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異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
第3章 ソラーレ国編
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第68話 明日香と沙織の入れ替わり④

「明日香! 葉月!」


 訓練していた場所に戻ると、沙織がこちらに駆け寄って来る。

 彼女の後ろに、蜜柑達も続く。

 沙織は明日香の前まで来ると、口を開いた。


「急にいなくなるから心配したんですよ? どこに行っていたんですか?」


 ……流石に、少し長話をしてしまっていただろうか?

 不安そうに尋ねる沙織に、明日香は笑いながら頬を掻く。


「ゴメンゴメン。疲れていたから、少し休憩しに行っていただけ。葉月はその付き添い」

「……本当ですか?」

「うん。明日香が一人じゃ寂しいって言うから」


 本当の理由は言えないので、ひとまず嘘をつく。

 目線は逸らさず、真っ直ぐ沙織を見て。

 私の言葉に、彼女は審議するような間を置いてから、ホッと安堵したように息をついた。


「まぁ、何も無かったなら良いです」

「沙織ちゃん、葉月ちゃん達がいないのに気付いたら、一番動揺してたもんねー」

「蜜柑っ、それは!」


 茶化すように言った蜜柑の言葉に、沙織は顔を真っ赤にした。

 ほう? 明日香がいないことに動揺? これは割と脈アリなのでは?

 そんなことを考えていると、フラムさんが明日香の腕を引く。


「沙織殿は、二人が休憩している内に明日香殿の体を上手く使いこなせるようになったからな。次は明日香殿の番だ」

「え、ちょ!」

「ホラ、行くぞ」


 そう言ってズルズルと引きずるように明日香を連れて行くフラムさん。

 沙織の体になっている明日香は、それに素直に引きずられるしか術がない。

 元の体なら、まだ抵抗出来たかもしれないけどねー。

 連れて行かれる明日香に向かって「頑張れー」と言いつつ笑ってやると、彼女は何か文句を言った。


「……ところで、葉月」


 明日香がフラムさんによって連行されるのを見送ると、沙織が私の方を向いて口を開く。

 私はそれに彼女の顔を見上げ、「何?」と聞き返す。


「あの……さっきまで、明日香と何を話していたんですか?」

「え? 何を、と言われても……」


 急な質問に、私は頬を掻きながら視線を逸らす。

 まさかそこまで深く聞かれると思っていなかったので、どう誤魔化せば良いか咄嗟に思いつかない。

 しかし、解答への間を空けすぎてしまうと、逆に怪しまれてしまう。

 即断即決即答! 早く、何か答えなければ!


「い……色々! 色々なこと話してたから、何を話してたかなんて聞かれてもなぁ……」

「……では、話していたことを全て教えて下さい。覚えている限りで良いので」

「えぇ……」


 結構食い気味に来るので、私はつい、身を仰け反らせる。

 数歩後ずさると、沙織もそれに付いてくるように前に出てくる。

 体は明日香なので、高身長がかなり高圧的に感じる。

 なんとか言い訳を探そうと思考を巡らせていると、沙織の表情が曇る。


「……もしかして、人には言えない話ですか?」


 小さな声で聞かれた言葉に、私は反射的にコクコクと頷いた。

 こういうことは私から勝手に伝えるべきではない。明日香から伝えるべきだ。

 だから、私から言うことは何も無い。


「……そうですか……」


 しかし、沙織の表情はさらに曇る。

 なんでだ!? そう焦っていると、蜜柑が服の裾を掴んだ。


「蜜柑……?」

「葉月ちゃん。明日香ちゃんとは何も無かったんだよね?」

「何も……?」

「だから、その……私がよく葉月ちゃんにしているようなこと!」

「そんなことするわけないじゃん!」


 つい、咄嗟に、強い口調で言い返す。

 すると、沙織の表情がパッと明るくなった。

 あ、まさかアレか? 二人きりの間にふしだらな行為をしているのではないかと危惧したか!?

 沙織は厳しいし、あり得る!

 何より、今明日香と沙織の体は入れ替わっている。

 もし私と明日香がそういう行為をしたら、それは即ち、沙織の体に返ってくるわけだ。

 ここは、しっかり否定しておかなければ。


「流石にこんな状況でそんなことしないって。てか、今明日香は沙織の体でしょ? 仮に私が明日香のこと好きでも、沙織の体に変なことしないよ」

「……明日香のこと、好きなんですか?」

「はぁ!? 何それ!」


 まさかの質問に、ついそう返す。

 すると沙織はしばらく考えるような間を置いてから、フッと優しく微笑んだ。


「……いえ、何でもないです。私の考えすぎでした」

「……はぁ……?」


 一人で考えて一人で納得してしまった。

 ポカンとしている間に、沙織は明日香が連行された方向に歩き出す。

 上品な動きをする明日香とか、違和感しか無いな。


「凄い質問攻めだったね……葉月ちゃん大丈夫?」

「あー……うん。大丈夫」


 そう答えながら、私も沙織の背中を追おうとする。

 すると、蜜柑に腕を強く引っ張られた。

 体がグイッと後ろに引かれ、私はよろめく。


「ぁがッ……蜜柑……?」

「えっと……私達が行っても仕方ないよ! 私達は私達で、訓練しない?」

「いや、魔法少女の訓練って何を……」

「……では、私が魔法を乱射するので、二人はそれを避ける特訓なんてどうでしょう?」


 物騒な提案をするトネールに、私は苦笑した。

 しかし、蜜柑が目を輝かせて割と乗り気なので、げんなりした。

 でも……あれ?

 そうなると、今あっちの方は、かなり修羅場じゃね?

 ……大丈夫かな……。

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