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第1話 トップスリー

 まず始めに、私は瞼を擦った。

 しかし、どれだけ目を擦ってみても、目の前に広がる光景は一切変わらなかった。

 幻では無い……か。


 次に、自分の頬を引っ張った。

 夢だと思った。

 しかし、頬に走る鈍い痛みに、夢でも無いことを思い知らされた。


 認めざるを得ないか。

 目の前に広がる森が、現実のものであることを。


「……えーっと……」


 困惑したように声を出しつつ、私は辺りを見渡す。

 辺り一面森。うん。木しかない。

 ……おかしいなぁ。さっきまで、学校の廊下にいたハズなんだけど。

 その時、私の脳裏に若菜の顔が浮かんだ。


「若菜!」


 咄嗟に叫び、私は目を凝らした。

 そう。ほんの数秒前まで、若菜が一緒にいたハズだ。

 もしかしたら一緒にここに来ているかもしれない。

 この森が安全かどうか分からない。

 だからこそ、彼女の安否は確保しておきたい。


「若菜! 若菜ぁ!」


 幼馴染の名前を呼びながら、私は周りを見渡す。

 その時、どこからか地響きのようなものがして、私は動きを止めた。

 自分でも分かるくらいぎこちない動きで振り向くと、そこには……巨大な虎のような化け物がこちらに歩いて来るのが見えた。


「ひ……ッ!?」


 目の前にいる巨大な化け物に、私はその場にへたり込んだ。

 いや、腰が抜けた、という表現の方が正しいかもしれない。

 どちらにせよ、そんな私を巨大虎が見逃すハズが無い。

 真っ直ぐに私を見つめながら、こちらに歩いて来る。

 逃げないと。そう頭では理解しているものの、現実離れした状況に、私の足は言うことを聞かない。

 いよいよ巨大虎は私の目の前に来る。

 私はそれに何も出来ず、ただ見つめていることしか出来なかった。


「危ない!」


 しかし、巨大虎に食べられるより前に、私の体は誰かによって引っ張られる。

 巨大虎が無表情でこちらを見つめるのを視認してから、私は自分の腕を引く人物を見る。

 そして、驚愕した。


「し、不知火さん!?」


 目の前にいるのは、トップスリーの一人である、不知火さんだった。

 彼女は私の声を聴いて少し視線だけで振り向いてから、すぐに前を見た。


「話は後! とにかく! 逃げる!」


 走りながらそう言う不知火さん。

 彼女の言葉に私は頷き、彼女に付いて行こうと必死に足を動かす。

 しかし、ソフトボール部エースの彼女と帰宅部の私じゃ流石に差がある。

 ほとんど私が引きずられるような形でしばらく走っていると、突然、視界が広がる。

 森から抜けたのか、木々が無い場所に出た。

 すると、そこには風間さんと山吹さんがいた。

 って……トップスリー!?


「不知火さん! と……林原さん?」

「さっきの声の主は彼女。……で、これは一体どういう状況なの?」


 風間さんと不知火さんの会話に、私は首を傾げる。

 一体どういう会話を経て今に至る? というか、三人はこの世界に来てからすでに顔を合わせていた?

 そう思っていると、今更、不知火さんの腕から血が出ていることに気付く。


「し、不知火さん! 腕!」

「え? ……あぁ」


 私が咄嗟に指摘すると、不知火さんは自分の腕を見てそう声を出した。

 いや、あぁ、で済む傷じゃないでしょう。

 制服の袖が破れていて、そこから見える腕が切れて流血している。

 流れた血は彼女の腕を伝い、指を赤く濡らしていた。

 色々と切羽詰まった状況だったからか、今になって気付いた。

 ひとまず止血とかした方が良いのではないか。

 そう焦っていると、私の背後にある木々が倒れるような音がした。

 振り向くとそこには……先ほどの巨大虎がいた。


「あ……」

「……林原さんだけでなく、虎まで連れて来るとは……流石ですね」


 そう言って不知火さんを見る風間さん。

 彼女の言葉に、山吹さんが「それより、虎! 虎!」と巨大虎を指さしながら言う。

 うん。私は山吹さんに同意する。


「……?」


 と、そこまで考えていた時、トップスリーの首にネックレスのようなものが提げられているのが見えた。

 宝石の色は、不知火さんは赤、風間さんは青、山吹さんは黄色だ。

 まさか、と思い視線を落としてみると、私の首からは緑色の宝石のネックレスがぶら下がっていた。

 ……なんじゃこりゃ。


「ぐッ……とにかく、僕が時間を稼いでおくから、今の内に皆は逃げて!」


 そう叫んで私達と巨大虎の間に立つ不知火さん。

 彼女の言葉に、風間さんがすぐに声を張り上げた。


「無茶です! あの虎に敵うハズがありません!」

「でもこのままじゃ皆死んじゃうよ! だったら僕が……!」


 そう言ってこちらに振り向く不知火さん。

 彼女の動きに合わせて、ネックレスが揺れる。

 するとそれに彼女はムッとして、そのネックレスを睨んだ。


「さっきから思ってたけど何だよコレ! 邪魔!」


 そう言ってネックレスの宝石を掴んだ時だった。

 宝石が真っ赤に光り輝き、太陽のような紋様が浮かんだのは。


「え……?」


 突然のことに、不知火さんは呆ける。

 その間に宝石はさらに強く光を放ち、彼女の体を包み込む。

 色々と展開が起こりすぎて、本当にわけがわからない。

 強い光に目を瞑りながら、私はそんなことを考えた。


「……うわぁぁ……なんだこれ……」


 間抜けな感じの声がして、私は瞼を開いた。

 そして、目の前にいる少女の格好に目を見開く。


 桃色に染まった髪に、赤くなった目。

 ピンク色を基調とした、可愛らしくも戦闘がしやすそうな服。

 拳には手の甲を覆うプロテクターのようなものが装備されていて、二の腕辺りには先ほど身につけていたネックレスに似た宝石が付いている。


 まぁ、簡単に言うならば……不知火さんが、変身した。

 もっと言うならば、魔法少女に、なった。

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