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デビダン! ~目指せダンジョンニート物語~  作者: バージョンF
1章 ダンジョンマスター爆誕編
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第13話 ダンジョンへの侵入者

「どうしたんですかっ!?」


 リリーナがバスタオルを巻いただけの、あられもない姿で飛び出してきた。


「おいっ、リリーナ!! 服! 服っ!!」

「そんなことよりも何があったんですか!!」

「あっ、そうなの? いやー、なんか侵入者が入ってまいりました!!」


 俺はビシッと綺麗な敬礼を決めた。


「なんでそんな気楽に構えるんですかっ!? すぐゴブリダさんに指示を出してください!!」

「アイアイサー!!」


 ダンジョンに入ってきた奴らは、全員で13名。初侵入者でこの数は多くね?

 はぁー、ヤダヤダ。これって仕事終わって帰ろうと思ったら急に残業を頼まれるパターンのやつやん。めっちゃ萎えるんですけど?


「今から、敵戦力の解析をします」

「えっ? そんなことできんの? リリーナさんパネぇな!」

「モニターに情報を映し出すので、リンク権限の許可をください」

「おぅ! わかった! でも面倒くせぇから、もうリリーナをサブマスターに登録しとくわ!」

「あなたって人は……。でも、信頼してくれてありがとうございます。……敵戦力、解析完了。モニターに表示します」


 リリーナの解析が完了し、モニターに侵入してきた奴らの情報が映し出される。今回、侵入してきた奴らは冒険者ではなく山賊だった。ここを警戒してか、ダンジョンの入り口付近でたむろっている。まるで魔界コンビニで深夜に集まってるヤンキー魔族のようだ。


一番レベルの高い奴でレベル36の山賊頭。その他の奴らは似たり寄ったりなのでゴブリンたちで問題なく対処できそうだ。ただ、あの山賊頭だけはゴブリダに対処させよう。


「……マスター、迷宮魔法の念話リンクが完了しました。ゴブリダさんとの通信が可能です」


 まっ……マスターですって!? リリーナさんが俺のことをマスターと!!


「リリーナさん……、もっかい言って」

「あの……、早くゴブリダさんに指示しないとぶん殴りますよ?」


 いかんいかん! 調子にのってしまった。危うくリリーナさんの鉄拳制裁の餌食になるところだった。


「ゴブリダ、聞こえるか?」

「主様!? はいっ!! 聞こえます!」

「ダンジョン入り口付近に山賊たちが13名侵入してきている。この侵入者たちを討伐してほしいのだが頼めるか?」

「なんとっ! 是非、お任せください!! 主様のご期待に応えてみせます!!」


 おおー、ゴブリダさん気合い充分だな。


「ゴブリダさん、私がナビゲーションします。敵の位置情報をみなさんに直接リンクしますので、活用してください」

「おぉ! リリーナ様、頭の中にダンジョン内の地図が浮かびます。この赤い点が敵ですね」

「そうです。そして一つだけ赤点滅がありますが、それが山賊頭です。山賊頭だけレベルが高いのでゴブリダさんにて対処お願いします」

「リリーナ様! かしこまりました!! お任せください!!」


 さてと、準備が整ったな。それじゃ、この山賊たちには早々に退場してもらおうか。





「親分! この洞窟、相当奥が深いですぜ!」

「ちっ、やはりダンジョンの可能性が高いな。せっかく良い隠れ家を見つけたと思ったのによ。モンスターは見つけたか?」

「いや、まだ気配はありやせん。どうしやす? 進みますか?」

「そうだな……行くか! 仮にダンジョンだとしても所詮一階層。出てくるモンスターなんて大したことねーだろう」

「しかし分岐がかなりありますぜ? 親分、行くなら斥候を出した方がいいんじゃないっすか?」

「……よしっ、斥候を二人出しながら進め! 危なけりゃ、すぐに引き返すぞ。まずは全員、カンテラの灯りを付けろ」

「「「へいっ!!」」」





「リリーナ、山賊が動いた。この先にある第一拠点にゴブリン隊を回せ」

「了解です。ゴブリン各員に告ぐ。敵戦力が進軍中。第ニ、第三小隊はすみやかに第一拠点へと移動し迎撃態勢を整えて下さい」


 九人編成で組んだゴブリン小隊が、第1拠点へとたどり着いた。ちなみに各隊にはゴブリンソルジャーが三体づつ配備されている。もちろん隊長格だ。


「次に、ゴブリダたちは山賊の裏を通って背後から、仕掛けられるようにナビをしてやってくれ。挟んで追い詰めるぞ」

「了解しました」

「さてと、仕掛けるか!」


 こうして初めてのダンジョン防衛が始まった。





「しっかし、なんでこんな人の入ってこないような場所にダンジョンができたんでしょうかね?」

「だよな? 普通、ダンジョンって開けた場所にあるもんな」

「もしかして、お宝が隠されてるレアダンジョンたったりしてな! がははは!」

「おい、おめぇら! 無駄口叩くんじゃねぇ!!」

「「「へい、親分っ!!」」」


 山賊が談笑しながら歩いていると、斥候に出していた山賊の1人が戻ってきた。


「親分!! この先に部屋の入り口があります!!」

「何っ? モンスターハウスかもしれねえな。まずは半数で部屋に入れ!! 中の様子を確認してから俺たちも入るぞ」

「「「へいっ!!」」」


 山賊たちが扉の前まで辿り着き、斥候が恐る恐るドアを開ける。


「ヘッジ! どうだ? モンスターはいるか?」

「暗くてわかりませんが、気配は無いようです」

「じゃあ、お前ら先に入れっ!!」

「へいっ!」


 斥候を含め、七人が部屋へと入った。カンテラで辺りを照らすが、モンスターを確認できなかったようだ。



「親分! 大丈っ……ぐへぇだとぶっ……」


 斥候の頭を突如、頭上から降ってきた鉄の短槍が貫く。


「上だっ!! モンスターがいるぞー!? 気をつけぇれぼろぉ……」



 天井の蔓草にぶら下がったゴブリンたちが、次々と短槍を冒険者に向けて投擲する。ゴブリンたちの奇襲に驚き固まる山賊にゴブリンの短槍が襲い掛かった。視界も悪く、しかも落下スピードが加わった槍は避けようがない。簡単に山賊の身体を貫いた。奇襲に虚をつかれ陣形を崩した山賊たちはなすすべもなく一人、一人と倒れていく。


「親分っ! まずい! 引きましょう!! ゴブリンが槍や斧で武装してやすっ!!」

「なんでゴブリンなんかが武装してんだよっ!! 部屋に入った奴らは??」

「もう既に、全っ……めばろぅぼっ……ぶふっ……」


 投擲された短槍が配下の山賊の顔を貫いた。


「くそっ……お前らっ!! 引けぇぇぇ!! 引けぇぇぇ!!」


 だがその指示は遅く、リリーナによってゴブリダたちが山賊頭の退路を塞いでいた。


「逃がしませんよ」

「ふんっ、ゴブリンリーダーか。一丁前に装備なんて着込みやがって! 邪魔だどけぇぇぇ!!」



 ——ガキィィィーーン!!



 山賊頭とゴブリダの剣が交差する。力は互角。が、しかし剣の性能は天と地ほど差があった。

 何度も撃ち合ううちに山賊頭の剣は、ゴブリダの炎の魔剣によってへし折られてしまう。


「なっ……なんでゴブリン如きが魔剣なんて持ってん……」



 ――スパンっ!!



 山賊頭の首が綺麗に宙を舞った。そして、それと同時に炎の魔剣の魔力で山賊頭の身体に真っ赤な炎が引火する。

 炎に包まれた山賊頭を見た山賊たちは、恐怖で固まりゴブリンたちにあっという間に殲滅されてしまった。そして、ダンジョン内にゴブリンたちの勝鬨が木霊した。





「いやぁー、勝った勝った!! 完全勝利っ!! マジ勝てて良かったー!!」

「そうですね、見事な勝利でした」

「あれっ? リリーナさん? どうしたの?」

「今回の指揮は……そのっ……ちょっと良かったですよ」

「うぉぉぉぉーー!! リリーナさんに褒められた!? めっちゃ嬉しい! リリーナもサポートしてくれてありがとな!! さすが一級秘書官!!」

「そっ……そうですかっ!? わかってくれればいいんです」


 俺が嬉しさのあまり両手でリリーナの右手を握り、ブンブンと縦に振っているとリリーナの身体を隠していたバスタオルがヒラリッと落ちた。

 いかんっ! そしてパイ○ン!!


「キャァァァァーー!! こぉのド変態がぁぁ!!」


 ふっ……いいぜ! 今のは俺が悪い。すでに覚悟はできてる。(0.02秒)



——ドゴォォォォーーン(腹パンめり込み音)



「ブハッボゲバラァァァァァーー!!! 思ったよりダメージがでかいぃぃぃーー」


 リリーナのスクリューの掛かったボディブローが俺のどてっ腹に直撃する。

 こうしてダンジョン初防衛に成功したのだが、何故か三日三晩生死の境を彷徨い続けることになった。


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