第14話 事後処理
初防衛から六日が経った。
本当は三日目の朝には復活したのだが、ここぞとばかりにもうニ日ほど寝込んでやった。さすがに五日目はリリーナが怪しんでいたので、不本意ながら今日は起きることにする。
俺が寝込んでる間は、リリーナが代わりに仕事をしてくれたようだ。もうサブマスター権限与えてあるし、全部リリーナさんに任せればいいんじゃね?と、思ったが間違いなく鉄拳制裁されるので口には出さない。
さて、あの後の事後処理なのだが、死んだ山賊たちは身包み剥がされ半分はゴブリンたちの腹の中、もう半分はクリアスライムのエサになっていた。お陰でクリアスライムが七体まで分裂し増えていた。順調にダンジョン戦力が増えていく。
「マスター、そろそろ仕事してもらえますか?」
「んっ? リリーナ、今日なんかやることあったっけ?」
「惚けても無駄ですよ? まずはマスターのスキル能力の検証や、ゴブリンたちのダンジョン拡張にあたっての打ち合わせです」
くはぁー、面倒くせぇー。なんでこうも仕事を思い付くの? まさに仕事の鬼だな。
リリーナさんも、なぜかやる気満々だ。逃げるのは無理そうだし諦めよう。
「はぁ……、じゃあ、ゴブリンたちの方からやるか」
「ため息つかないでください! 私が悪いことしてるみたいじゃないですかっ、もう!! じゃあ、報告しますよ? ちゃんと聞いてくださいね。現在、ゴブリダさんたちはローテションでダンジョンの採掘を行なっていますが、人数が増えたせいで採掘器具が足りません。補充をお願いします」
「あいつら増えるの早ぇーな! で、いくついるの?」
「はい、現在86名まで増えたので最低でも30セットは必要です」
「えっ? ちょっと待て! この前まで50そこそこじゃなかったか? あいつらそんな勢いで増えてくの?」
「きっと魔素濃度にも影響してるんじゃないでしょうか? 幸いこのダンジョンは混沌地ですので、いくら増えても問題はないどころか、この調子でドンドン配下を増やしていきましょう!」
「ならいいけど。繁殖率が凄かったからビックリした!」
「それよりも、ゴブリダさんたちが育成してるモレネティアが花をつけました」
「もれ……? なんだっけ?」
「モレネティアですっ! 以前、ゴブリダさんたちが苗を拾ってきたじゃないですかっ!!」
「あぁ! あったなー、そんなの!」
「あったなーじゃないですよ!! これ、凄く重要なことなんですよ!? 基本モレネティアの生育は難しいのに、ここは魔素が多いって理由なだけでドンドン成長しちゃうし、そしたら花咲くし。まぁ、いいことなんですけどね」
「それで花が咲くとどうなるんだ?」
「はい、瘴気が発生します」
「瘴気?」
——バキバキッ……
リリーナさんが、両手で指を鳴らす。やっべ!! ボコられる。
「まっ……待て! すまん、しょうきね! ショウキ? あれだろっ! ほらっ! こういう紅茶のカップや皿とかのことを言う……」
「それは食器じゃボケェェェェーー!!!」
――ズドォォォォォン!!!
「ぶぼらぁぁぁぁぁーー!!!」
リリーナさんの右ストレートが俺の顔面にめり込んだ。
めっちゃ痛い!! そしてまた三日三晩寝込みたい!! いや、できれば一か月ほど部屋に入院したい。でも口に出すとボコられそうなので言わないでおこう。
「ほんと信じられないことばかりです! なんで魔族なのに瘴気知らないんですか!? お風呂って何?って聞いてるもんですよ!?」
「いや、風呂くらいわかるよ! 当たり前じゃん!」
「その当たり前のことがわかってないから言ってるんです!! いいですか? 瘴気っていうのは簡単に言えば魔素濃度が濃い空気です。人間には毒で、私たち魔族には力を与えてくれます」
「おおー! 凄いじゃん! もっと増やそうぜ!」
「増やしたいのは山々ですけど、モレネティアの株分けは非常に難しいので、こればかりは地道にやってくしかありません。株分けの時期はまだまだ先ですので、とりあえず今は見守りましょう」
「じゃあ、株分けできるようになったらゴブリダたちにお願いしよう。それまでに生育する部屋をいくつか作っておくか」
「そうですね。それが良いと思います。それと小部屋ですが現在、ダンジョンに集落を除く部屋が四つありますが?」
「増えたなー。ゴブリダたちほんと働くよね」
「……マスターもゴブリダさんたちのように働いてくれるといいんですけどね」
しまった。地雷を踏んでしまった。ジト目でリリーナが俺を睨んでる。
うん、聞かなかったことにしよう。
「……まぁ、いいです。拠点として使ってるのが三つ、モレネティアの生育してる部屋が一つですが、どれも現在マスタールームほどの広さです。これをゴブリダさんに頼んで倍以上にしてもらおうと思いますがよろしいでしょうか?」
「んっ。任せる」
「わかりました。では指示しておきます。それとダンジョンインベントリーにあった、大量の土砂や鉱石ですが希少金属や魔石を除き、全て魔素へと変換致しました」
「えっ? まじ? あれ、錬金素材なんすけど?」
「大丈夫です。ゴブリダさんたちの装備錬金に使うものは残してあります。それで変換した魔素量ですが18900となりました。通常よりも魔素濃度が濃い土地のためか、非常に高い変換率です。他のダンジョンではこうはいきませんよ? そして毎日溜まってる魔素総量の7320、先日の山賊たちから回収した魔素2600これを全て送信しますがよろしいでしょうか?」
「おう! 送れ送れ! つか、山賊ショボいな。なんだ、アレか山賊はマイナス補正がかかる仕様なのか?」
「何を言ってるんですか!? これが普通なんですよ!! 他のダンジョンマスターたちが、いったいどれだけ苦労していることか……。マスター、ここが混沌地じゃなかったら、とっくに死んでますよ?」
さらっとリリーナさんが怖いこと言ってくる。
でも運も実力の内と言うし結果オーライでいいんじゃね?
さて、報告はこれで終わりかな? いや、これは絶対終わってる! いや、むしろ終わり終わり!
ふぅー、仕事終了!! 今日も疲れたなぁー!
「……どこ行くんですか? まだ終わってませんよ?」
リリーナさんが低い声で話しかけてくる。
「あれっ? まだ終わってなかったんだー。ははは、勘違いしてた! わりぃわりぃ!」
「……絶対、ワザとでしょ?」
この後、毎日3時間、それを一週間かけて俺の能力の検証が行われた。
リリーナって変なとこ拘るよな。魔族タイプA型なのか? ちなみに俺は生粋のO型だ。はぁー、めんどくさっ。




