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第4話 城

 騎士のお兄さんに連れて来られたのは、城壁に囲まれた城下町だった。

 どうやら私達がいた森は、城下町からそこまで離れていない場所にあるらしい。

 城下町の奥に見える城に、これから向かう。


「これを」


 いざ城下町を歩こうという時になって、私にだけ外套が渡された。

 なぜなのか聞いてみると、私の黒髪が目立つらしい。

 いや、黒髪は目立たないでしょ、と一瞬思ったが、兵士の皆さんの髪も黒ではないし、トップスリーの髪が原因不明で染まっている今、黒髪は私しかいない。

 だから大人しく外套を羽織って町を歩いてみれば、本当に黒髪は一切いないのだ。

 日本じゃありえない髪色しかいない。


 確かにここが何なのか、私にはさっぱり分からない。

 分からないが……一つの仮説はある。

 別に、私は魔法少女モノ特化型オタクというわけではない。

 特に好きなのがそういう系というだけで、他にも色々な作品を見たりしている。


 異世界ファンタジー。

 最近流行っているジャンルだ。

 私も好きで、よくこういう系統のライトノベルは読んだりする。


 だから、あくまで私の知識から見た意見ではあるが、恐らく私達は異世界転移というものをしてしまったんだと思う。

 いや、ホントに、あくまで仮説なんだけどさ。


「林原さん、大丈夫? 顔色悪いよ?」


 恐らく思っていたことが顔に出ていたのだろう。

 隣を歩いていた山吹さんが、そう言って顔を覗き込んでくる。

 だから、私は頭に被っているフードで顔を隠しながら「何でも無いよ」と答えた。

 それから、思考を続ける。


 魔法少女になっただけではなく、異世界転移か……。

 普通こういう時は、これから異世界に来たことを喜ぶのが定番の反応なのかもしれない。

 しかし、私はこのことを喜ぶ気にはなれなかった。

 そりゃあ、異世界でチート出来たら楽しいでしょうよ。

 魔法とかぶっ放して、剣で魔物とか倒してさ。


 しかし、そんなもの結局は創作物の中だけの話。

 現実で、突然異世界に投げ出されてそんなこと出来るかと聞かれたら、私は即答で無理と答える。


 いや、流石に無理だって。

 他の人ならいざ知らず、私には絶対に無理。

 だって、前にいた世界では器用貧乏ですもん。昔から何やっても平均値ですもん。

 これから何をすることになるのか分からないが、絶対トップスリーの足手まといになるに決まっている。

 今から憂鬱だ。


「着きました。ここが、我がドゥンケルハルト王国の城です」


 そう言われ顔を上げると、そこには、巨大な城があった。

 私は頭からフードを外し、城を見上げる。

 ……デカい……。

 本物の城とか見たことないけど、こんなに大きいのか……。


「では、こちらはお預かりします」

「あ、ハイ」


 騎士の人の言葉に、私は外套を脱いで預ける。

 そこからさらにしばらく歩いて、奥の玉座のような場所に行く。

 歩きながら観察していたが、城の造りは西洋の城のような感じだった。

 実物は見たことないから、あくまで私のイメージの話だけど。

 全体的に白い石で出来ていて、歩く場所は赤いカーペットが敷いてある。

 壁に絵画が飾られていて、廊下の両端には鎧が飾ってある。後は、ポツポツと高級感漂う扉が点在している。

 私だけでなく、トップスリーの面々も城の中は初めて見るらしく、物珍しそうに辺りを見渡していた。

 初めて見る物を見ていると、一つの扉の前で騎士のお兄さんが立ち止まった。

 彼は扉を開けて、私達に顔を向けてきた。


「お入り下さい。魔法少女様」


 そう言って微笑む。

 灯りの関係か、無駄に歯がキラッと輝いた気がする。

 私達はそれに素直に従い、部屋に入った。


 部屋は、円卓の間……というのが正しいのだろうか。

 椅子は全部で十一。

 私達が入ってきた扉がある壁とは逆の壁側に席が五つあり、四人の人がすでに座っている。

 まず真ん中に、騎士のお兄さんと同じロイヤルブロンドに青い目の男。

 年は見た目から察するに、四十代前半……いや、もっと若いか?

 しかし、部屋の雰囲気から察するに……彼が国王だろうか。

 そうなるともう少し年齢が上かもしれない。

 まぁ、年齢は、今は置いておこう。


 視線を右にずらすと、そこにはこれまたロイヤルブロンドの青年がいた。

 彼の目は赤く、若々しい雰囲気が漂う。

 騎士のお兄さんを基準に考えると、彼よりは少し年齢は上そう。

 あくまで予想だが。


 次に左側を見ると、そこには二人の女が座っていた。

 こちら二人の髪もロイヤルブロンド。

 ていうか、こうして観察してみると、全員の髪がロイヤルブロンドだ。

 この世界はロイヤルブロンドが一番多いのか?


 一人は赤い目の男と同い年くらいの女性。

 こちらも目は赤い。

 彼女は口元に微笑を浮かべながら静かにその場に佇んでいる。


 もう一人は……と、赤い目の女性の隣に座っている少女に視線を向けると、ちょうど彼女も私を見ていた。

 バッチリ目が合ってしまい、私は咄嗟に視線を逸らした。

 いや、まさか目が合うだなんて思っていなかったんだもの。

 恐る恐るもう一度彼女を見てみると、また目が合った。今度は目を逸らさない。

 彼女はそれに、どこか嬉しそうな微笑を浮かべ、会釈をしてきた。

 だから、私もペコッと頭を下げた。

 彼女の目は紫色で、他の人達とは雰囲気が違う。

 顔も人形のように整っていて、正直、この子が魔法少女でも良かったんじゃね? って思った。

 絶対私よりこの子の方が向いてるって。


「遠慮なさらず、どうぞお座り下さい」


 真ん中に座っている男――恐らく国王――の言葉に、私達は席につく。

 恐らくこの場にいる全員、王族だと思う。

 だから、流石に隣に座るなんておこがましいことは出来ないので、一つ席を空けて座る。

 右から、不知火さん、風間さん、山吹さん、そして私だ。

 皆、その表情が強張っていて、緊張を露わにしている。

 いや、人のことなんて言えない。恐らく、私も同じ表情をしているだろうから。


「魔法少女の皆様。この度は突然お招きしてしまい、誠に申し訳ありません。この場で司会を務める、ドゥンケルハルト王国、国王の、レオガルド・エンス・ドゥンケルハルトです」


 そう言って、国王とやらは頭を下げた。

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