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第6話 異世界食

「では、色々あってお腹が空いたでしょう。今から食事にしましょう」


 国王は、場の空気を変えるようにそう言った。

 それから使用人らしき人に、食事を運んでくるように指示を出した。

 食事が来るまでの間、私はとあることを思い出し、恐る恐る口を開いた。


「あ、あの……そういえば、このアリマンビジュ、というのは、一体……あと、変身した三人の髪色が、変わってるんですけど……」


 私の言葉に、国王は不思議そうな顔で私のアリマンビジュを見た。

 それからトップスリーの髪を見て、「ふむ……」と呟いた。


「アリマンビジュはこの世界の魔力と貴方方の魔力を適合させるものなので、その影響が体に出ることはよくあります」

「そうなんだ……あのさ、この髪、戻るよね?」


 不安そうに尋ねる不知火さん。

 彼女の言葉に国王は困惑したような表情を浮かべるが、すぐに笑顔を浮かべ、頷いた。


「はい。元の世界に戻ったら、元の色に戻ります」

「良かったぁ~。日本でこの髪色じゃ目立つもん」


 そう言ってケラケラと笑う不知火さん。

 彼女の言葉に、風間さんは「目立つ以前に校則違反です」と言ってため息をつき、眼鏡の位置を正した。

 校則……地毛なら大丈夫なんじゃないかなぁ……。

 ……あぁいや、地毛の茶髪をルールだからって黒染めさせたりする学校もあるか。


「そういえば、林原さんは変身したら、何色になるのかな」


 その時、隣にいた山吹さんが小声でそう尋ねてきた。

 彼女の言葉に、私は「んー」と唸りつつ、私のアリマンビジュを見る。

 今の所、皆この宝石と同じ色に変化している。

 そうなると私は……。


「……緑、かな」

「……奇抜だね……」


 私の返答に、山吹さんは苦笑してそう言った。

 緑……よりにもよって緑かぁ……。

 ていうか、この中で一番まともな色は黄色くらいだよなぁ。

 そうなると、山吹さんは当たりを引いたわけだ。

 羨ましい。

 そう思っていた時、近くにいた使用人から金色の小さな箱のようなものを渡された。


「……?」


 不思議に思いつつ受け取り、箱を開けてみる。

 すると、中には細い金色の針が丁寧にしまわれていた。

 顔を上げると、国王と目が合った。


「アリマンビジュで変身するには、血がいります。いずれ変身する時、すぐに変身できるようにと」

「なる、ほど……ありがとう、ございます……」


 私の言葉に、国王は優しく微笑んだ。

 針で自分の指を刺すって、なんかなぁ……なんかなぁ……。

 私は無言で箱を閉じ、制服の胸ポケットにしまっておいた。

 その時、料理が運ばれて来た。

 目の前に置かれた皿の料理を見た瞬間、私は口を開けて固まった。


 えっと……紫?

 何かの肉に、紫色のソースのようなものがかかっている。

 匂いを嗅ぐと、どうやら普通のステーキのようだ。

 いや、色合い的に全然普通じゃないんですけどね。

 これが異世界食……ハードルが高そう……。


「ホラ、お前もそんな所に突っ立ってないで、一緒に食事くらいどうだ」


 その時、国王が顔を上げてそう言った。

 誰に言ってんの? と不思議に思っていた時、騎士のお兄さんが困ったような表情をした。


「しかし、私は仕事中で……」

「お前だって王族の一員なんだ。魔法少女様との食事くらい、参加しなさい」


 国王の言葉に、私達は騎士のお兄さんを見た。

 まさか彼も王族!?

 驚いている間に、騎士のお兄さんは嘆息し、赤目の男の隣に腰掛けた。

 美形兄弟……腐女子が喜びそう……。

 目色もちょうど赤と青だし。


「あぁ、そういえば家族の紹介をしていませんでしたね」


 騎士のお兄さんを観察していたからか、国王がそう言った。

 それから、このドゥンケルハルト王国の王族が紹介された。


 まず、赤目の男の人が長男であり次期国王のグランネル・エンス・ドゥンケルハルト。

 騎士のお兄さんが、カインドル・エンス・ドゥンケルハルト。

 赤目のお姉さんがフラーユ・ビアン・ドゥンケルハルト。

 私達と同じくらいの年齢の紫の目の少女がトネール・ビアン・ドゥンケルハルト。


 正直に言おう。

 覚えられる自信が無い。

 まぁ、名前で呼ぶ機会なんて無いだろうし、とりあえず知識としては知っておこう。

 ていうか、ただでさえ色々な情報が一気に入って来て、頭が痛いのだ。

 その頭痛に耐えながら、私達も名前を名乗った。

 こちらの名前も知っておいた方が良いだろうし、何より、相手にだけ名前を名乗らせるのは失礼だと思ったからだ。

 一通り自己紹介が終わると、私はため息をつき、目の前にある料理を見る。


 いやー、ホント……異世界ってすごい。


 サラダの見た目は普通……と見せかけて、トマトらしき何かに斑点模様がある。

 ステーキのソースは相変わらず紫色のヤバい色をしているし、スープは真っ青。

 唯一の救いはパンくらいだ。パンの見た目はすごく普通。


 あーでも、たまに日本でも明らかに食欲が湧かない見た目をした食事はあった。

 と言っても、テレビで見たりした程度だが。

 青いカレーだとか、和式便所の形をした皿にカレーを盛ったり……って、カレー弄るの好きだな。


「それでは、今日の我々の出会いを祝して。乾杯!」


 そう言って国王は飲み物が入ったコップを高く掲げる。

 私はひとまず隣にいた山吹さんとコップを当てて、ゆっくり口を付けた。

 甘ったるい味が口に広がるのを感じながら、私はため息をついた。

 これから本当に異世界でやっていけるのかなぁ、私。

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