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異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
番外章2 明日香と沙織編
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第44話 同性を好きになるということ

 恋人が家に来ることになりました。

 まともなデートもまだなのに、いきなりお家デートとはこれ如何に。

 ともあれ、沙織が家にやって来るという事実には変わりないわけでして、現在僕は家に帰ってからすぐに部屋の掃除をし終えたところだった。

 元々、ストレッチをするためのスペースを作るために、足の踏み場が無い程に乱雑だったわけではない。

 尤も壁際とかはそれなりに乱雑だったため、散らかしていた漫画等を本棚にしまったりすると、持ち主が同じ部屋とは思えないくらい綺麗になった。


「……ふぅ……」


 少なくとも沙織を招き入れることが出来るレベルまで綺麗に出来たことに安堵し、僕は壁に凭れ掛かって息をついた。

 しっかし綺麗になったなぁ……部屋の掃除なんてまともにしたの、大晦日以来かもしれない。

 肌に滲む汗を拭いながら、密かに干渉に浸っていた時だった。


「ご飯出来たわよー」


 一階から、母さんが呼ぶ声がした。

 もうそんな時間か。部屋の掃除に熱中していて気が付かなかった。

 夕食を食べて風呂に入ってストレッチをしてから、勉強しよう。

 結局勉強しないフラグが建築されている気がしないでもないが……週末の勉強会に備えて、少しは自分でも勉強しておいた方が良い。

 流石に沙織には僕の馬鹿さを知ってほしくはない。


 母に言われて一階に下りると、すぐに音以外の家族全員揃い、食事を開始する。ちなみに、音は父と母の寝室にあるベビーベッドにて、熟睡中らしい。

 今日の夕食はハンバーグだった。

 男三人の荒々しい食事の光景を横目に、僕も食事を口に運ぶ。


 ……そういえば、沙織が家に来ること、両親にも言った方が良い気がする。

 基本的に僕の部屋だけとはいえ、家に来ることには変わりない。

 というか、沙織は恋人になったわけだし、折角だからついでに両親に紹介でもしよう。

 そう思ってハンバーグの欠片を飲み込み、口を開こうとしたところで、僕は固まった。

 ……前に、父は、同性愛を受け入れるまでの時間がほしいと言っていた。

 あれから一ヶ月経った。だが、僕にとってはもう一ヶ月でも、両親からすればまだ一ヶ月かもしれない。

 僕の感覚が麻痺しているだけで、同性愛とはそれだけ重大な問題なのだ。


「……どうした? 明日香。食事の手が止まっているぞ?」


 かなり思い悩んでいたらしく、固まる僕に父がそう言ってきた。

 それに、僕は「あ、うん」と小さく答え、箸でハンバーグを切り分ける。

 しかし、やはりその動きにぎこちなさが生じていたのか、父はしばらく僕を観察するようにジッと見つめた後で、ゆっくりと口を開いた。


「……何だ? 何か、あったのか?」

「えっ!? ……あぁ、いや……そういうわけじゃ、無いんだけど……」


 震える声で言いながら、僕は箸を止める。

 ……しかし、このまま隠しておくわけにもいかない。

 沙織がこの家に来るとなった今だからこそ、言わなければならないと思う。


「……体育祭の時に話した……好きな子のことについて、なんだけど……」

「……」


 僕の言葉に、父は何も言わず、ソッと箸を置く。

 それを皮切りに、食卓には張り詰めたような、真剣な空気が漂い始めた。

 しかし、それを切り裂くように、僕は続けて口を開いた。


「あの……今度の週末に、その子が……勉強を教えに、来ることになっているんだ」

「……そうか……」

「それで……僕……その子と今、交際していて……」


 そう打ち明けた瞬間、家族は四者四様の反応を示した。

 母は「信じられない」と言いたげな表情を浮かべ、大きく目を見開いて僕を見つめる。

 兄はこれまで続けていた食事を止め、キョトンとしたような、現実を受け止めきれていないような表情で僕を見つめる。

 朔は興味無いのか、ハンバーグとご飯を頬張り、モキュモキュと咀嚼している。

 そして父は……僕の告白を受け、ゆっくりと目を瞑る。

 何かを考え込んでいるような、そんな感じがした。


「……いつからだ?」


 しばらくして、父はそんな風に尋ねてくる。

 父の言葉に、僕は姿勢を正して、続けた。


「……この前の、体育祭の日」

「なんでそれを、今まで黙っていた」

「……前に時間が欲しいって言ったのは父さんじゃないか」

「それはっ……まぁ、そう言ったが……」


 僕の言葉に、父はそう言いながら目を反らす。

 ……やっぱり、まだ早かったのかな。

 でも、沙織が明日来ることには変わりないし。

 一人考えていると、父は大きく息をつき「分かった」と言った。


「分かったって……えっ?」

「お前にそういう趣味があり、同性の恋人が出来たことは認めよう」


 その言葉に、僕は今すぐ跳ねたくなるくらい嬉しい気持ちになった。

 しかし、父の「だが」と言う言葉によって、それは遮られる。

 僕はそれにピタリと動きを止め、父の言葉の続きを待った。

 父は腕を組み、重々しい声で続けた。


「あくまで同性愛を認めただけで、その交際相手を認めるわけではない。……週末の来訪にて、見定めさせてもらう。良いな?」

「う……うんっ!」


 父の言葉に、僕は頷く。

 まぁ、面接のようなものか。

 元々紹介はする予定だったし、問題は無いか。


 しかし、食事と風呂を終えた後のストレッチにて、兄が疲れた笑みを浮かべながら「親父の面接は厳しいぞ……気を付けろよ」と忠告してきた。

 ……不安だ……。

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