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デビダン! ~目指せダンジョンニート物語~  作者: バージョンF
1章 ダンジョンマスター爆誕編
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第2話 地上へ転移

 今日でこの学生寮ともお別れか……。

 俺はそう思いながら鏡を見て身嗜みを整える。頭から生えている黒い両角よし、清潔感のある黒髪よし、寝癖なしっ!

 そして今日のため、奮発して買ったメフィストブランドの黒いコート一式。三年間のバイト代全てぶっ飛んだ。悪魔は紳士であれ。どっかの偉い悪魔公が言っていたセリフである。悪魔族は格式高い種族なので、少しでも変な服装をしようものなら、すぐに噂が立つ。ほんと面倒くさい種族だ。


 ちなみに何故こんなに気合い入っているかと言うと、魔界を発つにあたって暗黒神様からダンジョンコアを下賜されるからだ。


 めちゃくちゃ緊張する……。だって魔界のトップと会うんだぜ? ヤバくない? 神だよ? 神? 普通は魔王クラスじゃないと会えない人よ? まぁ、人じゃないけど。


 しかしまぁ、一生に一度でも会えたらラッキーな神様だし、せっかくだから顔でも拝んできますか!





 暗黒神様の宮殿へと着くと、今回合格したダンジョンマスター117名がひしめき合っていた。スッゲー魔族。密度が高すぎて気持ち悪い。特に上半身裸の種族は最悪だ。服を着ろっ! 服を!!


 あっ、こら俺のコートを踏むなっ! つか、あのオークの野郎、口から大量の涎を垂らしている……おいっ! こっち来んな! 唾っ! 唾っ! コートにつくからぁぁ!!


 そうこうしていると城のバルコニーから人影が見えた。


「皆の者、静粛にっ!! 暗黒神様の御前であるっ!! 控えおろぉぉーーうぅ!」


 側近の女魔人が声を張り上げて皆に促す。するとバルコニーから銀髪の幼女が現れた。


 はっ? アレが暗黒神様なのか? えらく可愛いもんだな。


「皆の者、妾が暗黒神エルアリリー・サタニエルである。よくぞダンジョンマスターの資格を手にしてくれたのじゃ。今、魔界は急激な魔素不足が原因で力なき魔族が餓死するという事態に陥っておる。非常に由々しきことじゃ。これを防ぐには皆が地上に降り立ち、様々な魔素を吸収し魔界に送るしか手立てがないのが現実じゃ。だが、ダンジョンコアは年間に作成できる個数が決められておる。故に、ダンジョンマスターになる者を選定する必要があったのじゃ」


 あっ、そうだったの? 全然知らなかった。試験に合格するのに必死で考える余裕がなかった。


「選ばれし者たちよ!! お主らのその力で魔界を救ってほしい! そして魔素を大量に送り込んでくれた者には褒美を与えよう!!」


「「「「おおおおぉぉぉぉぉーーーー!!」」」」


 えっ? はっ? まわりが何か激しく興奮してるのだか? やばい、俺だけのれていない。周りから暗黒神コールまで出てるし。アイドルのコンサートかっ!! つか後ろのリザードマン! ヘッドバンキングやめてもらえません? 鶏冠(とさか)がガンガン背中当たってるから!! 痛いっ! 痛いって!!


「魔界に栄光あれー!!」


 そうこうしてるうちに暗黒神様の演説終わっちまったじゃん!! このクソトカゲ! 文句言おうと思ったが、金色のギョロ目が気持ち悪かったのでやめておいた。

 

 ふっ、なんとでも言え。俺は無用な争いをしないタイプなのだ。


 宮殿を出る時、全員に水晶玉のような物が配られた。これがダンジョンコアだ。俺の金の卵でもある。ダンジョンを作りたい場所にかざすだけで、あら不思議。あっという間にダンジョンが完成するという便利アイテムだ。これを割られたり、無くしたりするとダンジョンマスターの権利を取り上げられてしまうので、注意が必要だ。


 ダンジョンコアをもらうと、そのまま広場にある転移ゲート前へと呼び出された。各自決められたダンジョン設置ポイントに強制転移される。俺はどこへ派遣されるのだろうか? こればかりは運だ。


「次ぃー、ラグリス大森林行き、666番前へ」

「えっ? あいつラグリス行きなのか?」

「ついてねーな」

「あーぁ、まだ若ぇのに……」

「初心者殺しか……」


 何故かまわりがザワついていた。

 えっ? 何? ヤバイとこなの? もしかして怖い人いるとこ? ちょっ、マジ勘弁なんですけどー!? 怖い人ヤダ……。


「666番っ!! さっさと来い!!」

「はっ……はいっ!!」


 なぜか叱られた。……解せぬ。


「これからお前が行くとこは冒険者たちがウヨウヨいる激戦区だ。討伐されないように踏ん張れよっ!!」


 はっ? 聞いてないんですけど? ちょっ……待てよっ!!


「あのっ……!!」


——ドンっ!!


 俺はそのまま転移ゲートへと押し込まれ強制的に転移させられた。


 なーんーでー激ー戦ー区ぅーーー??


 俺はグルグル回る渦に飲み込まれ、生まれて初めての地上へと転移した。

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