第18話 怒らすと怖い人
俺たちがエリーの宮殿からダンジョンへと戻ってくると、ゴブリンたちの集落が冒険者によって襲撃されてしまった。間引きといって、ダンジョン内のモンスターを手当たり次第狩る冒険者たちによくある手法だ。
冒険者たちもゴブリン狩りまでは順調のようだったが、二階層にいるクリアスライムの奇襲に遭い、死人が出たため撤退していったようだ。その時、冒険者をニ人ほど倒せたがクリアスライムを四体も狩られてしまった。
「マスター、ダンジョン内の被害状況がわかりました。報告します。まずはゴブリン族からですが、ゴブリンソルジャーが10体、ゴブリンが43体が死亡しました。次にスライム族ですが、クリアスライムが4体死亡です。しかし2匹が新たに加わり残存戦力がゴブリン族33体、スライム族5体となります」
「…………わかった。ありがとう」
「マスター……? 大丈夫ですか?」
リリーナから心配されてしまった。
いかんな。そんなに顔に出ていたのだろうか?
別に悲しいとか、可哀想とか、そんな感傷には浸る気はない。
……こう見えても俺は悪魔だから。
それにあいつらさ、このダンジョンにいきなり住み着いてくるわ、色んな物拾ってくるわ、勝手に子供作るわで毎回驚かせられるんだよな。
そして会う度に面倒くさくて疲れてたのが本音だ。
でも…………
でも、ゴブリンたちはいい奴らだった。
みんなが俺を慕ってくれた。だからこんな面倒くさい気持ちになるんだろうな。
「………リリーナ、やり返すぞ!!」
「はいっ!!」
⌘
きっと冒険者たちは再びダンジョンを訪れる。それまでに準備は全て整えるつもりだ。DPも惜しまない。まずはゴブリンたちの集落の復興からだ。
家などは壊されほとんどの者が地面で横になってる。錬金室でポーションを作り渡したが、回復薬系はどうやら才能が無いようでゴブリダたちの怪我の治りは悪かった。それでも彼らには非常に感謝された。
まずはこの集落の残骸の処理だ。集落の建物は建て直す予定なので、壊されていない建物も全て残骸と一緒にダンジョンインベントリーに収納する。あっという間に何も無い大部屋へと戻した。
「ゴブリダ、この部屋を少しイジるからみんなを部屋の外へと移動させてくれるか?」
「かしこまりました! 全員、部屋の外へと退避だっ!!」
ゴブリンたちが全員出たのを確認し部屋を改築する。
冒険者襲撃の際も100㎡しかない狭い空間だったから被害が拡大したのだろう。だからまずは部屋の拡張だ。集落フィールド(500㎡)を作成し、いきなりDPが5000ほど吹き飛んだ。必要経費だ。問題ない。
そして次にゴブリンたちの家を作成する。あいつらすぐ増えるから一軒家ではなく、マンションのような集合住宅にするか。壁にそって天井ぎりぎり(30m)まで作成していく。ついつい頑張り過ぎて、8000DP(一棟1000P)も使ってしまった。これでゴブリンが1000体以上は住めるだろう。つか、部屋の中が魔界にある九龍城のようになってしまったな。まぁ、いいか。
ついでに武器庫に直接リンクする倉庫も作っておいた。(300P)これですぐに武装もできるだろう。
中央部にスペースがまだ余っていたのでゴブリンたちの訓練設備(500P)も作成した。各自修業に励んでくれ! 集団行動大事!
最後にリリーナが瘴気があれば傷の治りが早くなるといっていたので、小部屋からモレネティアを集落の方へ移し替えた。これでゴブリンたちも世話がしやすいだろう。
これだけ建てても、まだスペースが余っている。後は、ゴブリダの自由にさせるか。
「ゴブリダ、部屋の割り振りは任せる。足りない物があれば随時リリーナに報告してくれ」
「有り難き幸せっ!! 我らのために……、主様!! ありがとうございます!!」
ゴブリダの後ろに居た他のゴブリンたちも頭を下げてくる。
「まだだ。次はこの集落の出入り口通路に結界を張る。……【通行守護結界】!! 【認識阻害結界】!!」
種族進化したせいか、凄く扱いが難しく苦手だった結界術も難なく使えるようになった。
このニつの結界は俺の許可した者しか通れない結界と、俺の指定した魔族や魔物以外の者が、この通路を見ると、周りの風景に溶け込み通路が視認できなくなる結界だ。これを集落に続く通路全てに結界を張った。
きっと冒険者には、ただの行き止まりの壁にしか見えまい。これで安全対策は完了だ。結界を破るには俺以上の力で破るか、高等解呪魔法を使うしかない。しばらくは大丈夫だろう。
「ゴブリダ、引き続き集落を上手くまとめてくれ。頼んだぞ」
「はっ!! 主様のためなら喜んで。しかし主様、進化されたのですね! 以前とは、纏っている魔力量が恐ろしく違いましたので。本当に主様、おめでとうございます!!」
「いや、ゴブリダすまない。そのせいで助けに来るのが遅れたんだ」
「主様! 我らに主様を尊敬する者はいても恨む者など誰一人おりませぬ。逝った者たちもこのダンジョンを守れたことを誇りを持って逝きました。これからも変わらず主様に忠誠を誓います。我らの忠誠、受け取っていただけるでしょうか?」
なんか刺ーさーるー。それにおーもーいー。
まぁ、それでも慕ってもらえるというのは嬉しいもんだけどな。だから俺は一言こう言った。
「ゴブリダ、……わりぃ。なんか重いわ」
「えぇぇぇー……」
「ちゃんと受け取ってあげてくださいっ!!」
今まで黙って見てたリリーナのツッコミが集落に木霊した。
⌘
「まったく! 少しは真面目に仕事してたから口を挟みませんでしたが、なんでいつも最後にふざけるんですか!?」
「いや、だって現に重かったから……」
「マスターはこのダンジョンのトップなんですよ! 従業員全員の人生背負ってるんだから当たり前です!!」
「いや、だから重いって……」
「アホかぁぁーー!!」
――ズバァァァァン!!
「ぶべぇらぁぁぁーーーーー!!」
リリーナの延髄蹴りが俺の後頭部へと炸裂した。そんなにダメージは無いけど、これ下級悪魔だったら死んでたな……。
「はぁはぁ……、普通にしてればカッコいいのに……(小声)」
「んっ? なんて?」
「復活が早いんじゃボケぇぇーー!!」
「ぐはぁぁぁぁーーー昇◯裂破!?」
リリーナの奴、相変わらずバイオレンスだな。今の進化してなかったら滅してたぞ? まじで強くなっておいてよかった。そのうち、背中に文字が浮かび上がる技とか繰り出しそうだな。……ヒィィー。怖っ!!
⌘
そうこうしながら、俺たちは一階層の下り階段前まで歩いてきた。
「リリーナ、DPは残りいくつだ?」
「急にまとも……じゃなくて、えー、現在27100DPが使用可能です」
「じゃあ、ここに一階層のBOSS部屋でも作るか」
2000P使用し、降り階段前に大きな部屋を作成する。ここは戦闘用スペースだ。なので、ちゃんとした造りにしよう。
まず内装は全て石造りにし、石柱をランダムに並べた。壁には青い火の燭台を均等に並べ決戦地の雰囲気を醸し出してみた。これで占めて1800P! 致し方なし。
「あの、もしかしてがマスター戦うんですか?」
「なんだ心配してくれんのか?」
「しっ……心配なんて、ししししてないです!! ただマスターに死なれたら困るから言ってるだけです!!」
「大丈夫だ! リリーナもサポートしてくれるんだろ?」
「当たり前です!! 何があってもマスターは死なせません!!」
「じゃあ、俺は絶対に負けねぇ!」
んっ? なんか変なこと言ったか? リリーナの顔が真っ赤だ。どうしたのだろう? アレの日か?
「リリーナ、どうした? もしかしてアレの日……ぶふっべらぁぁーーー足が顔にめりこんでるんですけどぉぉーー!!」
——ドゴォォォーン!!
リリーナに蹴りを喰らい、俺はそのまま壁へとめり込んだ。あーぁ、せっかく作ったのに……
「はぁはぁ……カッコいいと思った私がバカだった」




