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第29話 鬼人族 黒鬼騎士長ゴブリダ

 くっ……苦しい……。息ができない……。

 かっ……身体も締め付けられている!? ……なっ、何かの呪いなのか!?

 ……まさかっ!! あの加齢臭地獄の再来!? 俺はクンカクンカ匂いを嗅ぐと、予想に反してめちゃくちゃいい匂いがする。手で顔を圧迫するものを触ると、とても柔らかくムニムニした。あっ…あれ……!?





 俺はハッと目を覚ますと、身体にはエリーが、顔にはリリーナの豊かな胸が押し付けられていた。


 ……おいおい。


 なんだコレは? お前らいつの間に侵入してきたんだ!? つか、自分の部屋で寝ろやぁぁ!!


「おいっ!! お前ら起きろっ!! つか、なんでここで寝てんだ!? ふざけんなっ!! 部屋へ帰れ!! ハウス、ハウス!!」

「朝からうるさいのぅ!! ヨルシアどうしたのじゃ?」


 エリーが呑気に欠伸をしながら起き上がった。


「どうしたのじゃ? じゃねぇよ!! なんでここで寝てんだよ!?」

「んっ? なんでじゃと? それはお主がここで寝てるからじゃろうが!  お主の方こそ、妾とリリーナをほうっておくとはどういう了見じゃっ!!」


 ……あれ?  なんかエリーがめっちゃ怒ってるんですけど?  これは俗にいう逆ギレじゃないっすか!?  マジ卍!!


「リリーナも一言いってやるのじゃ!!」


  やっべ。もしかしてリリーナさんまでキレてらっしゃる!?


「あの……、マスターは私と一緒に寝るのは嫌ですか?」


  なっ……なんだと。この俺がリリーナさんに萌えを感じるだとっ!?

  上目遣い&お淑やか&谷間強調のまさかのトリプルアタック。これがギャップ萌えというヤツなのか!?  普段のリリーナさんを知らなければやられていたかもしれん。


 しかしどうした? こんなにお淑やかなんて。なんか変だぞ? リリーナさん何かの病気だろうか?


「……リリーナ?  何か変な物でも拾い食いしたのか?  道に落ちてたカリントウとか。ちょっと茶色いヤツ」

「食べてませんし拾い食いもしてません!!  しかもその道に落ちてるカリントウって犬のアレですよね!?  なんでそうなるんですか!?  人が真面目に聞いてるのにふざけないでください!!」


 よかった。どうやら病気とかではなさそうだ。しかし、どう答えよう? 本当は一人でゆっくり寝たいと言いたい。


 が、しかし。この状況でそんなことが言えるのだろうか?  俺の返答を待っているリリーナとエリーの目がヤバい。かなりイっちゃってる。言葉選びを間違えたら俺は滅っするかもしれん。

 それになんだこの威圧感(プレッシャー)は?  独りで寝たいというだけなのに、なぜここまでの威圧感(プレッシャー)を受けるのだろうか。


「えっと……ですね。個人的にたまには独りで寝たいというか……」


 その瞬間、リリーナとエリーの殺気が膨れ上がる。しかもエリーに至っては三面六腕の鬼神のようなオーラを纏い始めた。


 えっ?  ちょっと待ってエリーさん。勇者かなんかと戦うんですか?  そのバトルフォームはマズいって。身内に放つオーラではない。しかもなんか既に肌がピリピリするんですけど?


 つか、アカンわ。これおもっきし地雷踏んでね? 俺、滅っするかも!?  挽回せねば!!


「いやでも、リリーナさんやエリーさんが居ないと寂しいというかなんというか。やっぱり一緒に寝たいかなー!?  二人がいないと人肌が恋しいというか、今更独りでなんて寝れないっすよねー!!  もう一緒に寝れる俺は超幸せ者ですっ!!  大事な二人を置き去りにして独りで寝てさーせんっ!!  マジさーせんっ!!」(涙目)


 どっ……どうだ?  なんとか地雷は回避できただろうか?  ゆっくりと二人の方を見る。


「まっ……マスター。そんなに私のことを……」

「始めから素直にそう言えばいいものを。ヨルシアは恥ずかしがりやじゃのう」


 たっ……助かったぁぁー!! あのピンチを潜り抜けた!! めっちゃ手汗やべぇ!!


「じゃあ、マスター。これからもずっと私とエリー様が一緒に寝てあげますね♪」



 ごふっ……、俺のプライベートは死んだっ!!







 それにしても朝から疲れたなぁ……。


 そう、精神的に疲れたっス。それでも仕事しないといけないなんて酷じゃね!?

 週休七日制度がある国ってねーかなー。あったらそっこうでダンジョンマスター辞めてその国に移住するし。

 ただ、俺がダンジョン前の集落を破壊したせいか、今日は冒険者が全くやってこなかった。良い日だ。これがずっと続けばいいのに……。


 俺は、ぼーっとしながらマスタールームの二階テラス席で正面にある超大型モニターを見ていた。するとゴブリダの姿が変わっていたことに気が付く。


「なぁ、リリーナ? ゴブリダの奴なんかまた大きくなってねえか?」

「あっ、本当ですね。マスターよく気付きましたね! すぐ解析します」

「ヨルシアはサボっておるように見えて、実はちゃんと見てるんじゃのう」

「うるせぇよ。ほっとけ」

「……マスター。解析が完了しました。ゴブリダさんは進化してゴブリンからホブ・ゴブリンにクラスアップしたようです」

「おお! あいつ、進化するスピードめっちゃ速いな!! クラスアップって種族進化だろ? すげぇじゃんあいつ」

「じゃな。恐らく高レベルの冒険者たちを倒したせいじゃろう」

「よし、ゴブリダに会いに行くか!」


 そして、俺たち三人は一階層のゴブリンの集落へ転移した。





「おう! ゴブリダ!」


 戦闘訓練をしていたゴブリダに片手を上げて軽く挨拶をする。進化しても相変わらずの鬼瓦顔だが、身長が俺と同じ180cmほどあった。しかも筋骨隆々でマッチョになってるし。パッと見た感じ強そうだ。たった数か月でこいつもデカくなったな。


「主様!! ははっーー!!」


 ゴブリダはすぐさま片膝を突き俺に頭を下げてきたので、訓練をしていた他のゴブリンも跪いてしまった。めんどくせぇー。もうシカトしよう。


「ゴブリダ、お前また進化したんだな」

「はっ! 主様のおかげでこうしてさらに【力】を得ることができました!!」

「……ふむふむ、ヨルシアよ。こやつのステータスを見てみよ。特殊個体(ユニークモンスター)に進化しておるぞ?」


 エリーがそう言うのでゴブリダにステータスを見せてもらうことにした。


「……ステータス・オープン」



□ □ □ □ □ □ □

名前:ゴブリダ

称号:族長/魔剣持ち/黒鬼騎士団長

種族:鬼人族(ホブ・ゴブリン)

位階:黒鬼騎士長(ゴブリンナイトリーダ)(Cランク)

保有魔力量:17160


スキル

剣術/盾術/指揮/威圧/鬼怒気


魔法素質

火炎

□ □ □ □ □ □ □



「おおー!! ゴブリダめっちゃ強くなったな!!」

「はっ! 有難き幸せ!!」

「マスター、ゴブリダさんですが通常のホブ・ゴブリンに比べますとかなり強いですね」

「そうなのか?」


 俺は、ゴブリダの隣にいたホブ・ゴブリンにもステータスを開けさせた。



□ □ □ □ □ □ □

名前:No name

称号:黒鬼騎士団員

種族:鬼人族(ホブ・ゴブリン)

位階:黒鬼騎士(ゴブリンナイト)(Dランク)

保有魔力量:7860


スキル

剣術/槍術/盾術/集団戦闘


魔法素質

なし

□ □ □ □ □ □ □


 あらら。ほんとだ。位階ランクも一つ高い。ゴブリダの奴、本当に特別個体(ユニークモンスター)になったんだな。それにしてもゴブリダの部下【No name】って……。


「おい、ゴブリダ」

「はっ!!」

「こいつら全員に名前を付けてやれ」

「わっ……私がでしょうか!?」

「おう、これは命令だ。頑張れよ!」


 何故か、ゴブリダの顔が青くなっていた。しかし、これは族長の定めだろう。ゴブリダには頑張ってもらうしかない。


「ヨルシア、お主は顔に似合わず鬼じゃのう」

「エリー様、そうですね」


 二人にジト目で睨まれた。なんで!?


 リリーナに理由を聞くと、ゴブリンの繁殖率や生存率を見ていくと、ホブ・ゴブリンでない個体はやはり死亡率が非常に高い。生まれてくるゴブリンにいちいち名前を付けていたら、とてもじゃないが管理がしきれないようだ。


 まぁ、確かに一理あるな。仮に面倒くさくなって、ゴブリンAとかBとかいう名前をつけられようものなら俺ならキレる。しゃーないか。


 ゴブリダにはホブ・ゴブリンまで進化した個体に名前を付けてもらうことにした。心なしかゴブリダがホッとしたようだった。すまんねゴブリダ。


 それにしても、本当にゴブリダたちは強くなった。このダンジョンに腰蓑一つで入ってきたとは到底思えん。腰蓑族から今では厳つい漆黒の鎧に身を固めた黒騎士様だぜ? 立派になったな!!


 マスタールームに戻り、一息ついているとリリーナが話しかけてきた。


「マスター、明日より謁見の間にて面接希望者との謁見があります。朝10時より18時までを予定しておりますので、準備のほどよろしくお願いします」


 はっ? 面接? なにそれ?


「……マスター、何それって顔をしてますが、昨日私に相談しましたよね? 城を管理する人が要るって」

「あぁー、言った! 言った!!」


 だってこの城めっちゃ広いから独りで掃除するなんて仕事を通り越して拷問になる。つか、やりたくない。


「じゃあ、リリーナが面……」



――ジャキンっ!!



 その無言の圧力(爪剣威圧)、マジでやめてもらいたい。そのうちトラウマになりそうだ。


 しかし面接って俺がやんの!? 途中で飽きちゃって取り返しのつかないことになるかもよ? どうなってもほんと知らないからね?

 

 まぁ、そんな俺の言い分などリリーナに通るはずもなく眷属面接の準備が着々と進むのだった。

 つか、仕事したくねぇー!! 頼むっ!! 神よ、俺に休みを!!

 って、エリーだったわ。……解せぬっ!!(涙)




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