第12話 ステータスオープン
ステータス見せるのをゴネただけで、なぜか命の危機に晒されてるんですけど?
つか、リリーナさんの顔がマジだ。ここでこれ以上ふざけたら命を落とす。あれが眷属になった者の態度なのだろうか? 上下関係が逆なような気がしてならない。
仕方ない……。久しぶりに自分のステータスでも見るか。
――ステータス……オープンッ!!
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名前:ヨルシア
称号:新米迷宮主
種族:悪魔族
位階:下級悪魔(Eランク)
保有魔力量:2650
固有スキル
怠け者/迷宮魔法
種族スキル
契約
スキル
暗黒剣/計略/飛行/錬金
魔法素質
深淵/結界/生活
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ステータスを見せたらリリーナがぽかーんっとしていた。
……よっ、弱すぎたのだろうか?
「えっ? あの、リリーナさん? どうかなさいましたか?」
「この固有スキルの【怠け者】ってなんですか?」
「さあ? サボり過ぎると身につくスキルだと思っていました!」
「それじゃ、ただのゴミスキルじゃないですか!! そんなはずはないです! 迷宮魔法は別として下級悪魔のあなたに固有スキルが顕現してるのは正直言って異常です!」
「えっ? なんか変な病気なんすか?」
——ジャキンっ!!!
リリーナの爪が刃に変化した。もう、それ勘弁してほしい!! 本気なのか冗談なのかわかんない!! めっちゃ怖いんですけど? ジャキン、ダメ!!
「じょ……冗談ですって。リリーナさん? 怖いんで爪をしまっていただいても?」
「次、ふざけたら斬ります」
「もう、ふざけませんっ!」
「じゃあ、鑑定魔法かけますのでジッとしててください。……【解析】」
【怠け者:サボればサボるほど、自身の能力がアップ。仕事をした場合、次の日から能力が通常に戻る。】
「「………………」」
「……最っ高じゃん!!」「……最っ低じゃん!!」
俺が歓喜に沸いた瞬間、リリーナさんが罵ってきた。
「えぇー!?」
「当たり前じゃないですか! 何このゴミスキル? 何の役にも立たないじゃないですか!!」
「いや、立つから! よく考えてみなって! きっとこれのお陰でリリーナさんにも勝てたんじゃん!」
「……それはそうですけど」
「なっ? だから俺はダンジョンのためにサボるぜ!!」
「まだサボらなくてもいいですから。まずその能力の検証が先です。どこまでが仕事なのかもわからないので色々調べる必要があります」
「面倒くせぇーー!!」
「仕方ないでしょ! 仮にもそれ固有スキルなんですよ? 普通Bランク以上の魔族しか顕現しないのに、あなたには既に顕現してるんですよ? 調べないと勿体ないじゃないですか!!」
「わかった、わかったから落ち着けって。まぁ、検証も大事だが、それよりも先にリリーナさんのステータスが見たいんだけど?」
「なっ……なんで私も見せなきゃいけないですか!!」
「当たり前だろっ! 俺のも見たじゃん!! それにリリーナの能力知っていないと、もしもの時の判断鈍るだろうし!」
「……なんでこういう時だけ頭の回転早いんですか? わかりました。見せますよ……ステータスオープン」
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名前:リリーナ・アシュレイ
称号:一級秘書官/プロバージン
種族:妖魔族
位階:女夢魔(Cランク)
保有魔力量:28900
種族スキル
吸精
スキル
魔爪斬術/魔舞闘/飛行
魔法素質
誘惑/幻術/鑑定/生活
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「うぉー、やっぱ強いな!! 魔力量、俺の10倍かよっ!?」
「当たり前です! 位階がいくつ離れてると思ってるんですか?」
「しかも魔舞闘ってあれだろ? 魔王が考えた舞踏体術。だからリリーナの身のこなしはあんなに綺麗だったのか。学校卒業したばっかなのに、こんな強力なスキルを取得してるなんてマジすげぇな」
何故かリリーナの顔が真っ赤になっている。もしかして照れてんのか? リリーナさんって意外とポンコツ?
「わっ……わかってくれればいいんです! 私は魔王アシュタロス様が実家に帰省された時、直に教えていただいたのでスキルの習得が早かっただけです。貴方も努力すれば、きっと強力なスキルの一つや二つ習得できます!!」
「ふーん……、別に俺は戦う気ないからそんなスキルいらんけどな。それにしても、お前の称号のプロバージンって、もしかして処……ぶぼらぁぁぁぁぁーー!!!」
——ズドォォォォォーーン!!!
「……な・に・か・言いました??」
「にゃにもいってまへぇん……」
リリーナの正拳突きで吹っ飛ばされた。彼女に処女は禁句のようだ。もう二度と言わないと誓おう。うん、そうしよう。
そして今日もリリーナにビシバシ叩かれながらも仕事をするのであった。
⌘
「ふぅー、さっぱりしたぁー。いい湯だった! やっぱり仕事終わりの風呂は最高だなっ!! リリーナも入ってこいよ!」
「うー……うん。入ってくる」
おっ、若干迷ったけど、やはり風呂は気に入ったようだな! ふふふ……順調、順調。仕事欲よ、なくなるがいい。
「あっ、そういえばお前の種族スキルに吸精ってあるじゃん? あれって人間(雄)の精気を吸収するんだろ? 毎日摂取しなくても大丈夫なのか?」
「なんでそんな変なとこに気を使うんですかっ!? 別に精気を毎日吸精しなくても問題はありません。それに、ここは魔素が濃いからきっと摂取しなくても大丈夫です。てゆーか、もしかして……私を狙ってるんですか!?」
「すみません、タイプじゃ……」
——ジャキンッ!!!
「嘘です! 嘘です! めっちゃタイプなんですけど、僕とリリーナさんって釣り合わないじゃないですか! 高嶺の花っていうか、憧れっていうか、恐怖っていうか! だからリリーナさんが吸精したい時は人間(雄)のイケメン攫ってきますんで、いつでもパシらせてください!!」(早口)
「別に攫わなくていいですっ!! ……それに吸精の相手は別に魔族でもいいんだから。(超小声)」
「えっ? なんて?」
「お風呂入るって言ったんですっ!!!」
おっ……怒らなくても……。とりあえずリリーナさんにはお風呂でゆっくりしてもらおう。
はぁー……、明日からスキルの検証か。
やだなぁー。こういう時、冒険者とか攻めてきてくれたら中止になるのに。
おら、掛かってこいよ! 冒険者!!! ビビってんのか?? ハハン! てめーら、いつになったら来るんだよ? お前らのせいで俺が仕事するハメになっただろうが?
そう、そうなのだ!全部冒険者たちが悪い!! 俺がサボれないのも、怒られるのも、ぜーーーんぶ冒険者たちのせいだ!! 来たらボッッコボコにしてやろう。
——ビー、ビー、ビー!!
【侵入者です。速やかに排除してください。侵入者です。速やかに排除してください。】
……うそーーーん。もはや誰かの悪意を感じる気がする。




