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異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
第1章 魔法少女編
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第23話 風間沙織④

「ところで……沙織は何を読んでいたの?」


 友達になったところで、私はそう聞いてみる。

 すると沙織は「あぁ」と言って、本の表紙を見せてくれる。

 そこには、アリマンビジュのような宝石が描かれていて、タイトルに『魔法少女について』と書かれていた。


「魔法少女に……ついて?」

「ハイ。前にはや……は、葉月が、魔法少女に代償があるかもしれないって……言っていたから」


 私のせい、第二弾。


「いや、あれはあくまで仮説であって……」

「分かっています。でも、少しでも情報を集めておきたいと思って」

「なるほど……それで、どんな風なことが書いてあったの?」

「まだ途中までしか読んでないんですけど……」


 そう言いながら、沙織は私との間に本を持って来て、ページを開いてくれる。

 書いてあるのは、アリマンビジュについての説明だった。

 しかし、文字は小さいし文章が長くて、私はすぐにダウンしてしまった。


「無理……読めない……」

「フフッ。これによると、アリマンビジュには、主に二つの役割があります」

「ふむふむ……?」


 それから聞いた沙織の説明を要約すると、こうだ。


 まず一つ目の役割は、異世界の人間の魔力をこの世界の魔力に適合させ、変身させる機能。

 このアリマンビジュに魔力が適合しやすいか否かで、魔法少女は選定される。

 魔力を適合させる関係で、今のトップスリーのように髪色や目の色が変わったり、体からアリマンビジュが外れなかったりなどの体への異常が出たりする。


 二つ目は、異世界の人間、魔法少女がこの世界で生活しやすいように手助けをする役割。

 例えば、指輪にすることによって、魔法陣に魔力を流しやすくしたりしてくれる。

 どうやらこの世界では魔力操作などがあり、体内にある魔力を操作する術のようなものを成長の過程で培っていくらしい。

 魔法陣を使用する際にも、この魔力操作は使う。

 しかし異世界から来た魔法少女達にそんな術は無いので、アリマンビジュを使って自動で魔力操作を行ってくれる。


 それから、言語もアリマンビジュによって助けられている。

 当たり前のように会話をしていたが、アリマンビジュが私達の体に干渉して自動翻訳をしてくれているだけで、実際は未知の言語を話しているとのこと。


「つまり簡単に言えば、アリマンビジュ凄いってこと?」

「とてもザックリとした説明ですね。……間違ってはいませんが」


 苦笑を浮かべながら沙織はそう言うと、自分のアリマンビジュを指で撫でた。


「しかし、私が得た情報もこの程度ですから、まだまだアリマンビジュの謎は深いです。それに、魔法少女に何か代償があるか、とか……不知火さんのアリマンビジュにあった光の謎とか」

「ううん。充分凄いよ。私じゃ字が小さすぎて解読すら出来ないもん」


 私が笑いながら言うと、沙織はどこか嬉しそうにはにかんだ。

 それから自分のアリマンビジュを指で撫で、目を細めた。


「でも、早く魔法少女というものについては色々知りたいです。……確実に、日本に帰りたいですから」

「まぁ、それは大丈夫だと思うけどね。敵さえ全滅出来れば、帰してくれるって言ってくれてるし」

「……嘘をついている可能性だってあるじゃないですか」

「そんなこと言ったら誰も信じられないよ」


 苦笑しながらそうツッコミを入れて見ると、沙織はクスッと笑って「それもそうですね」と微笑んだ。

 あの冷静沈着な生徒会長が、こうも表情をコロコロ変えるようになるとは……。

 なんだか私だけが見ているような特別感があって、少し嬉しかった。


「……でも私は、葉月は信じていますよ」


 沙織は眼鏡の位置を正しながら、そう言って微笑んだ。

 彼女の言葉に、私はなんだかむず痒い気持ちになって、目を逸らしながら「おー」と曖昧な返事で場を濁した。

 すると沙織はクスクスと鈴の音のような声で笑って、本を自分の手元に持って行った。


「葉月だけじゃありません。不知火さんや山吹さんだって、信じています。……皆さんの為なら、私は喜んで情報を集めます」

「ははっ、頼もしいなぁ……じゃあ、まずはあの二人とも友達にならないとね」

「そ、それはまだ敷居が高いと言いますか……」


 そう言って顔を赤らめ、その顔を本で隠す沙織。

 彼女の反応が面白くて、私はつい笑ってしまった。

 その時、私と沙織のアリマンビジュが強く光った。


「へ……」

「なん、ですか……これ……?」


 呆ける沙織に、私は咄嗟に彼女の体を抱きしめる。

 何が起こるか分からないが、ひとまず何か起こった時、彼女を守れるようにという配慮だった。

 アリマンビジュがさらに強く光り、視界が真っ白に染まる中、私はこの異世界に召喚された時のことを思い出した。


 あの時、若菜が私に手を伸ばしていた。

 私は彼女に同じように手を伸ばしていたが、結局、その手を握ることは出来なかった。

 もっと近くにいれば、今みたいに、彼女を抱きしめることが出来たのだろうか。


 ほんの一瞬の後悔も、眩い光によってかき消される。

 私は瞼を強く瞑り、沙織の体を強く抱きしめた。

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