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異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
第8章 加藤若菜編
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第140話 悪化の一途

 あれから私は、はーちゃんの足手まといにならないように努めた。

 登校は共にするが、児童玄関の前でよくはーちゃんの友達に出くわすので、そこで分かれることが多かった。

 普段の学校生活の間は、教室で、一人で読書をするようにした。

 孤独を誤魔化すためのその場しのぎだ。


 休日の時は、はーちゃんと二人で遊んだりしていた。

 しかし、はーちゃんにはクラスの友達もいるので、私と遊ぶ回数も、昔に比べて少し減った。

 でも、私はそれで構わなかった。

 はーちゃんが私と友達でいてくれるだけで、私は幸せだった。


 しかし、四年生になると、少しずつクラスメイトからの態度に異変が起こった。

 それまでは、私はまるで、空気のような存在だった。

 連絡事項以外でクラスメイトと会話をすることも無く、そこにいてもいなくても変わらない存在だった。


 だが、しばらくすると、少しずつ避けられるようになった。

 事務的な会話をすることは一切無くなり、私が触ったものに触れることを避け、私の隣に立つことすら嫌った。

 若菜菌という名目で、鬼ごっこのような一種の遊びも流行っていた。

 私に少しでも接触した人が、触られた箇所を手で拭い、その手で他の人にタッチする。

 触られた人も同様のことを繰り返す。そうして、イジメのループが出来ていった。


 別に、それを苦だとは思わなかった。

 はーちゃんがいれば、私自身はどうなろうと関係無かった。

 ……でも、私へのイジメは、はーちゃんにも矛先を向けようとしていた。


 ある日、下校する時だった。

 普段なら友達と帰っているはーちゃんが、玄関で私を待っていたのだ。

 どうしたのかと聞いてみると、いつも一緒に帰っている子達は用事があって先に帰ったと言う。

 クラスが変わってから一緒に帰ることは中々無かったので、その時は、久しぶりにはーちゃんと帰れることを純粋に喜んだ。


 しかし、それから、はーちゃんと一緒に帰る機会が増えた。

 それどころか、休憩時間にはーちゃんのクラスの前を通ると、彼女が一人でいるところを目撃するようになった。

 イジメのこととかよく分からないけど、はーちゃん自身にイジメを受ける理由は一切無いハズだ。

 しばらく考えて分かった。はーちゃんは、私と仲良くしているからイジメを受けたのだ。


 私だけがイジメを受けることは構わない。しかし、はーちゃんまで苦しい思いをするのだけは嫌だった。

 だから私は、はーちゃんから距離を取った。

 一緒に登下校することも、休日に遊ぶことも止めた。

 何がイジメに繋がるか分からなかったから、とにかく、徹底的に彼女から距離を取ることに決めた。


 最初は辛かったけど、四年生が終わる頃には慣れてきた。

 はーちゃんなら、私がいなくても大丈夫。

 私には、はーちゃんがいないとダメだけど……彼女が辛い思いをするくらいなら、私が一人で背負う。

 そもそも、イジメ自体は辛くなかった。

 別に向こうが勝手に私を避けたりしている程度だし、私自身がイジメを受けることに関しては、何の問題も無かった。


 ただ、はーちゃんと距離を取らないといけないのは辛かった。

 なぜ、あんな輩のために、私が苦しい思いをしなければならないのだろうか。

 そう思いつつも、私にどうしようもなく、諦めることしか出来なかった。

 人見知りなど、直そうと思って直せるものではないから。


 しかし、五年生になって、問題が起きた。

 はーちゃんと同じクラスになったのだ。

 現状を考えると、これは喜ばしく無い。

 ……はーちゃんには、私の現状を知られたくはなかった。


 だが、同じクラスともなれば、必然的に知ることになるだろう。

 最近ではイジメも少しエスカレートして、机に鉛筆で落書きをされたり、悪口を私に聴こえるように言われたりもした。

 少しずつだが、イジメは悪化の一途を辿っている。

 だから、はーちゃんに気付かれるのも、時間の問題だった。


 五年生になったばかりの、ある日の休憩時間のことだった。

 トイレに行くと、一つの個室が埋まっていた。

 女子トイレの個室は全部で三個あったため、残り二つが空いていたから、何の問題も無かった。

 一つのトイレに入って用を足していると、埋まっていた個室から誰かが出てくる音がした。

 水道で手を洗う音を聴きながら、私は用を足し終える。

 身なりを整えて、トイレを流そうとしていた時、女子トイレの扉が開く音がした。


「あっ……林原さん」


 恐らくトイレに入って来たであろう人物の声に、私は顔を上げた。

 林原……って、はーちゃん!?

 まさかはーちゃんがいるとは思わなかったので、私は驚いて顔を上げた。

 それに、手を洗っている人物――はーちゃんが答える。


「ん? どうかした?」

「えっと……林原さんって、加藤さんと仲良かったよね?」


 その声に、一瞬、動悸が乱れた。

 ……嫌な予感がした。

 私は手を強く握り締め、俯いた。


「加藤……あぁ、若菜?」

「……うん……」

「まぁ、私は仲良いと思ってるけど……それが何?」


 はーちゃんの言葉に、私は唇を強く噛みしめた。

 私は距離を取っているのに……まだ、友達だと思ってくれているのか……。

 なんだか、自分がとても矮小なものに思えて、凄く苦しかった。


「あのさ……もう加藤さんと関わらない方が良いよ」

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