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異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
第1章 魔法少女編
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第29話 山吹蜜柑④

<葉月視点>


 山吹さんの話が終わるのと、私が味無しクッキーを食べ終えたのは、ほぼ同時だった。

 話を聞いている最中は、まるで他人事のような気分だった。

 それこそ、林原葉月って人すげぇなー程度の感覚。


 しかし、話を聞き終えると、徐々に思い出し始める。

 確かに、そんなことあった。

 入学式の日、体育館の場所が分からなかったのと人ごみのせいで、一緒に来ていた両親や若菜とはぐれてしまった。

 途方に暮れて彷徨っていた時、小学校低学年くらいの女の子が男の先輩達に絡まれていたので、咄嗟にハッタリをかまして助けたのだ。

 実際に近付いてみたら同じ制服着ていたから、あの時は驚いた。

 ただ、入学式の日は、あの後若菜と同じクラスになった喜びで他の出来事が吹っ飛んだんだと思う。

 山吹さんマジごめん。


「あの後ね、林原さんと同じクラスになったし、話したいなぁって思ってたんだけど……中々上手くいかなくて」

「え、そうなの?」


 私が聞き返すと、山吹さんは小さく頷く。

 それから顔を赤らめて目を逸らし、自分の髪の先を指で弄る。


「だ、だって……なんか教室に着くなり、色々な人に囲まれちゃうし……林原さんは林原さんで、加藤さんにばかり構うから……」

「……ぅえ!? そう?」

「うん。割とベッタリ」

「……マジか……」


 別に若菜とベタベタしてるつもりなんて無かったので、私はつい声を漏らした。

 え、周りからそんな風に思われているなんて思わなかった。

 日本に帰ったら少し自重しよう……。

 そんな私を見て山吹さんはクスッと笑い、微かに目を伏せる。


「だから、ね……嬉しかったんだ。この異世界に来て、林原さんの声がした時」

「私の……」

「若菜、若菜~……って」


 山吹さんの言葉に、私は恥ずかしくなって自分の顔を両手で覆った。

 あれはマジで黒歴史……忘れて……。


「一緒に戦うことになったり、同じ部屋になったり……最初は不安だったけど、今は凄く嬉しいんだ! やっと林原さんと話せるって。……林原さんと、仲良くなれるって」

「……山吹さん……」

「不謹慎……だよね。でも、私は林原さんと……こ、ここ……」

「私も、山吹さんと友達になりたいよ」


 私はそう言いながら、山吹さんの手を握った。

 すると山吹さんはカァッと赤面し、私が握った手と私の顔を交互に見て「はわわわ……」と声をあげた。

 なぜかやけに顔赤くしてる気がするけど、気のせいかな?

 不思議に思っていると、彼女はバッと顔を上げ、私の手を両手で握って来た。


「うわ……!?」

「わ、わわ私も! は、はは林原さん、と! とも、と、友達になりたいです!」


 超挙動不審じゃないですか。

 しかも、手汗もヤバい。

 ……これってまさか……。


「山吹さんってさ、私のこと好きだったりする?」

「ふぇえ!? 違うよ!」

「あはは、だよね。ごめん」


 顔を赤くして否定する山吹さんに、私は笑いながらそう返した。

 適当に言ってみたことだが、やはり当たっているわけないか。

 ていうか、百合作品ばっかり見てるから気にしてなかったけど、普通同性愛なんてマイナーだもんなぁ。

 しかし、そうなるとなんでここまで緊張しているのか……分からん。


「うぅぅ……」


 でもなぜか山吹さんは落胆している。

 マジで何なの。


「……友達、なら、その……」

「うん?」

「な、名前で呼んだり、とか、するん……だよね?」


 その声に、私はパッと山吹さんに視線を向けた。


「ッ……」


 視線を落とすと、そこには、こちらを見上げて頬を赤らめている山吹さんの姿があった。

 不意打ちだったので、私は数歩後ずさり、口に手を当てて静かに昂る感情を噛み殺す。

 尊い……山吹さんを産んだご両親、ありがとう……。


「……まぁ、そうだね」

「じゃ、じゃあ、名前で呼んでも良い?」


 無邪気に目をキラキラとさせながら言う山吹さんに、私は彼女の目を直視できなくなる。

 目の前にある純粋無垢という名の眩しさに私は頷く。


「う、うん。良いよ」

「ホント!? えっと、じゃあ……は、葉月、ちゃんっ」


 頬を微かに赤く染めながらそう言って嬉しそうに笑う山吹さん。

 あーもうホント可愛すぎかよ……。


「うん。蜜柑」


 私がそう名前を呼ぶと、蜜柑はさらに顔を赤くした。

 えっと……赤面症か何かですか……?

 まぁでも、別に本人は何も言ってないし、指摘しなくてもいいか。

 そこで、私は自分が寝間着のままだということに今気付く。


「あっ……」

「……? 葉月ちゃんどうしたの?」


 つい固まると、蜜柑は不思議そうに顔を覗き込んで来た。

 それに私は彼女から離れ、頬を掻く。


「えっと、私起きてすぐここに来たから、寝間着のままだし顔もロクに洗って無くて……ちょっと色々やってきて良い?」

「えっ、別に気にしなくても良いんじゃない?」

「私が気にするの。すぐ着替えるから、一緒にクッキー作り頑張ろうね!」


 私がそう言って親指を立てて見せると、蜜柑はパァッと明るい笑顔を浮かべて、「うんっ」と頷いた。

 あぁ、なんかもう存在が尊い……。

 秒で帰ってこようと心に決め、私は台所を出た。

今日からとある魔法少女アニメを見ているのですが、「え、魔法少女ってここまで鬱展開にしていいの?」ってなってます

あと男が魔法少女になったりもするんですね

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