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第31話 蛙人族 パケロ・シュレーゲル

 ダンジョンの面接にやってきた蛙人族(フロッグマン)のパケロ君。言葉が通じないという多少の手違いはあったが、リリーナが蛙言語(フロッグワード)を取得していたため、なんとかこのトラブルを切り抜けることができた。いやー、意思の疎通って大事だね!

 

「さて、パケロ君。なぜウチのダンジョンを選んだのか教えてくれるかい?」

「ケロッ! ケロケロロロケロッケロッ! ケロ…………」


 パケロ君の話が思いのほか長く『ケロ』が大量に続くという思わぬ緊急事態が発生した。文面がゲシュタルト崩壊し兼ねないので以下省略で。まぁ、リリーナに翻訳してもらい俺なりにまとめるとこんな感じだ。


 親が魔王をやっていた→勇者に倒される→一族復興を託される→しかし自分では上手くできなかった→魔界新聞で俺の活躍を見る→なぜか俺に憧れる→眷属になり俺のもとで一族を復興したい。以上だ。


 つか俺、魔界新聞に載ったの!?  いつの間に!?  ちなみに新聞見出しは『ラグリスの森に期待の新星現る!』とのことらしい。新聞の内容も、かなり脚色され一般庶民が喜びそうな記事となっていた。最弱のゴブリン族のみで数百と押し寄せる冒険者たちを号令一つで全滅させたとか、単独で聖騎士団に殴り込みをかけ一団を追い払ったなどだ。

 まぁ、実際やりはしたが記事に書かれているような格好良いものではなく、もっとドロ臭く卑怯な方法なのだが。


 つか、ケロ君のとーちゃんって魔王やってたのか。名前聞いてもピンっと来なかったから、きっと俺と同じように辺境送りにでもされてたのかな?


 しっかし、魔王って大変だよなー。襲名した時点で人族の討伐リストに名前が載るんだぜ?  聖女の神託とやらで住んでる場所まで特定されて命狙われるなんてマジで勘弁してほしい。むしろなぜ他の奴らは魔王になりたがるのだろう?  ……謎だ。


「あの、マスター?  それでパケロさんはどうされるのです?」

「もちろん眷属になってもらうさ!  彼、有能っぽいし。それに真面目なのがいい!!」

「ケロっーー♪♪」


 パケロ君、いやケロ君と呼ぼう。ケロ君が嬉しさのあまり変な舞を踊っている。ヨカッタネ。


 ケロ君はこんな(なり)をしてるが魔王の息子だ。実力も申し分ないだろう。むしろ俺よりもこのダンジョンの主に向いているのでは?  よし、ケロ君を育てて彼にこのダンジョンを任せてしまおう!  そして俺は隠居して毎日ダラダラの余生を過ごす。いいじゃないか!!


「リリーナ、すぐにケロ君の部屋の用意を。とびきり良い部屋をやってくれ」

「……マスター、おかしいです。普段やる気ないくせにこういう時だけ、やる気をみせるなんて絶対おかしいです」

「えっ!? なっ……何が?」


 リリーナの目がギラリと光る。最近、リリーナが俺のことを理解し過ぎて本当に怖い。こういう勘はめっちゃ鋭いんだよな。


「ぜっ……全然! 怪しくないよぉ〜。なにがおかしいの〜?」

「目が泳いでますよ? しかもクロールで。それでマスターの本音は?」


 リリーナさん、俺の思考を読めるのかっ!? 怖い、まじで怖い。何かテキトーに……。



――ジャキンっ!!



「いやー、ケロ君って見るからにエリートじゃないですか! だからケロ君の一族が復興したら、このダンジョンをケロ君に任せて、俺は隠居しよーかなーなんて。ハハっ……。ジョーダンっすよ? 冗談?」(早口)

「ダっ……ダメに決まってるじゃないですか!! 次そんなこと言ったら叩っ斬りますよ!!」


 ひぃぃぃぃーーー!! リリーナ怖っ!! めっちゃ怖っ!! 思わずケロ君と抱き合ってしまったじゃないか!! しかし彼とは何か合うものがあるな。草食系男子同士頑張ろうな!!


「まぁ、それはさておきケロ君や、君のステータスを見せてくれんかね?」

「ケロッ! ケロケロット!」


 おっ、どうやら見せてくれるようだ。うむ、素直でめっちゃいい子だ。



□ □ □ □ □ □ □

名前:パケロ・シュレーゲル

称号:小蛙魔王の一人息子/若き頭領/忍頭

種族:蛙人族(フロッグマン)

位階:忍蛙(シノビフロッガー)(Cランク)

保有魔力量:25580


種族スキル

蛙忍術


スキル

小蛙流抜刀術/和傘体術/影移動


魔法素質

水霧

□ □ □ □ □ □ □



「おぉー!! リリーナ級じゃないか!? ケロ君強いな!!」

「当たり前です! 仮にもパケロさんは元魔王様のご子息ですよ?」

「ケロケロっ♪」


 ケロ君が嬉しそうだ。彼は褒められて伸びるタイプだろうか? それにしても下級悪魔だった頃の俺って弱すぎたんだな……。しみじみ思う。さらに俺より弱いゴブリンたちって……。


「じゃあ、リリーナ。ケロ君は採用でいいな?」

「そうですね。問題ないかと思います。では城に部屋を用意させますね」

「ケッ……ケロッケロケロケロケロッケロ!」


 ケロ君が身振り手振りで何やら慌ててた。


「マスター、どうやらパケロさんは城住まいではなく、ダンジョンの階層に集落を作りたいようです」

「そうなの?」


 ゴブリダもそうだったが、族長になると城に住むより階層に集落を持つ方が魔界社会的にステータスになるようだ。


「しかし、そうなると階層が足らないな。ニ階層の地底湖はスライムさんのテリトリーだし、新たに階層を用意するしかないか」

「そうですね。しかし現在のDPは4250Pしかありません。すぐにはパケロさんに任せる階層を用意することはできませんよ?」

「ケロぉーー!?」


 ケロ君が、うそーんっと言わんばかりに吃驚していた。すまんな。うちは城を建てたばかりで金欠なんだ。


「マスター、この二週間で侵入してきた冒険者は15名。以前と比べて激減しております。少なく見積もっても階層用や、集落建設用のDPが貯まるまでおよそ三週間は必要です」

「そうか、リリーナが言うのなら間違いないな。しかし困ったな。ケロ君は即戦力だから早いうちに住処を用意してやりたいんだが」

「ケッ……ケロぉぉーー」


 ケロ君が、お願いしますよ兄貴ぃー!のような視線を向けてくる。


「うーん……、エリーに頼むか?」

「いけませんっ!! 絶対それは駄目です!! 以前、マスターがエリー様よりDPを頂いてましたが、あれは本来であれば違法です! 万が一、それが世間にバレた場合、エリー様のお立場を悪くするかもしれません!! ですので、それだけは絶対にやらないでください!」

「えっ、そうだったの!? 知らんかった……。エリーに悪いことしちゃったな」


 自分が何気なく頼んだことだったので若干凹む。すまんエリー。


「以前いただいたDPはエリー様が本部に内緒でプールされていたポイントでしたから何事もありませんでした。しかし、それ以外の方法でDPを引っ張ってこようものなら一発レッドカードです。最悪ダンジョンお取り潰しになる恐れもあります」

「うん、リリーナ。やはり真っ当に貯めていこうか」

「それがよいと思います」


 しかし、これでは問題の解決にはならない。どうしたもんかなー。


「マスター、早急に新たな階層を手に入れる方法がないこともないのですが……」

「えっ? 何かあるの?」


 ピキっと、リリーナに血管が浮かぶのが見えた。

 ははっ、普通に聞いただけなのに何故か地雷踏んだぜ! 恐ろしや……リリーナ地雷原。


「待て、リリーナ!! まだ、怒るな! 本当に知らないんだ。教えてくれてもいいじゃないか!」

「本当にもうっ!! もう一度、魔学でやり直した方がいいんじゃないですか!?」

「そっ、それは嫌だ……。お願いします!! リリーナさん! 俺にはもうリリーナしか頼れる人がいないんです!!」


 何故かリリーナが頬を赤く染めモジモジし始めた。 ……イケる。この仕草さえ出たらリリーナさんはポンコツに変わる。


「……仕方ないですね。今回だけですよ? 次は自分で調べてください」


 ――予想通り(ニヤリ)


「ダンジョンバトルを受けるんです。ダンジョンバトルに勝てば他の迷宮主の階層を奪うことができます。そうやって弱くて役に立たないダンジョンは淘汰され強いダンジョンができ上がっていきます。我々の脅威は何も冒険者だけじゃないんですよ?」

「あぁー、そんなんあったなー!! でも、確かこれって申請出して相手が受理しないと成り立たなかったよな?」

「そうですね。ですが心配には及びません。地底魔城ができてからというもの、おびただしい数のDB(ダンジョンバトル)申請が届いております。マスターは興味がないと思い黙っておりましたが」

「そうなの!?」

「はい。ですので、今なら相手を選びたい放題です」

「じゃあ、DBやっちゃう? サクっと階層頂いちゃう?」

「マスター、簡単に言いますが他の迷宮主の狙いはこの地底魔城ですよ? 万が一、負けた場合この階層を根こそぎ持ってかれるんですよ?」


 ……Oh、ハイリスクハイリターン。

 城を持っていかれるのは嫌だな。しかし、そういうリスクがないと階層を奪うことなんてできないか。確かにショボい階層なんていらねーよな。


「リリーナ。もしかしたらカモれる馬鹿なダンジョンマスターがいるかもしれん。一通りDBの申し込みを見せてくれないか?」

「わかりました。くれぐれも無茶なことは考えないでくださいね? ではマスタールームの方へ移動しましょう」

「おう。じゃあ、ケロ君も一緒に来てくれ」

「ケロっ!」


 俺には一つ確信があった。


 あれだけ厳しかった魔学の日々。常に先生方に怒られていたが、何も怒られていたのは俺だけではない。クラスの半数以上は何かしらバカをやって怒られていたのだ。


 それは何を意味するのか?




 そう、それは……。




 ダンジョンマスターにはバカが多いっ!!



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