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異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
第8章 加藤若菜編
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第141話 包み込む温もり

「あのさ……もう加藤さんと関わらない方が良いよ」


 その言葉に、私は目を見開いた。

 あぁ……こういうのか……。

 これに関しては、問題は無い。

 私がはーちゃんから距離を取っているから。


 ただ……もしも、はーちゃんがイジメに加担したらどうしよう?

 これが、一番怖かった。

 興味の無いクラスメイトにされる分には、全然苦痛だとは思わない。

 しかし、はーちゃんに同じことをされたら……はーちゃんに、拒絶されたら……私は、耐えられる気がしなかった。


「え、なんで?」

「実は……」


 女子生徒が、私の現状を説明する声がする。

 それを、私はただ、聞いていることしか出来ない。


「……何それ」


 全てを聞き終えたはーちゃんは、驚いたような声でそう言った。

 それに、女子生徒が口を開く。


「加藤さんと仲良くしてたら、林原さんも同じ目に遭うよ? だから、もうあの子と仲良くしない方が良いよ」

「……いや、まぁ……若菜とは、最近あまり話してないけど……」


 困惑した様子のはーちゃんの言葉に、私は俯く。

 はーちゃんが私と関わらなければ、確かに、はーちゃんに飛び火する可能性は無くなる。

 ただ、もし彼女からも拒絶されたら……もう二度と、友達には戻れないだろう。

 自分から距離を取るに当たって、覚悟していたことではあるが、いざその時になってみると辛かった。


「……嫌だよ」


 しかし、はーちゃんからの返答は、予想していたものとは大きくかけ離れていた。

 まるで、当たり前のことを言うように放たれた言葉に、私は顔を上げた。


「え……?」


 女子生徒の方も、この返答は予想していなかったのだろう。

 驚いたような声で聞き返す女子生徒に、はーちゃんは続けた。


「嫌だよ、そんなの。若菜と関わらないなんて嫌。……まぁ、最近は私の方が、なんか避けられちゃってるけど」

「で、でも……加藤さんと仲良くしていたら、林原さんまで……」

「別に構わないよ」


 当然のことのように答えるはーちゃんに、私は、咄嗟にトイレを流してから、個室を飛び出した。

 個室の扉を開けると、はーちゃんと、同じクラスの女の子がいた。

 はーちゃんは、私を見て、驚いたように目を見開いた。


「……若菜……」

「はーちゃん……」


 それ以上、言葉を続けることが出来なかった。

 何か言おうと思ったが、何を言えば良いか分からず、私は口をパクパクと動かすことしか出来なかった。

 そんな私を見て、はーちゃんは小さく笑った。


「若菜、一緒に教室に戻ろう?」

「あ……えっと……」


 はーちゃんの言葉に、私は、女子生徒に視線を向けた。

 彼女は私とはーちゃんを交互に見ると、すぐに、トイレの個室に入っていった。

 ひとまず、私はトイレの水道で手を洗い、はーちゃんと共に教室に向かった。


「……ねぇ、若菜」


 教室に向かいながら、はーちゃんは口を開いた。

 それに驚きつつも、私は「何?」と、聞き返す。

 すると、彼女は私を見て、続けた。


「若菜が最近私を避けていたのって、もしかして、その……さっきのが原因?」

「……うん」


 嘘をつくのもアレなので、私は肯定した。

 すると、はーちゃんは「そっか」と呟いて、目を伏せた。


「若菜と仲良くしてたら……私がいじめられるから?」

「……うん……」

「……良かったぁ……」


 突然そんなことを言って、はーちゃんはその場にしゃがみ込んだ。

 私はそれに驚き、固まる。

 すると、はーちゃんは私の顔を見て、ムッとした表情をして立ち上がる。


「私はすごく悩んだんだからね。若菜に嫌われたんじゃないかって、若菜に何かしちゃったんじゃないかって……すごく怖かったんだから!」

「えっと……ごめん……」


 どう答えれば良いか分からず、私はそう謝った。

 すると、はーちゃんはムッとした表情を崩して、笑顔を浮かべた。


「だから、良かった。若菜に嫌われたわけじゃなくて」

「……でも、良いの? 私と、仲良くしたら……はーちゃんまで……」

「いーの!」


 はーちゃんはそう言って、私の両頬を摘まみ、軽く引っ張った。

 突然のことに私は驚き、目を丸くした。

 彼女はしばらく私の頬を引っ張った後で、私の目を見て、ニッと笑った。


「私は若菜が好きだから。若菜が一緒なら、私は平気」

「……はーひゃん……」

「あっ、ごめん」


 謝りつつ、彼女は私の頬から手を離した。

 ヒリヒリと痛む頬を撫で、私ははーちゃんの顔を見た。

 彼女は私を見て、微笑んだ。


「ホラ、行こう? もうそろそろ授業が始まっちゃうよ」


 そう言って、こちらに手を差し出してくる。

 私はそれに「うんっ」と頷き、彼女の手を握った。

 久しぶりに握った幼馴染の手は、やけに大きく感じた。

 まるで私の手を包み込むようなその手が、すごく、温かく感じた。


「……あっ、そうだ。仲直りついでに……」


 はーちゃんはそう言いながら、こちらに振り返る。

 何だろう、と首を傾げていると、はーちゃんは白い歯を見せて微笑んだ。


「今日さ、泊まりに来なよ」

「……え?」


 突然の提案に、私はつい聞き返した。

 すると、はーちゃんは「聞こえなかった?」と言って首を傾げた。

 それに答えられずにいると、彼女は続けた。


「久々にうちに泊まりに来なよ。明日休みだし」

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