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第25話 キュクロープスの加護

 冒険者たちをリリーナとエリーに任せ、俺とルルはマスタールームを出てすぐ隣にある錬金室へと移動した。


「うわぁー、ご主人様! この錬金室とっても素敵ですね!!」

「んっ? そうか?」

「はい! しかもこの錬金釜、最新モデルじゃないですかっ!! あっ、凄い。この棚、ダンジョンインベントリー連動なんですね!! あっ、武器庫もある! すごーい!!」


 おいおい、この子なんでこんなに興奮してんの? 勝手に会話が進行していく怖さ。リリーナとはまた違った恐怖が俺を襲う。


「おい、ルル。落ち着け」

「はいっ、ご主人様!」


 根は真面目で聞き分けの良さそうな娘なんだが……。

 そういえば魔学んときも、こんな感じのクラスメート居たなぁ……。『お疲れ様でーす』って言われた一分後にまた『お疲れ様でーす』と言ってくる不思議な奴。そんなに疲れてねーよとツッコミたかったが、悪い奴じゃないから扱いが困ったんだよな。同じ匂いがプンプンする。


「では、ルル。お前の錬金の腕を見たい。基本的にゴブリンたちの武器や防具、そしてお前が必要だと思った物をドンドン作っていってもらいたい。棚にある素材は自由に使ってくれて構わない」

「はいっ! 頑張りますっ!!」


 俺は見本に武器庫から剣や防具などを取り出した。ヨルシアブランドの武具だ。


「こんな感じだ。ちなみに作った物にこの悪魔のエンブレムも入れてもらえると嬉しい」

「これはご主人様が考えられたエンブレムですか?」

「そうだ。今はこれを配下の印としている」

「凄くカッコいいです!! 早速作ってもいいですか!?」

「おっ……おう!!」


 なっ……中々、見込みのある娘じゃないか! このエンブレムの良さがわかるなんて。

 以前渡したリリーナとエリーの指輪にも、このエンブレムを刻もうとしたら、めっちゃ嫌がられたからな。


 ルルが素材棚から、鉄鉱石や革などを次々と入れる。

 おぉ……手慣れているな。さすが、錬校!(魔界錬金学校の略)


 うん、うん。やる気があるのはいいことだ。彼女にはマジで錬金を頑張ってもらおう。


「ご主人様! 作ります! ……えいっ!!」



ーーボボンっ!



 ルルが魔力を注ぐと、そこには俺が作ったと同じような鉄の剣が出来上がっていた。

 仕上がりもかなり良い! いや、むしろ俺よりいい感じじゃないか?


「ルル、さすがだな。とても良い出来だ」

「本当ですかっ!? ご主人様ありがとうございます!」

「なぁ、ルル。この剣にアビリティは付けられるか?」

「アビリティですか!? できないことはないんですが、あの、その……」

「どうした? 難しければ、いいぞ。聞いただけだから」

「できます! やらせてください!!」


 無理をさせるつもりはなかったが、本人がやりたいのならやらせるか。


「じゃあ、頼む」

「……ゴクリっ」


 なぜ唾を飲む? 不安しかないのだが? あれ、これってフラグか? 止めた方が良いパターン?

 しかし、時既に遅し。ルルは錬金釜に鉄の剣と、魔鉱石を入れて魔力を注いだ。

 錬金釜が禍々しい色の煙を噴出する。




ーードゥルドゥルドゥルドゥルドルンッドルン!!




【鉄の剣は呪われました】



 どこかで聞いたような呪いの音楽だった。

 つか、アビリティ付けようとして、呪いが付くってどういうこと?? ナニコレ、斬新っ!!



「ごっ、ごごご……ごめんなさぁーーい!」



 なぜか、ルルが泣き出してしまった。


「おっ、おい、何も泣かなくても。失敗は誰にでもあるのだから」

「実は私、アビリティを付けるのが苦手で、いつも付けようとすると、なぜか装備が全て呪われるんですぅーー、うぇぇーん!!」


 えっ? 100%で呪い装備?

 何それ!? 逆にスゲェェ。呪い装備ってデメリットもあるけど、それさえ目を瞑れば、とても強力な装備になるよな?


 俺は急いでリリーナをマスタールームに呼びに言って、禍々しくなった鉄の剣を解析してもらった。


「えっ? これ鉄の剣なんですか? どう見ても何百と人を斬った魔剣にしか見えないんですけど?」

「だろ? ルルが作ったんだぜ?」

「ごめんなさぁぁい!!」

「こら、泣くな! 褒めてるんだって!!」

「えっ? ほ……め……てる?」

「そうだ!」

「だって、私アビリティ付けられないんですよ? 呪いの装備しかできないんですよ?」

「いや、逆に凄えよ! つか、リリーナ。解析できたか?」

「はい、終わりました。まず、呪いがかかったことで、この剣の切れ味が増し攻撃力が倍になってます」

「スゲェ!!」


 この剣を装備すれば、今まで以上にゴブリンたちが強化されるな。……まぁ呪われますけども。


「マスター、まだこれからです。そして呪いのせいで人族が装備すると同士討ちの効果をもたらします。ちなみに魔族は強制的に狂戦士(バーサーカー)と化すようです」


 やはりか。でも、狂戦士(バーサーカー)か。頭がちょっとヒーハーなアレだけど許容範囲じゃねぇか? その分、人族どもの脅威となるし。


「ほら見ろ、ルル! 凄えじゃねえか!! ルルのおかげで、このダンジョンはもっと強化されるぞ?」

「ほん……と、ですか? 私、学校でアビリティ付与の授業でいつも馬鹿にされてきたので……うぇぇぇーん」


 やれやれ、またか。スキルに泣き虫とか付いてないだろうな?

 すると、エリーも気になったのか錬金室へと入ってきた。

 ちょいちょい! みんな冒険者無視っすか? まぁ、いいけどさ。


「ほう、呪いの武具か。これまた珍しいのう。しかも狂戦士化のスキルまでついておるとはな。もしやお主にはキュクロープスの加護でもついておるかの?」

「キュクロープス??」


 俺が聞き返すとリリーナが教えてくれた。


「マスター、暗黒界の鍛冶神の1柱ですよ」

「ルル加護持ちなのか!!」

「えっ? えっ? えっ?」


 何故か、ルルの頭に?マークが大量に現れる。


「なんじゃ、誰も教えてはくれなんだか?」

「はい……、えっと他の人にステータスを見せたことがなくて……」

「そうか。じゃあ、とりあえずルルのステータス見てみるか」


 すると、ルルが顔を真っ赤にして今にも泣きだしそうになった。

 ふふっ……、今日も絶好調で地雷を踏むな。マジ勘弁してほしい。

 もし二つ名付けてもらえるなら地雷男でいいや。あっ、なんか映画タイトルっぽくて逆にいいかも。


「つか、ルルさん? そもそもなんで泣きそうなの!? 俺知らない間に、触れるもの皆傷つけるみたいな男になってたの?」

「だから、なんでマスターにはデリカシーがないんですか!! ほんとにもう! ねえ、ルルちゃん。恥ずかしいかもしれないけど、ダンジョンのためにステータスを見せてもらえないかな?」

「くすんっ……わかりました。お姉様。……ステータス、オープン!」


 なんだ、恥ずかしかっただけか。にしても、泣きそうにならなくても……。




□ □ □ □ □ □ □

名前:ルル

称号:魔錬術士/人形術士

種族:妖精族

位階:魔猫精(ケット・シー)(Cランク)

保有魔力量:12600


スキル

人形格闘術/錬金・錬成


魔法素質

傀儡/生活


加護

キュクロープスの加護

□ □ □ □ □ □ □



「へぇー、ルルはやっぱ加護持ちだったんだなー」

「マスター、傀儡の術も魔法素質ではすごくレアな素質なんですよ」

「うむ、ルルなら今来とる冒険者クラスならボコボコにできるじゃろうな」

「うーー、恥ずかしいです!!」


 ルルが恥ずかしそうしてたので、ステータスを閉じさせてやった。


「それにしても、ルルの人形格闘術ってなんだ?」

「これはですね、私が傀儡の術を使いますと、この背中にいるニャン太が戦ってくれるんです」

「ほう、こやつニャン太と申すのか! 愛いではないか!」


 ルルが試しに傀儡の術を使うと、ニャン太は命を吹き込まれたように踊り出した。


「きゃーー、マスター! ニャン太可愛いですよ!!」

「ルル、そちは傀儡の術が上手いのう!」

「はい! 私、昔から人形遊びが好きで、気付いたらこんなことができるようになってました!」


 なるほど。人形遊びも昇華するとあそこまでできるようになるのか。好きこそ物の上手なれとはいうが、生まれ持った素質があったのだろうな。


「じゃあ、ルル。これから錬金の方は頼むな。好きなだけやってくれていいから」

「はい! ご主人様、ありがとうございます。ほら、ニャン太もお礼言って」


 ニャン太が、こちらへダッシュで近づいてきて、お辞儀をしようとする。

 うむ、可愛いもん……だ……な?



――ズンッ!!



 ニャン太が途中で躓き、そのまま頭から俺の息子のいる神殿へロケットダイブをした。

 ぐはぁぁぁぁ!? 頭硬ぇぇ!!! 岩石!?



「本日ニ回目なんですけどぉぉぉぉ--!? 俺、呪われてますかぁぁぁー!!?」



 俺の悲痛な叫びが錬金室に木霊した。



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