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異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
第9章:異世界転生編
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第167話 離れ離れになった人

 名前を教えてくれた一件から、フラムちゃんとの距離は大分縮まったと思う。

 まだ完全に心を開いてくれたわけでもないが、私と話している時はよく笑ってくれて、少しずつ自分の話もしてくれるようになった。

 フラムちゃんは、スラム街で生まれ、十歳の頃まではそこで暮らしていたらしい。

 十歳の時にとある冒険者パーティに拾われ、先日まで一緒に冒険していたのだとか。

 しかし、冒険者ギルドという場所にいた時に、パトロールに来ていたこの国の騎士に見つかり、保護されたという。


「結構良い奴等だったよ。冒険の最中にイチャついたり、お節介だったり……割とウザかったけどな」


 そう言うフラムちゃんの目は、憂いを帯びていて、悲しげだった。

 ……やはり、離れ離れになったのが寂しいのかな。

 なんとなくはーちゃんのことを思い出し、少し胸が痛んだ。


「……フラムちゃんは、その、一緒に冒険していた人達のことが大好きなんですね」


 私の言葉に、フラムちゃんは私を見て目を丸くした。

 それに、私は微笑み、続けた。


「だって、文句言いつつも、フラムちゃんの目が……凄く優しいから」

「……大好き……ねぇ……」


 フラムちゃんは独り言のように呟き、頬杖をついた。

 目は少し遠くの地面に向いている。

 しばらく間を置いてから、彼女は続けた。


「まぁ……結構好きだった、かな……」

「……辛いですよね……大好きな人と離れ離れになるのは……」


 なんとなくそう言ってみると、フラムちゃんはチラッとこちらを見た。

 金色の綺麗な目を細め、彼女は口を開いた。


「お前に分かんのかよ? そんな気持ち」

「……うん……私も、大好きな人と離れ離れになったから……」


 私の言葉に、彼女は少し視線を動かして、「ふーん……」という。

 どこか居心地悪そうにして、彼女は続ける。


「温室育ちの箱入り娘でも、そんなことあるんだ」

「うん……私がちょっと変わってるだけかもしれませんが」

「まぁ、変な奴だもんな、お前」


 呆れたように笑いながら言うフラムちゃんに、私は「そうですか?」と聞き返す。

 すると、フラムちゃんはフッと小さく笑い、「あぁ」と答えた。

 ……私って、変なのかな……?

 まぁ、元々は日本に住む平凡は女子中学生だったわけだし、この世界の人から見れば大分変わっているのかもしれない。

 大分この世界にも馴染んで来たような気はしていたんだけどなぁ……。


「……そういえば、お前さ」


 その時、フラムちゃんが何かを思い出したように尋ねて来る。

 顔を上げて、私は「はい?」と聞き返す。

 彼女はそれに、迷うような素振りを少ししてから、口を開いた。


「あのさ……お前が離れ離れになった奴ってのは……まだ、生きているのか……?」

「……?」


 彼女の質問の意図が、イマイチ分からなかった。

 何を聞いているのかはすぐに理解出来たが、なぜそれを聞いたのかが分からなかったのだ。


「えっと……生きていますよ?」

「……そうか……」

「……えっと……」

「おい」


 なんでそんなことを聞いたのか聞こうとした時、背後から声を掛けられた。

 振り向くとそこには、男が一人立っていた。

 咄嗟に立ち上がると、彼は無言で鉄格子の鍵を開けた。


「騎士団長がお呼びです」

「……」


 男の言葉に、フラムちゃんは不思議そうな顔をしつつ立ち上がる。

 余談だが、前騎士団長が死んでから、カインドルさんが騎士団長になった。

 王族であることが大きな理由でもあるが、元々剣の才能があったのか、今ではかなりの実力者らしい。


 ……そんなカインドルさんが、直々にフラムちゃんを呼び出すだなんて……。

 一体、何の用なのだろう。

 そんな風に考えながらフラムちゃんを見ていると、牢屋から出てきた彼女も、私を見た。

 ジッと見ていて変に思われたのでは無いか。

 そう思って戸惑っていると、彼女は小さく笑い、口を開いた。


「悪いな、話の途中なのに……。今日はもう帰ってくれ」

「あ、はい……あの……!」


 先ほどの質問の真意を訪ねようとした時、彼女は私に距離を詰めて来た。

 私より背が高いので、背中を丸め、私の耳元に口を近づけてくる。

 それから、小さく囁いた。


「……いつか、会えると良いな。離れ離れになった大好きな人に」


 そう言って、彼女は私から体を離し、踵を返す。

 彼女より少し前を歩いている男の人について、歩き出す。


「ふ……フラムちゃんも……!」


 反射的に、私はそう言った。

 すると、フラムちゃんは立ち止まり、驚いた表情でこちらを振り向いた。

 私は笑い、続けた。


「フラムちゃんも……会えると良いですね。大好きな人達に」


 そう言った瞬間、彼女はカッと大きく目を見開き、すぐにこちらに背を向けた。

 どうしたのだろう……と思っていた時だった。


「……そうだな」


 ポツリと、小さく呟くように、言った。

 それから、彼女は男の人に連れられて、どこかに行った。

 私は彼女の背中を見送り、息をついた。


「……あっ」


 しかし、とあることを思い出し、私は声を漏らした。

 そういえば……結局、あの質問の意味は聞けなかった。

 ……まぁ、いっか。

 多分、彼女も突然気になって聞いてきただけだろう。

 私は、それ以上深く考えないことにして、自分の部屋に戻った。

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