第1話 ダンジョンマスター誕生
プロローグ回です。
「次ぃー、受験番号666番 前へ!」
……はっ?
壇上から突如自分の受験番号が呼ばれた。
いやいやいや、きっとこれは夢だ。夢に違いない。じゃなけりゃこの下級悪魔の俺がダンジョンマスター試験に合格なんてしない!!
「聞こえないのかっ! ヨルシアっ! 前へ!!」
「はいっっっ!!!」
試験官の先生に怒鳴られた。
怖っ!
あのミノタウルスの先生マジ怖いんだよな。視野が360°あるから黒板に字を書いてても、俺がサボってると気が付いて蹄鉄を投げてくる熱血教師なのだ。居眠りなんてしようものなら愛用の斧が跳んでくるし…。この前なんて、ヤギ男君(ヤギの悪魔)が首刎ねられて全治1ヶ月だし。
って、そんなことよりも、そう、これは夢じゃないんだ!
俺はダンジョンマスター試験に合格したんだぁーー!!!
⌘
ここは魔界にある魔族養成学校、通称【魔学】の迷宮科。魔界中から様々な種族が集まり、一人前の魔族になるのを目指している。
その他にも超エリートクラスの魔王科や、中間管理職を目指す中ボス科、とりあえず卒歴が欲しいだけの普通科などがある。
魔界は位階社会だ。学校を出ていないとわかっただけでも雑兵扱いされる。なので皆、単位をとるのに必死だ。そして卒業したら、地上に君臨する名のある魔王のもとへと就職を果たすのだ。
就職後、メキメキと力を付けて頭角を現すものは独立して新たな魔王となったり、厄災と呼ばれる存在になったりすることもある。人類を脅かしその名を世界中に広めるのだ。しかし、そうなるのは魔王科出身のごく僅かな者だけで、その他の者は魔族カーストに従って強者の下につくしかない。
俺にはそれが耐えられなかった。
そんな魔族サラリーマン人生まっぴらゴメンだ。しかし俺は下級悪魔。冒険者や王国騎士達を打ち取ってランクアップしない限りは魔族カーストの最底辺になる。そんな奇跡に近い確率にかけて働くなんて拷問に等しい。だからどうせBETするなら俺は現実味のある迷宮科にかけた。
迷宮科とは名の通りダンジョンマスターを育成する教育機関だ。しかし、誰でもダンジョンマスターになれるわけではない。厳粛な適性検査を三年かけて行われるのだ。
正直、ダンジョンマスターは弱くてもよい。迷宮を如何に存続させるかの判断力が最も必要とされる。そんな迷宮科だからこそ俺たちにとって唯一、一獲千金を目指せる場所なのだ。受験シーズンともなると生徒の応募数も多く常に倍率が高い。入学するのにも一苦労である。
だが俺はその最終試験に合格したのだ。今日より一国一城の主となった。そう、魔王以外で他の種族を部下につけれる者はダンジョンマスターだけだ。
ふはははははははは!! 笑いが止まらんよ! 死ぬほど勉強して良かったーー(嘘)!!
しかし、俺は部下がほしくてダンジョンマスターを目指したのではない。正直、魔王争いや勇者退治なんてどうでもいい。と、いうか興味がない。
俺の本当の目的……それは……
働きたくないからだ!!