないっで言ったのに゛ー!! うわぁぁぁぁぁーーーん!!」

「りっ……リリーナ!! 待て、待つのじゃ! そんなに泣くではない! まだヨルシアは死んではおらぬぞ?」

「お姉様、お気を確かに!!」


 幼女ボスと幼女が泣き喚く金髪美女を慰めている。あまりの混沌(カオス)っぷりにパケロは巻き添えにならないよう遠目で三人を見ていた。


 そしてパケロはこう思う。……サキュバス、パネぇなと。

 ただ、それと同時にパケロがヨルシアを囲む炎の異変に気付いた。そしてモニターに指を差し大きな声で叫ぶ。


「ケッ……ケロッ!! ケロケロっ!!」


『マスターだ! 生きてる!!』と。しかし、残念なことにパケロの声は一切届かずリリーナパニックはしばらく続くのだった。





「クフフ。全てを燃やし尽くす地獄の炎です。死にはしないと思いますが、かなりのダメージにはなるでしょう!! 貴方が悪いのですよ? 私を馬鹿にするから!!」

「……いや、馬鹿になんてしてないぞ?」

「なっ!?」


 自身が放てる最大級の煉獄魔法。これで殺せはしないと思ってはいたが、自分の予想以上にダメージを与えていないことにファマトは愕然とした。

 そしてファマトは見た。舞い上がる青黒い炎の中で、中央だけを避けるようにして炎が湾曲しているのを。


「ほっ……炎が奴に届いていない!? まさか、レジストされてるのか!?」


 そして、その中央が更に湾曲し、黒翼の羽撃きによって魔法陣ごと炎が消し飛んだ。



 ——パリィィィィィィン!!!!



 消し飛んだ魔法陣がキラキラとした魔素に変わり、その降り注ぐ魔素の中をヨルシアがゆっくりと歩いてくる。


「ひぃぃぃぃー!! ばっ……馬鹿なっ!? 全てを焼き尽くす地獄の炎だぞ!?」


 あまりの実力差にファマトから悲鳴が漏れる。そして魔法陣を消し飛ばした際に当てられた巨大な魔力のせいで、ファマトは腰を抜かし立ち上がることすらできなくなっていた。

 一気に恐怖はファマトを支配し、ヨルシアから遠くへ遠くへ行こうと、尻を引き摺りながらも離れていった。見兼ねたヨルシアが声を上げる。


「……おいおい、逃げるなよ」

「なっ……なんなんだお前は!! 何故だ!? 同じBランクだぞっ!? なのにどうしてこうも違うんだっ!! ひっ……卑怯じゃないかっ!!」

「なぁ、お前キャラ崩壊してるけど大丈夫か?」

「ぅぅうるさいっ!! 卑怯者!!」


 おふっ……変態に卑怯者呼ばわりされたんですけど? つか、変態が俺をディスるんじゃねぇ!! ムカついたのでギロリと睨むと変態は小さく悲鳴を漏らした。怖がるなら言わなきゃいいのに……。


「そもそもサシでの勝負を選んだのはお前だぞ? それだったら始めから普通のダンジョンバトルにしとけばよかったんじゃないか?」

「わっ……私に、ささ、さささ指図をするな!! 私は次期魔王候補者だぞっ!? それなのに、それなのにお前はぁぁ!! 下級悪魔からの成り上がりのクセに!!」

「はぁ……。下級だの下僕だの体裁ばかり拘るお前のクソのようなプライド。わかってるのか? それになんの価値もないことを」


 俺は右手に力を込めると一気に魔力が膨れ上がった。あまりの魔力量に右腕に青い稲妻が迸る。ファマトの顔が恐怖に歪んだ。


「ひぃいやぁぁぁーー!!」

「一つ教えてやるよ。俺とお前の違い」


 俺はそのまま大きく右腕を振りかぶり全力で変態に殴りかかった。渾身の右ストレート。



——ズドォォォォォォォーーン!!!



 拳はファマトの顔面ギリギリでピタっと止まった。ナイス寸止め!


 そしてその極大の衝撃波はファマトを傷つけることなく通り抜けていったが、しかし、背後にあったコロシアムの客席などは木っ端微塵に砕け散ってしまった。残ったのは衝撃波で大きく抉れた数キロにも及ぶ大地だけだった。


 ファマトを見ると口から涎を垂れ流し、目を開けたまま気絶していた。

 おぉ、文字通り白い灰と化してる。燃え尽きたのか? つか、もしかしてやり過ぎちゃった? けど仕方ないよね? だってさ……。



「お前と俺では【格】が違うからな」



 その瞬間コロシアムにアナウンスが流れた。


【ダンジョンバトル終了。勝者ヨルシア!】







 うし、勝った!! 意外と楽勝だったな。リリーナが汚いことをする奴って言ってたから警戒してたけど、そんなことなかったし。ただ、初撃で魔眼入れてきたり、アイテム持ち込んで1000体に分身したり、不意打ちで魔法撃ったくらいか? 特に大したことなかったけど。

 

 ふと辺りを見渡すと、コロシアムは元の原型を留めておらず、ただの瓦礫と化していた。一瞬にしてブワっと冷や汗が出る。


 ……あれ? 俺やらかしたか? いやいやいや、俺のせいじゃない……きっと。さっさと帰ろう。責任問題になったら面倒だ。

 目の前に来た時と同じ扉が出現したので、俺はそそくさとコロシアムを後にした。あー、疲れた。風呂入ってゆっくりしよう。





 マスタールームに戻ると、何故かリリーナがエリーに泣きながら抱きつき、エリーはそれをあやし、ルルは二人を見てアワアワしていた。カオスっ!! 何がどーした!?


 あれ? ケロ君は……、うん。案の定困ってるな。色んな意味で大変だったようだ。


「おーい、戻ったぞ!」


 俺がみんなに声を掛けると、全員が一斉にこちらに振り向き声を上げる。


「マスタァー!!」「ヨルシアっ!!」「ご主人様ぁ!!」「ケロぉ!!」

「待たせたな。ちゃんと勝った……ぞ??」


 エリーに抱きついてたリリーナが、恐ろしい速さで俺の方へとシフトし抱きついてきた。そのスピードはまるで飢えた肉食獣のようだ。一瞬、捕食されるかと思ったが、俺の耳元でリリーナがぐずってるので言葉を飲み込んだ。こう見えても空気は読める。……と、思う。


「ぐすっ、……生きてる」

「おい、勝手に人を殺すな!」

「そうだマスター!? かっ、身体に怪我はありませんか?」


 そう言ってリリーナは、俺の身体をペタペタ触り始める。オカンかっ!?


「無傷だよ。心配し過ぎだって」

「……マスターは私に心配されるの迷惑ですか?」


 リリーナがムスっとしてこちらを睨む。おいおい、喜怒哀楽が激しいな!? びっくりするわ!


「そんなことはねぇよ。その……、心配掛けて悪かった。とりあえず無事に勝てたよ。ありがとうな」

「ど、どういたしまして。あと……、マスター、その、おかえりなさい」

「おっ……おう、ただいま」


 そう言って、こちらを見上げるリリーナは、悔しいが凄く可愛かった。遺憾にも少し愛おしく思ってしまったほどだ。……解せぬ。


「なんじゃ2人とも!! 帰って早々にイチャつきよって! ヨルシアよ、妾も抱きしめてたもれ!」


 この暗黒幼女は何を言ってるのだろう? 寝る時は仕方なく一緒に寝てるだけであって、俺にそっちの気は全くない。が、しかし、神様の命令を無視するのも、いかがなものかと思い、一応優しく抱きしめておく。

 ルルもエリーのように言おうか言わないかを迷ってるっぽいので、とりあえず優しく頭を撫でといた。……うん、嬉しそうで良かった。


 そしてケロ君を見ると正座をし頭を下げていた。何故、土下座?


「ケロッ。ケロケロケロケロケロケロケロケロケロケロケロケロケロ…」


 出たぁーー!! ケロ君必殺のゲシュタルト崩壊。リリーナさーん! 出番ですよー!


「マスター、どうやらパケロさんはマスターと蛙人族に伝わる【天壌無窮の盃】を交わしたいようです」

「はっ? てんじょうかずのこ? ……ゴフッッ!!!!」


 ノーモーションでリリーナさんの腹パンがきた。つか、あの変態より技のキレがヤバいな。そしてあの汚物を見るような目。消毒されそうだ……。やはりリリーナさんは【格】が違う!!


「リリーナさん、マジわかんないんで、教えてもらってもいいですか? 後、ほんと生まれてきてすいません」

「全くもう! 次、ふざけたら城から追い出しますからね!」


 えっ、俺マスターなのに?とは、言わず黙ってリリーナの話を聞いた。


「いいですか? パケロさんは今回の件でマスターにもの凄く感謝してるんです! この【天壌無窮の盃】は一族に子供が生まれ繁栄しても全員マスターに永遠の忠誠を誓うっていう契約儀式なんですよ?」

「えー、おーもーいー」

「ケロォッ!?」

「マスター……、貴方って人は……」


 何故かリリーナさんがキレそうだったので慌てて弁解した。


「まっ……待て! リリーナ落ち着け! 俺はもっと軽い、いや……ソフトな感じでいいんだ! そんないきなり一族みな将来永劫あなたの眷属になりますって言われても困るだろ?」

「……そうですね。マスターにそんな一族全て背負う甲斐性なんてありませんですしね。ゴブリダさんたちがいい例です」


 よし、乗り切った!! リリーナ、怒る、ダメ!!


「だからケロ君! そんなに気にするな。君はもう、うちの一員なんだ。楽にいこう!」

「ケッ、ケロ。ケロケロぉー……」


 うん、今のはなんとなくわかった。ケロ君はきっとお礼を伝えてくれたんだな。

 これで一件落着と思いきや、マスタールームにアナウンスが流れた。


【ダンジョンバトル報酬の受け渡しを行います。ダンジョンコアの階層追加を起動してください】


 あっ、報酬貰うのすっかり忘れていた。



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